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わいず

出会いの話っ 3

バラバラバラーーー
力強くくるくると回るプロペラの音がします、そりゃそうです……だって私は今ヘリコプターに乗ってるんですから。

因みに飛んでからはもう10分が経っていて下を見れば雪景色の街並みが見えます。

いやぁビックリしましたよ、ガタイが良い男にヘリに乗せられ、その後天塚さんが乗ってきて「飛んでくれ」の1事で飛んじゃいました、因みにガタイの良い男さんは私の隣に座ってます。
桜塚さんは私の真正面にいます、皆さんちゃんとシートベルトを着けています。

これが人生初のヘリデビュー、出来れば別の形で乗りたかった。

何がどうしてこうなっかしらないですけど、ここまでパニック続きだとまいっちゃいますよ! しかもこのヘリコプター、驚くべき事に着地していた場所は私の家の空き地です、桜塚さんいわく丁度良いスペースだったから停めさせて貰ったとの事です。

あの天塚さん?車を停めるのとは訳が違うんですからね? あの空き地は近所の方が良く使う駐車場であって、ヘリポートじゃないんですよ?

「あっ、パイロット適当なヘリポートに止まってくれ、コンビニ行ってアイスの当たり棒交換してくる」
「了解しました」

と心の中で突っ込んでいると、さらっと「近くのコンビニ行ってくる」みたいな乗りでとんでも無い事を言いましたね……驚いて声も出ませんよ、と言うか今私は電話してるからリアクション取れないんですけどね。 え?どこに電話してるのかって? それは……。

「だぁかぁらぁっ、嘘じゃないんだって!」

お母さんにしています、今起きている状況をお母さんに伝えています。
「社長に連れてかれて今ヘリに乗ってるの!」と説明してるんですけどお母さんは「あらやだこの娘ったらっ、嘘おっしゃい」とか言って信じてくれません、そりゃそうですよね?こんな事すんなり信じられたら困ります。

『でも胡桃ぃ、あんた男の上に乗らないで先にヘリコプターに乗るなんて信じられないわよ』
「いきなり猥談ぶっこんでくんな!と言うかその言い方だと私はそんなに股が緩いと思ってるのかぁぁぁっ」

ほんっと意味が分かりません、けらけら言いながら変な事言って来ないで下さいよ!

「兎に角、今ヘリに乗ってるの!面接に合格したから東京行くの!」

はい、知らない人が聞いたら100%「は?」って言うであろう台詞……でもね?家のお母さんはかなり違った台詞を言うんです。

『あらやだっ合格したの?しかも上京?やだぁお母さん鼻が高いわっ』
「どこまでも能天気だね!」
『あら、誉めても何も出ないわよ?』

誉めてないよ!全く誉めてないよ!寧ろ私は呆れたよ!ほんっと色々と抜けきってますね家のお母さんは。

「私急に連れ去られたんだよ?心配とかしてくれないの?」

この言葉は小声でこっそり言いました、聞かれてたら色々と面倒な事になると思っての行動です。

『えぇ?だってあんた就職出来るんでしょ?良い事じゃない』
「うん、それは良い事かも知れないよ?でもね私さっきから何度も言ってるよね?私っ連れ去られてるんだって!」
『即日スカウトなんて羨ましいわぁ』

だめだ、理解してない、お母さんは事の重大さを全く理解出来ていない!
どっどう説明したら、って、ん?天塚さんに肩を叩かれました……何か睨まれてるんですけど私何かしましたかね?

「連れ去れたとは聞き捨てならないな、きちんとスカウトされたと言え」

あっあっれぇ?怒られちゃいました、何で? 私ありのまま起きた事を話したんですよ?なのに怒られた、意味が分かりません、って……天塚さんシートベルト外してませんか? ほらっ私の隣にいるガタイ良い男さんが「社長っ、シートベルトつけてくだせぇ」って言ってますよ? あぁ無視してこっち来ちゃいましたね、って……うわわっ、電話取られちゃいました。

「もしもし電話変わったぞ!私は天塚だ、よろしくな」

いや、よろしくなっ!じゃないですよ! 何勝手私のスマホ取って勝手に話してるんですか、あっ、席に戻ってシートベルト着けました、これで一安心ですね、いや安心じゃないです、私のスマホ取られたままです!

「この度はそちらの娘さんの………んっ?……あぁそうだ……うむ……こちらこそ礼を言う……うむっでは」
ピッーーー

?……いっ一体何を話したんでしょう。

「って、天塚さん電話切っちゃったんですか!」
「あぁ、手っ取り早く今の状況を話してやろうと思ったんだが……向こうの理解が早くてな、説明の手間が省けた」

あのね天塚さん、うきうき顔で言ってる所悪いけどね? 絶対に理解してないと思いますよ?

「何か知らないが娘が就職出来て良かったと言っていた」
「いや、私天塚さんのお店に就職するなんて一言もーー」

言ってないです! そう言おうとしました、したんですけど……なんでしょうか?桜塚さんが悲しげな目でこっちを見てきました。

「嫌か?そんなに私の店に勤めるのは嫌か?」
「え?」

なっ、しゃっ社長の目力を感じます、じぃと私を真っ直ぐ見詰めて来ています。

「何も答えないと言う事は嫌なんだな?」

うっ、この心にぐさりと突き刺さる言葉とその言い方、社長ならではの何かを感じちゃいます。

「えっいやっ、嫌じゃないです!只、なんか話が急に進んでましたから……その」

少しだけですけど、乗せられてる?と内心思っていたんです、だけど何ででしょう? つい答えちゃいました、そのやり取りをただ静かに見つめるガタイが良い男さん、サングラスから鋭い眼光を感じます、緊張してきました。

「成る程、話が進みすぎて躊躇ちゅうちょしている訳だな?それを先に言え」
「えっあっはい、ごめんなさい……」

やっと分かってくれた。

「ならば、何故桜塚を採用したのか話してやろろう、それを聞けば私の店に働きたいと思うだろう」
「そっそうなんですか」

むんって胸を張る天塚さん、胸が強調されてて苛立ちが、げふんげふんっ、やらしい感じになってます。

でも説明してくれるのは助かります、心して聞きましょう。

「まずは桜塚を採用した理由を単刀直入に言うっ!」
「はっはい!」

おぉ真剣な表情になりましたね、なんか緊張して来ました。 
一体何をいってくれるんでしょう?

「寂しいからだ!店に働いてる人はいるんだが数が多い方が良いだろう?」
「ふぇ!?さっ寂しいから、でっですか、へーそうですか、はははは」

えーと、なんでしょう? この何とも言えない感情は、取り合えず何か言いましょうか。

「帰ります、直ぐに引き返して貰いますか?」

聞いても納得できませんでした、よって帰りますっ、文句なんて言わせません!

「いやいやナッツリターン問題じゃ無いんだから我が儘言うな」
「我が儘言ってるのそっちですよ?分かってますか?」

寂しいから私を採用した? それ冗談ですよね? まさか本気で言いましたか? だとしたらバカじゃないですか?変に緊張して損しましたよ。
納得するどころか何とも言えない感情を抱いちゃいましたよ、と言うかナッツリターン問題って懐かしいですね、久々に聞きましたよ。

「うっ、そんなに睨むな、怖いやつだなぁ」

天塚さん、私の目を見て若干怖がってますね、小さい時から言われてるから気にしないですけどね。

「怖くて悪かったですね、それよりっ早く引き返す様にパイロットさんに行ってくださいよ!」
「いや待て、まだ私の話は終わっていない!」

えー、もう終わりですよね? 急に私を採用したのも自分が寂しいから、そんな理由で納得しろと言うのは無理です! よってこれ以上話を続けても無意味ですよ?

「これを聞けば桜塚は絶対に、働かせて下さい!と私に深々と頭を下げて言うだろう」

なんですか?その自信に満ちた顔は、腹立ちますね、と言うかさっきそれを言いましたけど私を納得させれませんでしたよね?

「へー、そうですか」
「むっ、信じてないな?」

疑いの目を向けたら睨まれた、でもそんなの関係ありません、このまま疑いの目を向けてやりましょう。

「では言うぞ?」
「はい」

次は何を言うんでしょうね、一応聞いておきましょうか。

「私の店に就職すれば! もれなくっ! 従業員に! 毎日!」

うわっ、妙に溜めてきますね、ぱぱっと言えば良いのに。

「私と遊ぶ権利を与えーー」
「あっ、そう言うの良いですから真面目に答えてくれませんか?」

ふざけてる場合じゃないないんですよ?

「いや、私は本気で言ったんだが?」

あっ、本気なんですか、だったらもっと真面目に言って下さい!

と言おうとしたら急に何かを思い付いた様な顔をしてこっちを見てきました、そして。

「桜塚、フリーターだったよな?勤め先はどこだ?」

こう言ってきました、突然の事で戸惑いましたよ。

「なっなんですかいきなり」
「良いから答えろ!」

うっ、これは真面目な顔……ふざけてる感じは一切感じられません、ここは私も真面目に答えておきましょう。

「"ピッツァベレー"と"ぺぽら"ですけど……それがどうかしたんですか?」

ピッツァベレーはデリバリーピザ屋さん、ぺぽらは和歌山県にしかないコンビニの名前ですね、私はこの2店で働いています。

「ふむ、支店はどこだ?」
「え? ピッツァベレーが○△支店で、ぺぽらが□×支店ですけど」

それを聞いて何をするつもりなんでしょう? ん、天塚さんスマホを取り出しましたね、フリックしてますね、メールでもしてるんでしょうか? うわっ……素早いフリックですね、私そんなに早く文字を打てませんよ。

って、今この瞬間にメールって可笑しな話しですけどね、あっ天塚さんが顔を上げました。

「よしっ!メール出来たぞ」

えぇっ!本当にメールしてたんですか? おっ驚きです。

「どこにメールしたんですか?」
「桜塚の今言った場所にだ、そこの責任者にメールした」

えっえと、何を言ってるんでしょうかこの人は、責任者にメール?
いやいやいや、いくら社長と言えど他の企業のメールアドレスを知っているなんて事あり得ません、きっと嘘を言ってるんです。

♪♪♪~
「うわわっ!!」

びっビックリしました、私のスマホが鳴りました、この音楽はメールの様ですね? 一体誰からでしょう? 慣れた手付きでスマホを操作しメール画面を開くとそこには2件のメールが来ていました、そのメール内容は。

ーーーーーーーー
バイト先 ぺぽら
お店の事は気にすんな!

おっす店長だ、突然のメールをすまない、桜塚さんに伝えたい事があるんだ。
来年のシフトなんだけど……君はもう来なくて良いよ、天塚様の所で頑張んなさい!
ーーーーーーーー

「……はい?」

えっえっ、えっ? なっなんで? 私、シフト無い? なんで? おっ可笑しいです……読み間違いでしょうか? 天塚様の所で頑張んなさいって書いてある様に見えますが。
きっきっとこれは気のせい!メールは後1件あるんですっ、次のメールを見てみましょう。


ーーーーーーーーー
バイト先 ピッツァベレー

お前のシフト……ねぇからっ!

ーーーーーーーーー

何このメール、信じられないんですけど……一体この短時間で何があったんですか? 私何も悪い事してませんよね? 後半に関しては私に対して完全に来んなって伝えてますよね? どっどどどっどうしましょう……動揺し過ぎて何も考えられません!

「あっれれれぇ……どうしたぁ桜塚ぁ、何か突然仕事先を止めさせられた みたいな顔をしているぞ?」

あっ、この人か……天塚さんが何かやりましたね? わざとらしく私に調子に乗った顔見せ付けて来やがりましたよ?

「どうするぅ?仕事無くなったぞぉ?もう私の店に就職するしか無いんじゃないかぁ?」
「……」

くっ、社長と思って固くなっていたらとんでもない人でした、物凄い腹立つ口調で散々いってくるじゃないですか。

「何で黙るんだぁ?路頭に迷うぞぉ?私の店に…」
「天塚さん」
「んー?どうしたぁ?」

ですので……一旦私の本性見せちゃいましょうか。

「調子付くのも大概にしないと、潰しますよ?」

にっこりと微笑んで鋭い眼光を天塚さんに見せてやります、そしたら天塚さん、急に顔を強張らせて固まっちゃいました。

はい、ぶっちゃけちゃいますね、この変に粗暴な口調は私が学生時代不良だった名残です、気を付けないとつい出ちゃうんですよね……でも今は出しちゃってます、だって頭に来ましたからね。

「天塚さん、私の質問に正直に答えて下さいね?」
「はっはひ」

次ぶざけたらぶっ潰す、と目で伝えます、そう言う雰囲気を私は出しました、お陰で素直に答えてくれました……あっ、社長相手にこんな態度だと隣に座ってるガタイが良い男さんに怒られる事はありませんでした。
何故ならその方は黙っていました、怒られる心配はないととって良いんでしょうか? まぁ良いですよね? 良いとしましょう。

「私のバイト先に何かしたんですね?」

なので、ばしばし言っちゃいましょう。

「しっしました、さっ桜塚を止めさせないと……おっお前らの秘密を……ばっ暴露すると脅した」

ほぉ成る程、そう言う事ですか、だからあんなメールが来たんですね? あの2人の秘密が気になりますけど、今それは置いておきます。

「それは撤回出来ないんですか?」
「いっ今更撤回とかは無理だ!」

小声で「本当だぞ!」と続ける天塚さん、ですよね……今更そんな事言えないですよね? さてどうした物でしょう、と私が考えていたら天塚さんが「時給こっちの方が良いぞ」と呟いて来ました。

そうそれなんですよね、時給が良いのは良いんです、私が悩んでいるのは住み込み就職の事と連れ去られた事と天塚さんの利己的な理由で入社させられそうになってる事に悩んでるんです。

「にっ荷物とかはもう速達で送ってあるぞ?」
「何私が就職する前提で勝手な事してるんですか?」
「すっすみません」

こっちは色んな事に悩んでいると言うのに勝手な事しないでくださいよ!

「もう覚悟決めた方が良いですよね?」

はぁ今ここで私がどうこう言っても状況が変わらない気がしてきました、いや、きましたじゃありませんね、変わりません が正解ですね、だったら今言った様に覚悟を決めましょう、天塚さんの思い通りなのが不服ですけど。

「天塚さん」
「なっなんだ?」

鋭い眼光は止めて優しい目にして天塚さんを見つめます、でも天塚さん、怖がったままですね、カタカタ震えてるじゃないですか。

「御社に入社させて頂けますか?」

この時に、余計な事を口走ったら潰す……と言う意味を込めた雰囲気を出しておく。

「もっももっもちっ勿論歓迎するっ!」

怖がりすぎてラッパーみたいになってますね、ふふっ良い気味です。

「では、よろしくお願いします」
「こっこちらこそ、お願いする」

お互い座ったまま深々とお辞儀しました、そしてお互い頭をあげた後私達は暫く何も喋りませんでした、あっ……やっと静かになりましたね。


はい、という事で私、ほんっとに物凄っく不服ながらも天塚さんが経営するお店に就職する事になりました! こんな形で定職に付くなんて思ってもみませんでしたよ、人生何が起きるか分かりませんね。

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