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わいず

番外編 長門さんの1日 4

ブォォォ……。
静かなエンジン音が聞こえるここは車の中、撮影が終った今、とある場所に移動する為に私はここにいるのだ。
クロは、私から遠く離れて窓の外を見てる、あんまり見てると酔うぞ?

あっ、因みに乗ってる車はリムジンだ。
そう、あの黒くて長い車だ。
結構乗り心地が良いんだぞ?

……と、車の話しは良いんだ。
今は夕方、撮影が終った後向かっている場所は、私の店だ。

そろそろ店に戻らないと、胡桃達に悪いからな。
今頃きっと、私の帰りを待っている事だろう。
それに、私の声を聞きたい客達もいるだろうからは、早く行かないといけない。

なんて事を考えながらスマホを弄る。
はっはっはっ、あいつらの寂しそうな顔を想像すると、私はこう思うよ。

私に出会った瞬間、客共が泣いて喜ぶ姿を!
ふふっ、ふふふふふ、あぁダメだ、嬉しすぎてニヤけてしまう。

朝の会議では、私の客との会話が迷惑だとか言っていたが、あれはデマだ。
きっとあれは、私の人気に嫉妬した誰かが流したんだろう。

だが私はそれを許そう、何故なら寛大な心を持ってるからな。
たった1つのデマで怒り狂う心は持っていない。

と、そんな事を考えつつスマホを弄り続ける。
くっ……しかしあれだな、私の客への人気は良いんだが、私のガチャ運がよろしくないな。

さっきからスマホアプリのガチャを引いてるんだが、3万円つぎ込んでSRが1つもでないと来た。

ケチな運営め、凄く腹が立つ。
私達の会社でつくったスマホゲームならそんな事は無いからな? 3万も注ぎ込まずに10連ガチャで、10個ともSRを出してるからな。

その結果、ゲームバランスが崩壊して色々と不味い事になったから、最近のアップデートで10連引いたらSR1個確定にしたのだ。
それでも、3万注ぎ込む奴はいるけどな。

しかしまぁ、この会社もそれ位太っ腹になればいいのに。
……まぁ、会社には会社なりの考えがあるんだろうな。
他の会社の事は何も言えないさ。

「はぁ……」

ため息を吐きつつ憂鬱ゆううつな気持ちになりつつ、画面をタップ。
さぁ……良いの出てくれよ、これが今回15回目のガチャだ!
と言う宣言と願いと共に手を合わす。

ぴかぁっ、と玉が光って空へと昇る。
その玉が10個に別れて……地面に降りてくる。

「……全部金色、虹色は無しか」

今回、引きが悪いな。
よしっ、こんな時はこの日はこれ以上引くのは止めよう。
……15回10連を引いといて、止める決断をするのは遅い気がするが、まぁいいか。

虚しい気持ちになりながら画面を見る。
あぁくそっ、腹立つなぁ、後でこのアプリのレビューに低評価いれた後、不満の文を書いてやろう。

そう思って、スマホアプリを止めて、ポケットに入れる、その時だ。

『電話だぞ、早く出てやれよ』

イケメンボイスが鳴った。
その瞬間、どきっと心が高鳴った。
おぉ……ビックリしたぁ、焦ったぁ。
このちょっと悪めの感じの声、たったまらないっ。

最近、ダウンロードして良かったぁ、そして電話掛けてくれた人、ナイス!

『電話だぞ、早く出てやれよ、電話だぞ、早く出てやれよ……』

ふふっふふふふ、このボイスは繰り返し聞いても仕方ない。
よし……暫く聞いておこう。

『電話だぞ、早く出てやれよ、電話だぞ、早く出てやれ……プツッ』

と思ったのに、切れてしまった。
しかも途中で……なんか煮え切らない。
そんな気持ちになりつつ、誰から来たんだろう? と思ってスマホを確認する。

「…………なんだ、電話の相手は止か」

だったら早く出れば良かった。
何故なら、この後『イケメンボイスばかり聞いてんじゃねぇよ』とレインのメールが来るだろう。

と、予想すると。
ぺこぴんっ、って電子音が鳴った。
レインの着信音だ、確認してみると、案の定相手は止、内容は『イケメンボイスばかり聞いてんじゃねぇよ』だった。

全く、止はイケメンボイスの良さをまるで理解していない。
今度、その良さを言ってやろう。

あっ……そうだ、止には2月には店に出るように言わないとダメだな。
色々と世話の掛かる奴だが、止もこの店の大切な従業員、店に戻ったら、一番に止の部屋に行こう。
そして、イケメンボイスの良さを伝えよう。

思った私は、レインで『ごめん、その件は善処する』と打った後、スマホを膝に置いた。
さて皆、待っててくれよ! 今から私が店に戻るからなぁぁっ。

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