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わいず

あの日が近い がっこversion

今日はがっこに行く日、だからあたしは来てる。
因みに今の時間帯は教室でクラスメート達が賑わう朝のHR前、……で、その時間なんだか最近男子がそわそわしてる。

それが気になって仕様がない、なに? 男子全員が病気でも掛かったの?
なんて事を考えつつ、机に肘をついてると。

黒ふちの眼鏡を掛けた男子が目に入ってくる、なんだろ……チラチラあたしを見てる。
何か様? って感じで、じぃっと見つめてみると、その人は「はっ!」となってそっぽを向いた。

……変なの、言いたい事があれば言えばいいじゃん。
って言うか、あいつ名前なんだっけ? えーと、確か覚え易い名前だったよね。

んーと……あ、そうだ山田だ。
あんまり話した事ないから一瞬忘れちゃった。
で……その山田がなんであたしを見てたん? まぁ、考えても分かんないか。

「恵ぃ」

……あ、誰かに呼ばれた。
そっちに耳を傾けると、あたしの友達がいた、今日も元気そうだ。
て言うか、妙にニコニコしてない? あたしの気のせい?

「なに? 朝から元気じゃん」
「まぁねぇ」

ほんと、ニコニコしてるわね。
もの凄い気になるんだけど……嫌な予感もする。

「恵、もう分かってると思うけどさ……あの日が近いよね」
「は? あの日?」

え、なにこの人、いきなり何言ってきてんの? あの日? それってなんの日よ。

「え? なにその顔……なんでそんな難しい顔してんのよ」
「いや、するし。分かんないもん」

今ので分かった人がいたらエスパーか何かよ。
なんて事を思いつつ、ぽけぇ……と友達の話を聞いてると。

「ほら、バレンタインデーよ」

にまりっ、と笑って言ってきた。
……あぁ、そっか、忘れてた。
もうそんな時期か、なるほど……だから男子がそわそわしてんのね。
納得した……納得して、気分が落ちた、はぁ……。

「え、ちょっ、恵? なんでため息はいてんの?」
「……気にしなくて良いし」

ごんっ……。
軽く額を机に付けて、落ち込む。
うわぁ……きたかぁ、あの日かぁ、マジできっついわぁ。

「いや気にするよ! なんで机に顔押し付けてんの? 落ち込んでんの?」

心配したのか、友達があたしをゆさゆさ揺らしてくる。
心配してくれんのは有り難いけど、揺らしすぎだし。

「こっちだって色々あんの……」
「うっ、一気に顔色悪くなったね……大丈夫?」
「大丈夫に見えんの?」
「あっあんまり見えない……かも」

げんなりした顔で言ったらそう返された。
お陰で友達のひきつった表情かおを拝めた、心配かけてごめん。

「もっもしかしてバレンタインデーに何かあるの?」
「あるのよ、正しくは、バレンタインデーの2、3日前にだけどね」

それを言った瞬間、去年のあの時の事を思い出す……。
うっ、思い出しただけでも胸焼けが起こる出来事だった。

「そっその日に何があるのよ?」

なんて、あたしが思ってる事は知るよしもなく友達が聞いてくる。
あ、若干怖がってる、そりゃそっか……他人からしたら意味深に聞こえるもん、そりゃ怖がられるわ。

「……べさせられる日」
「へ? なに? なんて言ったの?」

でも、怖い話じゃない。
いや、ある意味怖い話かもしんない……但し、それを体験した上での話だけど。

なんて思いながら話してたら、友達が聞き取れてなかった。
仕方ない、今度はハッキリと言おう。

「チョコレートを食べさせられる日……」
「………ごめん、聞き取れたけど意味わかんない」

だよね。
あたしも初めて聞いた時は意味わかんなかった。
で、実際体験して……暫くチョコレートを見るのが嫌になった。

あの日がまた来る。
出来れば来てほしくなかった……くっ、てんちょは敏腕社長なのに、たまにアホみたいな行動を起こす……ほんと迷惑だしっ。

「ねっ、ねぇ。ぎりぎり歯軋りしてるとこ悪いんだけどさ……説明してくんない?」
「説明しても、この話の真の怖さは分かんないわよ」
「え、なにその真顔……超怖いんだけど」

がばっ、と起き上がってそう言うと、友達は苦笑してきた。

「まっまぁ、色々あるのは分かった……もう時間だから席戻るね」
「ん、また休憩時間にね」
「あーい」

苦笑いを浮かべたまま、友達は手を振って、自分の席へと戻ってった。
あたしは同じく手を振ってそれを見送る。
………はぁ、思い出したくないもん思い出したなぁ。

この事、胡桃さんに話さないと……尋常じゃない程のチョコを食べさせられるぞ……ってね。
はぁ、こんな事思ったらダルくなってきた。
バレンタインデーなんか来なければ良いのに……。

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