異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第三十七話 決戦、リーガル城⑧
次の日の朝は、轟音で目を覚ました。耳を劈く程の轟音は、それを聞いた僕たち全員が一斉に起き上がった程だった。
「なんだ、今の音は!」
起き上がると、僕は窓のほうを見る。
窓の向こうには城壁が広がっており、そのあたりから黒煙が上がっていた。
「みなさん! 大変です!」
ゴードンさんがノックもせずに入ってきたのは、ちょうどその時だった。
「何があったんですか?」
ほかの部屋に居たメアリーも、どうやらその轟音に気付いたらしい。目を覚まして、ネグリジェ姿のままゴードンさんに問いかける。
ゴードンさんは息を乱したままだったが、そのまま答えた。
「はい。実は、北のほうから大量のバケモノが空を飛んできているのです。目標はおそらく……いや、確実に、このリーガル城を狙っているものとみられます」
「バケモノ……もしかして!」
「ええ、おそらく、メタモルフォーズ、でしょうね」
ゴードンさんの言葉に僕とメアリーは意識合わせする。
対して、何も知らないゴードンさんは首を傾げる。
「メタモルフォーズ……とは?」
「説明している時間は有りません、残念ながら。取り敢えず、外へ向かいましょう。フル、ルーシー、ちょっと着替えてくるからあなたたちも着替えて。大急ぎで向かいましょう!」
メアリーはそう早口で捲し立てて、そのまま部屋へ戻っていった。
僕たちが着替え終わるまで二分、メアリーがその後遅れて三十秒後に到着。最終的に二分三十秒余りの時間を要して、僕たちは外へと向かうことになった。
外へ向かうまでは迷路のように入り組んだ通路を通ることとなるので、ゴードンさんを先頭にして僕たちは進むこととなった。
道中行き交う人たちは、どこか忙しない。毎回、僕たちに敬礼をしてくるので僕たちもそれに倣って返すのだけれど、外に近づくにつれてそれも億劫になるのか、立ち止まることなく一礼のみして立ち去る人も出てくる。
「どうやら、想像以上に大事になってきているようですね。兵士が無礼を働いているかもしれませんが、お許しください」
「いえ……。忙しいようでしたら、仕方ありません。別に、これが悪いことでもありませんから」
言ったのはメアリーだった。メアリーはこういうときでも落ち着いている。いや、むしろこれが彼女の取柄なのかもしれない。
外に出ると、すぐに爆音が僕たちの耳に届いた。
「……さっきの轟音はこれが原因か」
僕は呟く。状況判断して、それを呟いた。
爆音の正体は城壁の上に設置されている砲台だ。確か魔術で動く砲台となっているので、砲台の下には魔法陣が描かれており、その魔法陣には自動で作動できるようなプログラムが組み込まれているのだという。
魔術は古き良きスタイルで、いちいち魔法陣を描くスタイルもあれば、一つのシンプルなフローであればルーティンワークを実行するプログラムを魔法陣に組み込むことで自動的に魔術を打ち込むことが出来る、いかにも現代チックな魔術のスタイルもある。
……まあ、なんだかよく解らないけれど、プログラムに関しては案外簡単な構文らしいので、学生でも作ることが出来るのだという。というか、ラドーム学院でも魔術のプログラミングの授業は設けられている。たしかカリキュラムにそんなことが書いてあった気がする。……それだけは、受けてみたい。
「問題は、あのメタモルフォーズ……だったか。あれに攻撃が命中しても、うまくいかないということだ」
「うまくいかない? それってつまり、どういうことですか」
「簡単なことだよ。命中してもダメージを受けているように見えないのだ。……あれほどの数が、一匹も倒せないままリーガル城の区々にやってきたら、すべてがおしまいだ。少なくとも、町に住む人々が犠牲になることは避けられない。だが、それを避けなくてはならない。どうにかして、あれを駆除する必要がある」
命中しても、ダメージを受けていない?
仮にそれが事実だとすれば、確かに非常に厄介なことである。即ち、今の僕たちの腕ではメタモルフォーズの大群を倒すことは出来ないということを意味しているのだから。
しかし、そうとすればどうすればいいのか……。
「ヤタクミ、どうやら助けが欲しいようですね」
声を聴いて、僕は振り返った。
そこに立っていたのは――サリー先生だった。
「サリー先生? どうして、ここに。ラドーム学院に居たはずじゃ……」
「再会の余韻に浸りたいところだけれど、それは一旦おいておきましょうか。問題は目の前に広がっている、あのメタモルフォーズの大群。攻撃が通らないということですが……、もしかしたら、可能性はなくなったわけではないかもしれませんよ」
そう言って、サリー先生はあるものを取り出した。
それは望遠鏡のようだった。そしてそれを通して、サリー先生はメタモルフォーズの大群を見つめる。
「……もう一発、砲台を使用してもらえますか?」
サリー先生の言葉を聞いて、ゴードンさんは頷いた。
「それに関しては問題ないが……、しかしメタモルフォーズにはそれが効かないのだろう? だとすれば使う意味が無いように思えるが……」
「いいえ、今こそ使うべきです。おねがいします!」
「……解った。おい、もう一度魔術を行使しろ!」
ゴードンさんの言葉を聞いて、砲台のそばにいた兵士が慌ただしく準備を始めた。
「なんだ、今の音は!」
起き上がると、僕は窓のほうを見る。
窓の向こうには城壁が広がっており、そのあたりから黒煙が上がっていた。
「みなさん! 大変です!」
ゴードンさんがノックもせずに入ってきたのは、ちょうどその時だった。
「何があったんですか?」
ほかの部屋に居たメアリーも、どうやらその轟音に気付いたらしい。目を覚まして、ネグリジェ姿のままゴードンさんに問いかける。
ゴードンさんは息を乱したままだったが、そのまま答えた。
「はい。実は、北のほうから大量のバケモノが空を飛んできているのです。目標はおそらく……いや、確実に、このリーガル城を狙っているものとみられます」
「バケモノ……もしかして!」
「ええ、おそらく、メタモルフォーズ、でしょうね」
ゴードンさんの言葉に僕とメアリーは意識合わせする。
対して、何も知らないゴードンさんは首を傾げる。
「メタモルフォーズ……とは?」
「説明している時間は有りません、残念ながら。取り敢えず、外へ向かいましょう。フル、ルーシー、ちょっと着替えてくるからあなたたちも着替えて。大急ぎで向かいましょう!」
メアリーはそう早口で捲し立てて、そのまま部屋へ戻っていった。
僕たちが着替え終わるまで二分、メアリーがその後遅れて三十秒後に到着。最終的に二分三十秒余りの時間を要して、僕たちは外へと向かうことになった。
外へ向かうまでは迷路のように入り組んだ通路を通ることとなるので、ゴードンさんを先頭にして僕たちは進むこととなった。
道中行き交う人たちは、どこか忙しない。毎回、僕たちに敬礼をしてくるので僕たちもそれに倣って返すのだけれど、外に近づくにつれてそれも億劫になるのか、立ち止まることなく一礼のみして立ち去る人も出てくる。
「どうやら、想像以上に大事になってきているようですね。兵士が無礼を働いているかもしれませんが、お許しください」
「いえ……。忙しいようでしたら、仕方ありません。別に、これが悪いことでもありませんから」
言ったのはメアリーだった。メアリーはこういうときでも落ち着いている。いや、むしろこれが彼女の取柄なのかもしれない。
外に出ると、すぐに爆音が僕たちの耳に届いた。
「……さっきの轟音はこれが原因か」
僕は呟く。状況判断して、それを呟いた。
爆音の正体は城壁の上に設置されている砲台だ。確か魔術で動く砲台となっているので、砲台の下には魔法陣が描かれており、その魔法陣には自動で作動できるようなプログラムが組み込まれているのだという。
魔術は古き良きスタイルで、いちいち魔法陣を描くスタイルもあれば、一つのシンプルなフローであればルーティンワークを実行するプログラムを魔法陣に組み込むことで自動的に魔術を打ち込むことが出来る、いかにも現代チックな魔術のスタイルもある。
……まあ、なんだかよく解らないけれど、プログラムに関しては案外簡単な構文らしいので、学生でも作ることが出来るのだという。というか、ラドーム学院でも魔術のプログラミングの授業は設けられている。たしかカリキュラムにそんなことが書いてあった気がする。……それだけは、受けてみたい。
「問題は、あのメタモルフォーズ……だったか。あれに攻撃が命中しても、うまくいかないということだ」
「うまくいかない? それってつまり、どういうことですか」
「簡単なことだよ。命中してもダメージを受けているように見えないのだ。……あれほどの数が、一匹も倒せないままリーガル城の区々にやってきたら、すべてがおしまいだ。少なくとも、町に住む人々が犠牲になることは避けられない。だが、それを避けなくてはならない。どうにかして、あれを駆除する必要がある」
命中しても、ダメージを受けていない?
仮にそれが事実だとすれば、確かに非常に厄介なことである。即ち、今の僕たちの腕ではメタモルフォーズの大群を倒すことは出来ないということを意味しているのだから。
しかし、そうとすればどうすればいいのか……。
「ヤタクミ、どうやら助けが欲しいようですね」
声を聴いて、僕は振り返った。
そこに立っていたのは――サリー先生だった。
「サリー先生? どうして、ここに。ラドーム学院に居たはずじゃ……」
「再会の余韻に浸りたいところだけれど、それは一旦おいておきましょうか。問題は目の前に広がっている、あのメタモルフォーズの大群。攻撃が通らないということですが……、もしかしたら、可能性はなくなったわけではないかもしれませんよ」
そう言って、サリー先生はあるものを取り出した。
それは望遠鏡のようだった。そしてそれを通して、サリー先生はメタモルフォーズの大群を見つめる。
「……もう一発、砲台を使用してもらえますか?」
サリー先生の言葉を聞いて、ゴードンさんは頷いた。
「それに関しては問題ないが……、しかしメタモルフォーズにはそれが効かないのだろう? だとすれば使う意味が無いように思えるが……」
「いいえ、今こそ使うべきです。おねがいします!」
「……解った。おい、もう一度魔術を行使しろ!」
ゴードンさんの言葉を聞いて、砲台のそばにいた兵士が慌ただしく準備を始めた。
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