住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

御節と3つ星とド怒りと……

「おぉぉ、これが私の部屋ですか」
「そうだ、後日胡桃の荷物がこの部屋に運ばれる、その間は最低限の物しかないが……まぁ我慢してくれ」

あれから七瀬さんとは一旦別れ長門さんに部屋に案内された、まるで高級ホテルの様な室内に度肝を抜かれ歓喜の声をあげる私、こっこんなお部屋に住むなんて罰当たりませんかね? と怯えつつ私は、ふっかふっかのベットに勢い良く飛び乗ります、そしたら、ぼよぉぉんっと身体がバウンドしました! うひゃぁ、一度良いからこう言うベットで寝たかったんですよね。

「あぁ、幸せですねぇ」

そう呟いた後、私は目を瞑っります。
疲れましたね、昨日は乗り物に乗りっぱなしで疲れちゃいました、もう少しお部屋を見たかったですけど寝てしまいましょう、1月1日、お正月……東京に来て寝正月になってしまうのは……なんか損した気分になりますね。
でも色々あったんです、ですのでおやすみなさぁい、心の中でそう言った後、私は靴下も脱がずに寝てしてしまいました……が、別に構いません、色んな疲れが重なって私は直ぐに目を閉じて寝てしまいました、おやすみなさぁい……ぐぅ。


あれからどれだけ時間が過ぎたか分かりません、その時私の身に何かが起きました。

「んっ……」

なんでしょう? 誰かに身体を揺らされている気がします。
うぅ眠いから寝かせてくださいよぉ、私はごろんっと寝返りします、私は寝正月をするんです、邪魔しないでください。

「胡桃起きろぉ、ご飯だぞぉ」

この声は長門さん? 私は目をしぱしぱさせながら寝返りをうち目を覚まします。

「んんー、ご飯? あぁそう言えば……まだ食べて……ぐぅぅ」

ねむた眼で長門さんをじぃと見ます、あぁ眠いです、食欲より眠気の方が勝っています。

「すみません、眠いんです……もう少し……寝かして下さい」
「駄目だ、食事はちゃんととるべきだ!」

うぅ……揺さぶりが強くなりました、ですが私は眠いんです、このまま眠ってみせます! なので早急に心の中で羊を数えましょう。
羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹……。

「そうか、起きないか……ならば」

ふっ、何をしようが起きませんよ? 何故なら私が不良だった時《不動の桜塚》て言われるくらい寝たら何されても起きなかったんですから。

あれ? なんか両足がすぅすぅしますね、もしかして布団を捲られた? ふっふっふ、甘いですね、その程度で私はびくともしません!

「こちょこちょこちょ……」
「……っ!」

あっ足の裏が変な感じがします! くっ……うぅっ、こっこれはぁ……くっくすぐり攻撃です!

「ほらほら、ここが良いだろう?」
「うっ……んっ、あっ……んんっ」

さわさわっと優しくくすぐられています……こっこれは不味い!

「はっはっは、胡桃はここが弱いのか、ならば攻め続けよう」
「ふっ……あっ……んんっ、くっ……っ!」

長門さんは意地悪な事を言いながら私の足の裏をくぐってきます、それに対して私は、ただ小さな悲鳴を上げるしかできません。
こっ声を我慢しないといけないのに……こっこんなの我慢できないですよ! ぐっぐぐぐっ、身体がびくびく反応しちゃいますぅぅっ、でっ ですがこんな時は……ひっ羊です! 羊を数えれば落ち着く筈です! ひっ羊が……。

「そろそろ両足を攻めよう……こちょこちょ」
「っ、ひゃはんっ!!」

決壊しました、我慢と言うなの精神のダムが……。

「あっあははははっ、ひっひぃぃっ、ひゃっひゃめて……いひっいひひひ……ふぅぅっふぅぅぅ、あみゃちゅきゃしゃん! しょっしょこはらめぇぇ」
「はっはっはっ、良い声をするじゃないか胡桃」

起きてしまった私は大暴れ、ベットがギシギシと音を立てます。
こんなに大暴れしているのに長門さんはくすぐるのをやめてくれません……私もう起きましたのにぃ。

「なんか楽しくなってきた、おい七瀬お前も……」

えっ? なっ七瀬さんがいるんですか? 目を瞑ってましたから気付きませんでした。
って、あれ? くすぐりが治まりましたね……なんで急に止めたんでしょう? いや、止めてくれたのは嬉しいんですよ? でも急に止めてくれましたから……少し疑問です。

気になったので上体を起こすと本当に七瀬さんがいました、その前には長門さんがいます、なにか様子が可笑しいですね……。

「なっ七瀬ぇぇ! 鼻血! 鼻血が出てるぞ!」
「え……あっ、本当です! なっ七瀬さん大丈夫ですかぁぁ!」

長門さんが指摘するまで気付きませんでしたが、七瀬さんは大量の鼻血がどくどく垂れていました。
なのに表情はとても喜びに満ちていました……いっいや! 意味がわかりませんよ! なんで鼻血を出しているのに喜んでいるんですか!

「気にしないで、これは喜びと嬉しさの結晶」
「訳の分からん事を言うな! 胡桃! あそこにある冷凍庫から冷たい物を取ってきてくれ! 何でもいいぞ!」
「はっはい! 分かりました!」

私はベットから飛び降ります、七瀬さんは鼻血を出しすぎて変な事を口走っています。
これは早く何とかしないといけません! そんなこんなで七瀬さんの鼻血治療に奮闘する私と長門さん、騒がしい事が1度起きちゃうと長引いちゃうんですね。


場所は移ってビルの最上階、街全体が見渡せる豪華なレストラン……優雅な音楽が流れる所で食事中です。

「ごめんなさい、迷惑を掛けて」
「そんなに気にするな、ほら笑顔だ笑顔、にこってしろ」

で、先程から七瀬さんが元気がありません、無表情の顔が少ししょげてしまってます、そんなに気にしなくて良いのに……。

「それか飯を食べると良い! 今日はお正月だからな、飛び切り良い物を用意したんだぞ?」
「ありがとうございます」

静かに一礼する七瀬さん、ゆっくりと箸を持ちます。

「美味しそう」
「だろう?」

七瀬さんの言う通り美味しそうです、重箱に入った数々の料理、数の子、黒豆、伊勢海老にだし巻き玉子、その全てが美味しそうです。

「どうだこの見事な料理は! まぁ作ったのは私じゃないけどな、はっはっはっ!」
「それ威張れる事ですか?」

思わず突っ込んじゃいました、だってさも自分が偉いみたいに言いましたから、つい出てしまいました。

「ほら七瀬、食べてみろ」
「はい」

静かに返事をした後、七瀬さんはだし巻き玉子を箸で摘まんで口に含みました。

「っ! 美味しい」

そしたら、しょげていた顔が笑顔になりました。
と言っても薄く笑っただけですけど、何も問題ありません。

「流石は3つ星に作らせただけはあるな」
「みっ3つ星!?」

と、安心しきっていたらとんでも無いことを聞いてしまいました。
みっ3つ星ってあれですよね? ミシランのランク付けの、そっそれしか考えられません。

「ん? どうした胡桃? 何故固まっている? 食べないのか?」
「たっ食べます! いっ頂かせて頂きます!」

動揺が顔に出てた様です、長門さんに不思議がられてしまいました。
だって動揺するのは仕方ないじゃないですか! あのミシランですよ! ミシラン! しかも3つ星! 今までそんなの食べた事ありませんよ……ですから動揺してしまうのは無理もありません。

「……胡桃、言葉が変」
「なっ七瀬さん、今は突っ込まないで下さい」

うっうぅ恥ずかしくて顔が真っ赤になっちゃいました。
あれ? なんか七瀬さん、さっきから私を見てないですか? あっ視線をそらしましたね。
まぁいいでしょう、それより食べましょう、お腹が減ってるんです、ミシランがどうとかは今は気にしません!

と言う事で、箸で黒豆を掴み、ぱくっと食べました。
すると口の中に仄かな甘味、そして豆の風味が広がっていきました。
あぁ……これがミシラン3つ星の味なんですね。

「ふむ、流石は3つ星、他とは違う」

長門さんも箸で数の子をつかんで、はむっと食べました、それを飲み込んで、にっと笑います。
そりゃそうです、なんせミシラン3つ星ですからね、他とは訳が違います、と言うか長門さんはそう言う料理を数多く食べてる筈、その長門さんをここまで言わせるなんて……流石の一言です。

「後でお礼を言わないとな、近くの商店街の大衆食堂3つ星の女将さんに」

ふふふっ、そうですよね……ここまで美味しい料理を作ってくれたんです、お礼を言わないと罰が……んんっ?

「なっ長門さん? 今なんと言いました?」

いっ今……長門さん変な事を言いませんでしたか? 正直聞きたくありませんでしたが反射的に聞いてしまいました。

「え? お礼を言わないといけない……だが?」
「もっと先の言葉です!」

こんな時にとぼけないで……って、素で言ってますねこの顔……。

「んう? んー……! あぁ、女将さんか?」
「ちっ違います、その……えと、たっ大衆食堂の……その……」
「大衆食堂3つ星な」
「そうっ、それです!」

びしっ! と指を指しました。
すると長門さんは、むっとした顔になり私の手を掴み下げてきました。

「こら、人に指を指すんじゃない」
「あっ、すみません……じゃなくて! 大衆食堂3つ星ってなんなんですか! みっミシランはどこいったんですか!」

話を変えられる訳にはいかない……だんっ、とテーブルを叩いて長門さんに言い寄ります。
すると長門さんは……なんか疑問に満ちた顔をしました。

「胡桃何を言ってるんだ? ミシランってなんの事だ?」
「え……あっ……え?」

なっ……こっこの顔は……本当に「何言ってんだこいつ」って言ってる顔です、全然すっとぼけてる感じがしません!

「はむっ……むぐむぐ、長門、多分胡桃は勘違いしてる」
「ん? どう言う事だ?」

長門さんは伊勢海老を食べた後、服の裾を引っ張り「つまり……ごにょごにょ」と耳打ちしました。

「ひゃっ、くっくしゅぐったい……んっ……んー……ほぉ……ふむふむ、あぁなるほど」

前半可愛い声出しましたね……それが恥ずかしかったのか顔が少し紅いです。
と、そんな事はどうでも良いんです、七瀬さんに何を言われたんですか? と思っていると長門さんは「こほんっ」と咳払いして私を見てきました。

「胡桃、今から説明しよう」
「あっ、はい……そうして下さい」

……なんでしょう? 長門さんがくすくす笑ってます、真剣に話している様に見えてふざけています、少し腹がたってしまいました。

「ジェット機で料理を食べただろ?」
「えっ、あっあの大衆食堂の大将さんの料理をですよね?」

いっいきなり話さないで下さい驚いてしまいました……と言うかなんでここでジェット機の中の話をするんです?

「そうだ、あの大将こそが大衆食堂3つ星の大将だ」
「…………は?」

えっ、えー……え? 大衆食堂3つ星? 3つ星……もっもしかして私、盛大な勘違いを……。

「つっつまりな……ぷくくっ、胡桃は……ふひひっ……みしっミシランの……ぷふっぷふふふ……3つ星と……たっ大衆食堂3つ星とを……かっ勘違いして……いたんだ」

長門さん、笑うの我慢するの止めてもらって良いですか? 私は今までした勘違いで恥ずかしさが限界に達しているです。

「ひなみにひょの御節は大衆食どぉ3つ星の、女将しゃんがちゅくったもにょ」
「七瀬さん、食べながら喋るの止めてください」

くっ、はっ恥ずかしいです。
と言うかこれ! 仕方ないじゃないですか! 本当に美味しかったんだもん! ほんとミシランに出して良いくらいに! そもそも長門さんが何も言ってない性でこんな勘違いをしたんです! ですから私が恥ずかしい思いをしたのは全て長門さんの性です!

「はっはっはっ! あぁっもうだめだ! わっ笑いすぎて腹がよじれてしまうっ、ひぃぃっ」

背もたれに持たれて盛大に笑う長門さん……ふふっ、そうです……この人の性で私は恥ずかしい思いをした。
と言うかそんなに笑らわれる筋合いはないじゃないですかね? これは可愛い勘違いです……なのにこんなに笑われた。

「くっ胡桃は……ひぃぃっひぃぃっ、以外と天然な所があるんだな! あっはっはっはっ!」

一向に笑うのを止める気配がありません、私は「ふぅぅ……」と静かに息を吐き箸を置きます。
すると何かを悟ったのか七瀬さんが長門さんに触れて「長門、そろそろ笑うの止めた方が……」と言ったのでそれを睨みで静止させます、そしたら七瀬さんの身体はびくんっ! と跳ねて静止しました、ごめんね七瀬さん……。

「こんな勘違い、誰もしないんじゃ……」

長門さんが話してる最中に私は長門さんの頭を掴みます。
すると、長門さんは笑顔から一変して恐怖の表情になりました。
はて、何故でしょうねぇ?

「なっ、なんだその阿修羅も尻餅して逃げ出す様な恐ろしい顔は!」
「失礼ですね長門さん……私、そんな顔に見えますか?」

にこっ、と笑ってみせます。
そしたら長門さんは涙目になりました。

「もっもしかして……わっ笑い過ぎた事を怒ってるのか? ならば謝ろう! ごめんなさい! ほらっ謝った! これで良いだろう?」

ふふっふふふふふ……今更謝られても無駄です、ですので私はこう言いました。

「言い残す事は……それだけですか? 少し裏でお話しましょうか……なに、簡単なお話ですよ……簡単な……ね」
「ひっひぃぃぃっ! うっ嘘だ! 乱暴する気だろ! 私の身体に乱暴な事をする気だろ! やっやめっやめろ! やめてくれぇぇ!」

ジタバタ暴れる長門さんを一旦離して掴みやすい襟首を掴んで私は立ち上がります。

「七瀬さん、先に御節食べてて下さい……私は長門さんとお話してきます」
「……ん、わっ分かった」

あれ? 長門さん、顔が紅くないですか? それになんで鼻を押さえてるんでしょう? 鼻血はもう停まりましたのに。

「さっ、長門さん……行きますよ」

一言だけ言った後、この部屋の出口まで歩いて行きます。

「ひっ! くっ胡桃……はっ話をしよう……人間話し合いがあいてぇぇ! 背中うったぁぁ! こっこら! 引きずるな! 私は社長だぞ! 偉いんだぞ! 社長に暴力を振るったら……」
「少し黙りやがってくださいませんか?」
「あっはい……すみません」

ふぅ……やっと静かになりました。
私の睨みもまだ捨てたもんじゃないですね、これで何度男をビビらせた事か……ふふふっ、昔を思い出しますねぇ。
おっと今は長門さんに集中しないといけません、さて……暴力的ではないお話をしましょうか。
と言う事で……覚悟しやがってくださいね? 長門さん。

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