G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~
第三話 才能《ユニークスキル》
勇人がエンガイストに無事着地するなり、すぐに初期装備の腕時計が何かを伝えるかのように鳴り響いた。
操作方法は、現実世界と同じように画面に触れるだけのようで、勇人が画面に触れるなり、勇人の目の前に半透明の画面が現れた。
その画面にはゲームの簡単な説明などが書かれており、簡単なチュートリアルのようなものだった。
『では、まずこの世界の基礎について説明します』
画面の文字は次々とこの世界について説明を行っていった。
勇人はある程度説明書などで知っていたのでここまでは難なく付いていく。
そんなことより、早く『才能』が知りたいというのが勇人の本音である。
この『才能』こそこのゲームのお楽しみ要素で、完全な運任せである。
聞くところによると、『才能』には様々なバリエーションがあり、完全な戦闘特化系から生産職系、そして何に使えばいいのかも不明なスキルもあると言う話だ。
『では、まずはじめにフレンドを作りましょう』
画面にはそう表示された。
ここに製作者の性格が現れている。
さっさと『才能』を教えてほしいものだ。
「えっと、だれか……」
勇人は、さっさと終わらせるために辺りを見渡してプレイヤーを探す。
「誰かが私を呼んでいる!」
勇人の後ろで誰かが痛いセリフを叫んだ。
勇人はその声に聞き覚えがあり、絶対に振り向きたくない気持ちに覆われた。
そして無視をしようと決め、そのまま他のプレイヤーを探し始める。
「ちょっとー、無視は良くないんじゃないの?」
その声の主は若干拗ねたような声を発する。
それでも勇人は無視を続ける。
「お兄ちゃん、女の子には優しくしないと」
そこへ、義妹の美咲が現れて、勇人に話しかけた。
「さすが美咲ちゃん、いい子だねー」
「咲空お姉ちゃん、お久しぶりです」
声の主の咲空と美咲は握手を交わし笑顔で会話を始め、フレンド登録を始めた。
この二人は、結構仲が良かったりするのだ。
そして、その間勇人は一人ぼっちのため、チュートリアルをクリアできないでいた。
「おや、勇人君はお一人様かな?」
そこへ、紅谷が現れる。
なんともタイミングの良すぎる登場の連続に勇人は、疑いの目で紅谷をにらみ付けた。
「そんな目で見ないでくれよ、僕は何も仕組んでないよ、偶然にも勇人と愉快な仲間たちが見えたもんだから機会を待っていただけさ」
「……相変わらずだな」
勇人は諦めきった顔で別の場所へ目を向けると、今度は少しはなれたところへ夕弦を発見する。
こうも約束をした人たちに次々と出会う流れに、勇人は発信機でもつけられているのかと心配になったのだった。
「ところで、勇人君の『才能』はなんだい?」
紅谷が興味深そうに勇人へ尋ねた。
紅谷はまだ、勇人がチュートリアルを終えていないと言う事実を知らない。
「まだ貰えてねえよ」
勇人は嫌そうな顔で紅谷にそう呟いた。
紅谷は驚いた顔で発言する。
「へえ、君ならすぐにそういう面倒なことは終わらせると思ったんだけど」
「やりたかったさ、お前らが次々と現れて対処に追われなければな」
勇人は、そう言って目の前にいる紅谷を睨み付ける。
「すまないね、てっきり終わって暇になってると思って話しかけたんだ」
「もういいよ、ところでお前の『才能』はなんだったんだ?」
その言葉に紅谷は自慢げに笑みを浮かべ、こういった。
「良くぞ聞いてくれました、僕の『才能』は『一刀両断』だよ」
「なんか強そうだな」
「そうだろそうだろ、自分でも満足なんだ」
紅谷は満足げにうんうんと頷いて自分の世界に入ってしまった。
そこへ、話を終えた咲空と美咲がやってきた。
「へえ、紅谷のは強そうだねえ」
咲空は勇人と紅谷の会話を聞いていたらしくそういった。
そして、この二人も先ほどフレンド登録をしていたので『才能』を既に手に入れている。
「そっちはどうだったんだ?」
勇人はそう二人へ問いかけた。
まず咲空が先ほどの紅谷と同じように自慢げに笑みを浮かべ言った。
「ふっふっふ、私の『才能』は『一発必中』なのだ」
「おお、分かりやすいスキル名だな!」
「なんか、馬鹿にされたような気がする……」
咲空は疑いの目を勇人へ向けるも、勇人は既に美咲の方を向いていた。
「私は……『一騎当千』だった」
美咲は何故か申し訳なさそうに、小さく呟いた。
「もしかしなくても、この中で一番強そうだな」
勇人は、美咲が心配していたことを直接言い放ち、自分の世界に入っていた紅谷はハッとなって戻ってきた。咲空もうぬぬと演技としか思えない声を出しながら美咲を見ていた。
「もう、お兄ちゃんのせいで……あれ?」
美咲が勇人を責めようと先ほどまで勇人がいた場所を向くと、そこには既に勇人はおらず、美咲は一人で咲空と紅谷の相手をすることになった。
そのころ、勇人は夕弦のところへいた。
「夕弦、さっそくなんだけど、フレンド登録お願いできるか?」
「もちろん」
夕弦は言葉少なめにそう呟いて腕時計に触れてフレンド登録画面を表示させた。
すぐに、勇人の方へフレンド申請が届き迷わずに許可をタッチする。
そうして、チュートリアルの先に進むことが出来た。
『では、おまちかねの才能をお渡しします』
画面にはそう表示され、抽選をしているのか、読み込みのような表示画面が目の前に広がった。
すると、夕弦の方はもう終わったようで、移動を始めようとしていた。
「夕弦、『才能』なんだった?」
「……あまり、人に教えないでくれよ、『疑心暗鬼』だ」
夕弦はそう言うなり、すぐにどこかへ去っていった。
勇人は失礼ながらも、若干お似合いかもと思ってしまったのは秘密だ。
『お待たせしました、勇人様へ才能をお渡しします』
画面にそう表示され、切り替わる。
そこにはステータスのようなものが表示された。
しかし、ステータスとは言ってもこのゲームには攻撃力や防御力、レベルなどと言った能力地は存在しない。あくまでも、現実に近づけた設定なのだそうだ。
名前 ユウト
種族 神人族
才能 取捨選択 熟練度1『レアアイテムがドロップしやすくなる』
たったそれだけが表示されていた。
ちなみに種族というのは、キャラ作りの時に設定したもので、特に意味は無い。
何が変わるのかと言われれば、例えば、獣人族を選んだ者は獣耳や尻尾などが生え、エルフ族を選んだ者は耳が若干長くなると言った具合に見た目に影響する。
それと、身体能力についても少しだけ補正がかかるようだ。
「……取捨選択?」
勇人は自分のユニークスキルを見て、ガクッと肩を落とした。
「勇人の『才能』って『取捨選択』だってー」
勇人の呟きを聞き逃さなかった咲空が、紅谷と美咲へ大きな声で告げた。
それを聞いた二人は、何故か哀れみの視線を勇人へ向けた。
それもそのはずで、この中で唯一の戦闘とは関係がなさそうなスキル名だったためだ。
「なんか……、どんまい」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
二人は慰めの言葉を勇人に送り、咲空は笑い続けていた。
「慰めありがと、これのスキルでほぼ職業が決まったような気がするわ」
勇人のスキルは、レアドロップが落ちやすくなる。
つまり、それらのアイテムを販売する職業がとても効率的になる。
その結果に勇人は前線で戦いたかったと悔しそうに肩を落とした。
しかし、『才能』には熟練度があり、これを上げるごとに新たな能力が増えていくらしく、これに賭けるしか勇人に道は無い。
そうとなれば、ひたすら地道に努力あるのみだった。
「よし、やる気が出てきた」
勇人は落とした顔を上げて、天を見上げ、新たな目標に向けて努力する決意をした。
その様子に、美咲と紅谷は安心し、咲空は未だに笑い続けていた。
「じゃ、勇人君の調子も戻ったみたいだし、僕はここで別れるとするよ」
そう言って、紅谷は勇人たちから離れていこうとする。
「一緒に行かないのか?」
思わず勇人はそう尋ねると、紅谷は笑みを浮かべて答えた。
「ライバルが最初から一緒に行動するなんて、つまらないじゃないか」
そう言って紅谷は去っていった。
どうもくさいセリフなのだが、イケメンの紅谷が言うとなかなか様になってしまう。
「相変わらずでムカつくな」
勇人は去っていく紅谷の背中を見ながら呟く。
美咲と咲空も、同様に勇人の元から離れるが、二人は一緒に行動するようだ。
「じゃあね、いつかねー」
「お兄ちゃん、一人でも頑張ってね」
そう言って二人は去っていき、勇人も冒険の一歩を踏み出した。
操作方法は、現実世界と同じように画面に触れるだけのようで、勇人が画面に触れるなり、勇人の目の前に半透明の画面が現れた。
その画面にはゲームの簡単な説明などが書かれており、簡単なチュートリアルのようなものだった。
『では、まずこの世界の基礎について説明します』
画面の文字は次々とこの世界について説明を行っていった。
勇人はある程度説明書などで知っていたのでここまでは難なく付いていく。
そんなことより、早く『才能』が知りたいというのが勇人の本音である。
この『才能』こそこのゲームのお楽しみ要素で、完全な運任せである。
聞くところによると、『才能』には様々なバリエーションがあり、完全な戦闘特化系から生産職系、そして何に使えばいいのかも不明なスキルもあると言う話だ。
『では、まずはじめにフレンドを作りましょう』
画面にはそう表示された。
ここに製作者の性格が現れている。
さっさと『才能』を教えてほしいものだ。
「えっと、だれか……」
勇人は、さっさと終わらせるために辺りを見渡してプレイヤーを探す。
「誰かが私を呼んでいる!」
勇人の後ろで誰かが痛いセリフを叫んだ。
勇人はその声に聞き覚えがあり、絶対に振り向きたくない気持ちに覆われた。
そして無視をしようと決め、そのまま他のプレイヤーを探し始める。
「ちょっとー、無視は良くないんじゃないの?」
その声の主は若干拗ねたような声を発する。
それでも勇人は無視を続ける。
「お兄ちゃん、女の子には優しくしないと」
そこへ、義妹の美咲が現れて、勇人に話しかけた。
「さすが美咲ちゃん、いい子だねー」
「咲空お姉ちゃん、お久しぶりです」
声の主の咲空と美咲は握手を交わし笑顔で会話を始め、フレンド登録を始めた。
この二人は、結構仲が良かったりするのだ。
そして、その間勇人は一人ぼっちのため、チュートリアルをクリアできないでいた。
「おや、勇人君はお一人様かな?」
そこへ、紅谷が現れる。
なんともタイミングの良すぎる登場の連続に勇人は、疑いの目で紅谷をにらみ付けた。
「そんな目で見ないでくれよ、僕は何も仕組んでないよ、偶然にも勇人と愉快な仲間たちが見えたもんだから機会を待っていただけさ」
「……相変わらずだな」
勇人は諦めきった顔で別の場所へ目を向けると、今度は少しはなれたところへ夕弦を発見する。
こうも約束をした人たちに次々と出会う流れに、勇人は発信機でもつけられているのかと心配になったのだった。
「ところで、勇人君の『才能』はなんだい?」
紅谷が興味深そうに勇人へ尋ねた。
紅谷はまだ、勇人がチュートリアルを終えていないと言う事実を知らない。
「まだ貰えてねえよ」
勇人は嫌そうな顔で紅谷にそう呟いた。
紅谷は驚いた顔で発言する。
「へえ、君ならすぐにそういう面倒なことは終わらせると思ったんだけど」
「やりたかったさ、お前らが次々と現れて対処に追われなければな」
勇人は、そう言って目の前にいる紅谷を睨み付ける。
「すまないね、てっきり終わって暇になってると思って話しかけたんだ」
「もういいよ、ところでお前の『才能』はなんだったんだ?」
その言葉に紅谷は自慢げに笑みを浮かべ、こういった。
「良くぞ聞いてくれました、僕の『才能』は『一刀両断』だよ」
「なんか強そうだな」
「そうだろそうだろ、自分でも満足なんだ」
紅谷は満足げにうんうんと頷いて自分の世界に入ってしまった。
そこへ、話を終えた咲空と美咲がやってきた。
「へえ、紅谷のは強そうだねえ」
咲空は勇人と紅谷の会話を聞いていたらしくそういった。
そして、この二人も先ほどフレンド登録をしていたので『才能』を既に手に入れている。
「そっちはどうだったんだ?」
勇人はそう二人へ問いかけた。
まず咲空が先ほどの紅谷と同じように自慢げに笑みを浮かべ言った。
「ふっふっふ、私の『才能』は『一発必中』なのだ」
「おお、分かりやすいスキル名だな!」
「なんか、馬鹿にされたような気がする……」
咲空は疑いの目を勇人へ向けるも、勇人は既に美咲の方を向いていた。
「私は……『一騎当千』だった」
美咲は何故か申し訳なさそうに、小さく呟いた。
「もしかしなくても、この中で一番強そうだな」
勇人は、美咲が心配していたことを直接言い放ち、自分の世界に入っていた紅谷はハッとなって戻ってきた。咲空もうぬぬと演技としか思えない声を出しながら美咲を見ていた。
「もう、お兄ちゃんのせいで……あれ?」
美咲が勇人を責めようと先ほどまで勇人がいた場所を向くと、そこには既に勇人はおらず、美咲は一人で咲空と紅谷の相手をすることになった。
そのころ、勇人は夕弦のところへいた。
「夕弦、さっそくなんだけど、フレンド登録お願いできるか?」
「もちろん」
夕弦は言葉少なめにそう呟いて腕時計に触れてフレンド登録画面を表示させた。
すぐに、勇人の方へフレンド申請が届き迷わずに許可をタッチする。
そうして、チュートリアルの先に進むことが出来た。
『では、おまちかねの才能をお渡しします』
画面にはそう表示され、抽選をしているのか、読み込みのような表示画面が目の前に広がった。
すると、夕弦の方はもう終わったようで、移動を始めようとしていた。
「夕弦、『才能』なんだった?」
「……あまり、人に教えないでくれよ、『疑心暗鬼』だ」
夕弦はそう言うなり、すぐにどこかへ去っていった。
勇人は失礼ながらも、若干お似合いかもと思ってしまったのは秘密だ。
『お待たせしました、勇人様へ才能をお渡しします』
画面にそう表示され、切り替わる。
そこにはステータスのようなものが表示された。
しかし、ステータスとは言ってもこのゲームには攻撃力や防御力、レベルなどと言った能力地は存在しない。あくまでも、現実に近づけた設定なのだそうだ。
名前 ユウト
種族 神人族
才能 取捨選択 熟練度1『レアアイテムがドロップしやすくなる』
たったそれだけが表示されていた。
ちなみに種族というのは、キャラ作りの時に設定したもので、特に意味は無い。
何が変わるのかと言われれば、例えば、獣人族を選んだ者は獣耳や尻尾などが生え、エルフ族を選んだ者は耳が若干長くなると言った具合に見た目に影響する。
それと、身体能力についても少しだけ補正がかかるようだ。
「……取捨選択?」
勇人は自分のユニークスキルを見て、ガクッと肩を落とした。
「勇人の『才能』って『取捨選択』だってー」
勇人の呟きを聞き逃さなかった咲空が、紅谷と美咲へ大きな声で告げた。
それを聞いた二人は、何故か哀れみの視線を勇人へ向けた。
それもそのはずで、この中で唯一の戦闘とは関係がなさそうなスキル名だったためだ。
「なんか……、どんまい」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
二人は慰めの言葉を勇人に送り、咲空は笑い続けていた。
「慰めありがと、これのスキルでほぼ職業が決まったような気がするわ」
勇人のスキルは、レアドロップが落ちやすくなる。
つまり、それらのアイテムを販売する職業がとても効率的になる。
その結果に勇人は前線で戦いたかったと悔しそうに肩を落とした。
しかし、『才能』には熟練度があり、これを上げるごとに新たな能力が増えていくらしく、これに賭けるしか勇人に道は無い。
そうとなれば、ひたすら地道に努力あるのみだった。
「よし、やる気が出てきた」
勇人は落とした顔を上げて、天を見上げ、新たな目標に向けて努力する決意をした。
その様子に、美咲と紅谷は安心し、咲空は未だに笑い続けていた。
「じゃ、勇人君の調子も戻ったみたいだし、僕はここで別れるとするよ」
そう言って、紅谷は勇人たちから離れていこうとする。
「一緒に行かないのか?」
思わず勇人はそう尋ねると、紅谷は笑みを浮かべて答えた。
「ライバルが最初から一緒に行動するなんて、つまらないじゃないか」
そう言って紅谷は去っていった。
どうもくさいセリフなのだが、イケメンの紅谷が言うとなかなか様になってしまう。
「相変わらずでムカつくな」
勇人は去っていく紅谷の背中を見ながら呟く。
美咲と咲空も、同様に勇人の元から離れるが、二人は一緒に行動するようだ。
「じゃあね、いつかねー」
「お兄ちゃん、一人でも頑張ってね」
そう言って二人は去っていき、勇人も冒険の一歩を踏み出した。
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