異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第二百三十六話 偉大なる戦い・決戦編①
そして、『僕』の意識は再び会議場へと戻された。
「……思い出したようですね?」
キガクレノミコトが、悪戯めいた笑みを浮かべて僕に問いかける。
「すべてというわけでは無いけれど、思い出しました。……もしかして、あのロボットの企みは成功した、ということですか」
「ロボットの企みというよりは、オール・アイの考えのもと……と言ったほうが正しいかもしれませんね」
キガクレノミコトは深い溜息を吐いたのち、
「オール・アイはそのプロジェクトを実行し……、正確に言えば教唆し、そしてその通り実行したことで、世界は壊滅的被害を受けました。けれど、それもすべてリセットのため。神託を受け、世界を滅ぼした。そして、人間の数を減らした。人間の数を減らしただけでは無く、冷凍保存された人類が住みやすい環境にするために、敢えて残しておいた人間もいたわけですが」
「敢えて、残しておいた?」
「浄化ですよ。すべては」
「浄化?」
「世界を一度リセットする。しかし、それをしてしまうと環境を滅ぼしてしまうことになりますね。それは、あなたにも理解出来ていることかと思いますが、つまりはそういうことですよ。環境を滅ぼしたあとは、それを再生しなければなりません。しかし、それを超常的力でやってしまうと、意味が無い。では、どうすれば良いか? 答えは分かりきっていることでしょう。……この世界をやり直すために、人間の力でゆっくりと環境を再生させる。その時間が、おおよそ一万年と言われています」
一万年。
それは途方もつかない時間だ。僕が居たあの世界も、あの時代も、たかが二千年程度だったはず。その五倍と考えると、環境の再生も簡単なことでは無い――ということなのだろう。
「感心してもらっては困るのですよ。問題は、それではありません。確かに人類は、愚かな存在かもしれません。しかし、我々のように人間とともに生きてきた神も少なからず存在しています。……オール・アイはその中でも、過激派といった感じでしょうね」
「過激派、ですか」
「そう。そして、その目論見を食い止めていくのが私たち。どこまでやれるかは分かりませんが。なにせ、あのオール・アイは人心掌握が上手すぎる」
「やろうとすれば、出来るのでは無いですか?」
「だからといって、やるわけにはまいりません」
出来ることは出来るのか。
そんなことをふと口に出してしまいそうになったが、すんでの所で止まった。
「……ヒトが関わる問題であるならばまだしも、この問題は我々神のカテゴリて留めておかねばなりません。おわかりですか?」
神と神の問題に、人間を介在させるわけにはいかない。
そういった気合いが見えてくるようにも思えた。
「この世界を管理しているのも作成しているのも、神ですよ。ただ、この世界に住んでいる動物の意思を聞くことなく世界全体に関することを決めてしまって良いのでしょうか。責任を取るのは、我々だけで良い」
「……しかし、この戦いは人間も参加することになるんですよね?」
さっき、この勢力を指揮してほしい、と言ったのは嘘になるのだろうか。
「ええ。それについては申し訳ないと思っています。我々は最後まで、人間が参加しないように考えておりました。けれど、オール・アイはそれを許さない。意地でも、元々の世界の人間を、この戦争で殺そうと考えている。たとえムーンリットの考えに反しようとも、それは許されません」
「じゃあ、どうすれば……」
「簡単ですよ」
キガクレノミコトははっきりと言い放った。
そして、キガクレノミコトはどこからか一振りの剣を取り出した。
林檎の形がグリップに象られているその剣には、横の部分に『By Silver-Feather』と書かれている。
「銀の……翼?」
「正確には、羽毛ですね。銀には退魔の力を持っています。そして、使う人間のパフォーマンスが最大となるように、羽毛のように軽く出来ている。それが、シルバー・フェザー。弓と杖も作成を考えていますが、それだと長い名前になるのですよね。人間は名前にこだわるといいますから、どんな名前にしたほうがいいでしょう?」
うふふ、と笑みを浮かべつつキガクレノミコトは言った。
こんな一大事と思える状態で、名前のことを考えるというのはなんとも呑気な考えだと思う。
しかし、名前か。シルバー・フェザー。……シルバー、フェザー……、シル、フェ……。
「もしかして……」
そこで僕は何かを思い出した。
もしかして、この剣は……。
「何か、いい名前が浮かびましたか!」
キガクレノミコトは僕の呟きを聞いて、直ぐさま反応した。
参ったな、出来れば聞かれたくなかったけれど……。でも、この状況から逃れるには、うまく答えるしか無いのかもしれない。
そう思って、僕ははっきりと答えた。
「……名前を省略しただけなんですけれど、シルフェの剣、というのはどうでしょうか」
「……思い出したようですね?」
キガクレノミコトが、悪戯めいた笑みを浮かべて僕に問いかける。
「すべてというわけでは無いけれど、思い出しました。……もしかして、あのロボットの企みは成功した、ということですか」
「ロボットの企みというよりは、オール・アイの考えのもと……と言ったほうが正しいかもしれませんね」
キガクレノミコトは深い溜息を吐いたのち、
「オール・アイはそのプロジェクトを実行し……、正確に言えば教唆し、そしてその通り実行したことで、世界は壊滅的被害を受けました。けれど、それもすべてリセットのため。神託を受け、世界を滅ぼした。そして、人間の数を減らした。人間の数を減らしただけでは無く、冷凍保存された人類が住みやすい環境にするために、敢えて残しておいた人間もいたわけですが」
「敢えて、残しておいた?」
「浄化ですよ。すべては」
「浄化?」
「世界を一度リセットする。しかし、それをしてしまうと環境を滅ぼしてしまうことになりますね。それは、あなたにも理解出来ていることかと思いますが、つまりはそういうことですよ。環境を滅ぼしたあとは、それを再生しなければなりません。しかし、それを超常的力でやってしまうと、意味が無い。では、どうすれば良いか? 答えは分かりきっていることでしょう。……この世界をやり直すために、人間の力でゆっくりと環境を再生させる。その時間が、おおよそ一万年と言われています」
一万年。
それは途方もつかない時間だ。僕が居たあの世界も、あの時代も、たかが二千年程度だったはず。その五倍と考えると、環境の再生も簡単なことでは無い――ということなのだろう。
「感心してもらっては困るのですよ。問題は、それではありません。確かに人類は、愚かな存在かもしれません。しかし、我々のように人間とともに生きてきた神も少なからず存在しています。……オール・アイはその中でも、過激派といった感じでしょうね」
「過激派、ですか」
「そう。そして、その目論見を食い止めていくのが私たち。どこまでやれるかは分かりませんが。なにせ、あのオール・アイは人心掌握が上手すぎる」
「やろうとすれば、出来るのでは無いですか?」
「だからといって、やるわけにはまいりません」
出来ることは出来るのか。
そんなことをふと口に出してしまいそうになったが、すんでの所で止まった。
「……ヒトが関わる問題であるならばまだしも、この問題は我々神のカテゴリて留めておかねばなりません。おわかりですか?」
神と神の問題に、人間を介在させるわけにはいかない。
そういった気合いが見えてくるようにも思えた。
「この世界を管理しているのも作成しているのも、神ですよ。ただ、この世界に住んでいる動物の意思を聞くことなく世界全体に関することを決めてしまって良いのでしょうか。責任を取るのは、我々だけで良い」
「……しかし、この戦いは人間も参加することになるんですよね?」
さっき、この勢力を指揮してほしい、と言ったのは嘘になるのだろうか。
「ええ。それについては申し訳ないと思っています。我々は最後まで、人間が参加しないように考えておりました。けれど、オール・アイはそれを許さない。意地でも、元々の世界の人間を、この戦争で殺そうと考えている。たとえムーンリットの考えに反しようとも、それは許されません」
「じゃあ、どうすれば……」
「簡単ですよ」
キガクレノミコトははっきりと言い放った。
そして、キガクレノミコトはどこからか一振りの剣を取り出した。
林檎の形がグリップに象られているその剣には、横の部分に『By Silver-Feather』と書かれている。
「銀の……翼?」
「正確には、羽毛ですね。銀には退魔の力を持っています。そして、使う人間のパフォーマンスが最大となるように、羽毛のように軽く出来ている。それが、シルバー・フェザー。弓と杖も作成を考えていますが、それだと長い名前になるのですよね。人間は名前にこだわるといいますから、どんな名前にしたほうがいいでしょう?」
うふふ、と笑みを浮かべつつキガクレノミコトは言った。
こんな一大事と思える状態で、名前のことを考えるというのはなんとも呑気な考えだと思う。
しかし、名前か。シルバー・フェザー。……シルバー、フェザー……、シル、フェ……。
「もしかして……」
そこで僕は何かを思い出した。
もしかして、この剣は……。
「何か、いい名前が浮かびましたか!」
キガクレノミコトは僕の呟きを聞いて、直ぐさま反応した。
参ったな、出来れば聞かれたくなかったけれど……。でも、この状況から逃れるには、うまく答えるしか無いのかもしれない。
そう思って、僕ははっきりと答えた。
「……名前を省略しただけなんですけれど、シルフェの剣、というのはどうでしょうか」
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