魔術的生徒会

夙多史

四章 悪魔の視力(1)

 温かい光に包まれるような感覚に、魁人の意識は覚醒した。
 ゆっくりと目を開く。その奥の瞳は、青色のままだった。
 ぼんやりとした視界が鮮明になっていく。最初に映ったのは、心配そうに覗き込んでいる生徒会長・月夜詩奈の顔だった。
「あはっ、気がついたみたいね。よかったぁ」
 安堵の笑顔を満面に、月夜は胸を撫で下ろす。魁人は自分の状況が理解できず、寝ている状態から首だけを動かして見える範囲から情報を得る。
 場所は見覚えのあり過ぎる高級マンション的な部屋――生徒会室。そしてどうやら自分はそこのソファーに寝かされていたようだ。
「いやぁ、意識がなくても魔眼って発動するもんなんだねえ」
 感心するような声が聞こえたので見ると、ガラステーブルを挟んだ対面のソファーで、副会長の御門銀英がニヘラと美形を台無しにしそうな笑みを浮かべていた。彼の隣には会計の藤林葵が座り、彼女の膝の上に子犬化したリクが撫でられながら大人しく眠っている。
「魁人、会長には礼を言うべきだよ。付きっきりで治癒魔術をかけてたんだからさ」
「治癒魔術?」
 上体を起こしてもっと辺りを見回す。すると、ソファーの周りを囲うように、ルーンの文字が刻まれたメダルのような金属板が並べられているのが見えた。なるほど、あの温かな感覚はこの魔術によるものらしい。
「えっと、ありがとうございます、月夜先輩」
 頭を下げて心から感謝するように礼を言うと、月夜は『どういたしまして』とにこやかに笑ってくれた。
 そのままルーンの金属板を片づけ始める月夜に、魔眼の色の消えた魁人は申し訳なさそうに頭を掻く。
「すみません、俺、ちょっと夢を見てました」
「魁人くん、それはどんな夢かな?」
「昔の夢ですよ。たいしたものじゃありません」
 今思えば、父はこの眼のこと、見える光のことを知っていたのではないだろうか。確認しようも、父は仕事で海外を飛び回っているためもう何年も会っていない。連絡はなぜかいつも取れず、時々向こうからの手紙が一方的に送られてくるくらいだった。
 父が魔術師だとは思えない。それほど強い光ではなかったと記憶している。
「でも、気になることを思い出しました。父さんが言ってたんです。この眼は、『悪い魔法使いを倒せるほど凄い』って……」
「!」
 冗談に等しい軽い気持ちで言ったつもりだったが、月夜と銀英は目を丸くして顔を見合せる。魁人は気づかなかったが、実は葵も眉根が少し動いていた。
「葵ちゃん、魔眼の資料持ってきて」
「わかった」
 葵が了解した瞬間にリクが飛び起きる。彼女はソファーから立ち上がると、ちょこちょこと可愛らしい小走りをするリクと共に棚の方へと歩いていく。
「いやそんな過剰に反応されても、その辺の記憶は曖昧ですから本当は違う言葉だったかもしれませんよ」
「でもでも、それが本当だったら凄いよ、魁人くん」
「危険な可能性は跳ね上がったけどね。時に二人とも」
 興奮気味の生徒会長に対し、銀英が落ち着いた口調で告げる。
「今は夢や魔眼のことを話している場合じゃないんじゃない?」
「!?」
 言われてから魁人は気づく。電撃が走ったように気を失う前のことを思い出す。
 それを悟ったように、銀英は真剣な表情になって訊ねてくる。
「さて魁人、体育館裏で何があったのか、紗耶はどこに行ったのか、記憶を失ってないのならその辺の説明をお願いできるかい?」
「……わかりました」
 慌てず、叫びたい衝動を無理やり抑えつけて、魁人は情報を整理する。そしてそれが現実だったことを再確認し、必要なところだけを掻い摘んで語り始めた。

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