異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第二百十六話 偉大なる戦い⑰
「神殺し……ですか」
ハートの女王の言葉に、ジャバウォックはそう答えて小さく俯いた。
「どうした、ジャバウォック。何か考えているように思えるが? もしかして、私の考えるプランに反対だったか? だとすれば、もう遅いぞ。ガラムドはもう殺してしまったからな。ガラムドを殺してしまった以上、この世界に神という存在が居なくなってしまった以上、新たに神を擁立しなければならない。それがこの世界の、いや、世界そのものの仕組みと言ってもいいだろう。……しかし、私たちはそれをする気は無い。たとえ、世界がこのまま混沌を極めていこうとも」
「世界が混沌を極めようとも、ですか……。あなたらしくない発言ですね。まあ、あの神様がろくなことをしなかったから、その反動かもしれませんが」
「反動? いいや、違いますね。反動というよりは反旗を翻したと言ってもいいでしょう。私たちはずっとあの神に従ってきました。それは神が実際にあの世界へアクションを起こすことが出来ないからです。そのように決められてしまっているから。実働部隊は我々なのに、彼女はただ命令を下すだけ。そうしてこの世界はどうなりましたか? あんな風に、破滅の限りを尽くしてしまったではありませんか。さっさとオリジナルフォーズを殲滅させればよかったものを、変な優しさを見せてしまったからこのざまですよ」
「でも、オリジナルフォーズは神ですら抑圧するのが精いっぱいだったのですよね」
ハートの女王の言葉に、ハンプティ・ダンプティは苦虫をかみつぶしたような表情を見せる。
「そう。問題はそれだった」
「ハンプティ・ダンプティ、」
ジャバウォックの制止を聞くことなく、話を続ける。
「あの存在、オリジナルフォーズこそがイレギュラーだった。どうしてあの存在が生まれてしまった? この世界で最強と呼ばれる存在だった神ですら操れない不確定要素が、どうして誕生することとなってしまったのか。そもそも、なぜそれを残したままガラムドは神になったのか?」
「それはやはりあのお方が考えていることなのでは?」
答えたのは、ジャバウォックだった。
あのお方。
それはシリーズを作り、ガラムドを神に任命した存在だった。
神管。
神の管理をしているから、神管。いかにもなネーミングではあるが、その神管がこの世界に干渉することは先ず有り得ない。
「もし、干渉してくるとするならば……、神が死んでしまったとき」
「それって、今じゃないですか。いったいどうするつもりですか?」
ジャバウォックの言葉に、ハートの女王は頷く。
「問題ない。その場合もきちんと考えている。考えてみれば解る話だ。なぜ、ガラムドの死体をこの空間に残しているか? それは簡単なこと。ガラムドが死んでいないと工作するためだからだ。案外、神管もルーズでねえ。それを知ったときはルールの改善をするべきではないかと考えたが、今思えばとても有難いことだよ。とどのつまり、この空間に神という存在が居ればいい。しかし、神は死んでいる。ならば、どうすればいいか。簡単なことだよ」
「あー、……もったいぶらずに教えてくれないか?」
「解っているよ、ハンプティ・ダンプティ。だがね、君たちも気付いていることだよ。目の前のモニターは、どうして点き続けているのか、ということについて疑問を浮かべるはずだ」
そう言ってハートの女王は目の前にあるモニターを指さした。
モニターは今もフルの様子を映し出している。まるでフルの周りを小型カメラが飛び回っているかのように。
「……え?」
「モニターから様々な人間を監視すること。そして、その中で『一番重要である存在を監視し続けること』。それが神の役割だった。そして今それに該当する存在は紛れもなく予言の勇者たるフル・ヤタクミ。そして、このモニターは神が死んだ後もフル・ヤタクミを監視し続けている。……意味が理解できるか?」
「あのね、もったいぶらずに――」
再度、ハンプティ・ダンプティは言った。
「この部屋は、神が居ると未だに認識し続けているということだよ。そして神が居ると認識しているからこそ、神管にばれることもない。だから、私たちは未だにこの空間に居続けることが出来る。……どうかしら、いやでも意味が理解できたと思うけれど?」
ハートの女王の言葉に、ジャバウォックはそう答えて小さく俯いた。
「どうした、ジャバウォック。何か考えているように思えるが? もしかして、私の考えるプランに反対だったか? だとすれば、もう遅いぞ。ガラムドはもう殺してしまったからな。ガラムドを殺してしまった以上、この世界に神という存在が居なくなってしまった以上、新たに神を擁立しなければならない。それがこの世界の、いや、世界そのものの仕組みと言ってもいいだろう。……しかし、私たちはそれをする気は無い。たとえ、世界がこのまま混沌を極めていこうとも」
「世界が混沌を極めようとも、ですか……。あなたらしくない発言ですね。まあ、あの神様がろくなことをしなかったから、その反動かもしれませんが」
「反動? いいや、違いますね。反動というよりは反旗を翻したと言ってもいいでしょう。私たちはずっとあの神に従ってきました。それは神が実際にあの世界へアクションを起こすことが出来ないからです。そのように決められてしまっているから。実働部隊は我々なのに、彼女はただ命令を下すだけ。そうしてこの世界はどうなりましたか? あんな風に、破滅の限りを尽くしてしまったではありませんか。さっさとオリジナルフォーズを殲滅させればよかったものを、変な優しさを見せてしまったからこのざまですよ」
「でも、オリジナルフォーズは神ですら抑圧するのが精いっぱいだったのですよね」
ハートの女王の言葉に、ハンプティ・ダンプティは苦虫をかみつぶしたような表情を見せる。
「そう。問題はそれだった」
「ハンプティ・ダンプティ、」
ジャバウォックの制止を聞くことなく、話を続ける。
「あの存在、オリジナルフォーズこそがイレギュラーだった。どうしてあの存在が生まれてしまった? この世界で最強と呼ばれる存在だった神ですら操れない不確定要素が、どうして誕生することとなってしまったのか。そもそも、なぜそれを残したままガラムドは神になったのか?」
「それはやはりあのお方が考えていることなのでは?」
答えたのは、ジャバウォックだった。
あのお方。
それはシリーズを作り、ガラムドを神に任命した存在だった。
神管。
神の管理をしているから、神管。いかにもなネーミングではあるが、その神管がこの世界に干渉することは先ず有り得ない。
「もし、干渉してくるとするならば……、神が死んでしまったとき」
「それって、今じゃないですか。いったいどうするつもりですか?」
ジャバウォックの言葉に、ハートの女王は頷く。
「問題ない。その場合もきちんと考えている。考えてみれば解る話だ。なぜ、ガラムドの死体をこの空間に残しているか? それは簡単なこと。ガラムドが死んでいないと工作するためだからだ。案外、神管もルーズでねえ。それを知ったときはルールの改善をするべきではないかと考えたが、今思えばとても有難いことだよ。とどのつまり、この空間に神という存在が居ればいい。しかし、神は死んでいる。ならば、どうすればいいか。簡単なことだよ」
「あー、……もったいぶらずに教えてくれないか?」
「解っているよ、ハンプティ・ダンプティ。だがね、君たちも気付いていることだよ。目の前のモニターは、どうして点き続けているのか、ということについて疑問を浮かべるはずだ」
そう言ってハートの女王は目の前にあるモニターを指さした。
モニターは今もフルの様子を映し出している。まるでフルの周りを小型カメラが飛び回っているかのように。
「……え?」
「モニターから様々な人間を監視すること。そして、その中で『一番重要である存在を監視し続けること』。それが神の役割だった。そして今それに該当する存在は紛れもなく予言の勇者たるフル・ヤタクミ。そして、このモニターは神が死んだ後もフル・ヤタクミを監視し続けている。……意味が理解できるか?」
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