G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~

根宮光拓

第二十二話 魔法

小屋へ入って来た人物はユウトの知り合いだった。

「ジャックさん!?」

その人物の名を思わず叫ぶユウト。

「なんじゃ、知り合いだったのか」
「父さん、何故彼がここへ?」
「お前が依頼を出したんじゃないのか?」
「ああ、なるほど」

今の会話でユウトは理解した。
この二人が親子なのだということを。

「ユウト君、依頼の方は終わったみたいだね」

ジャックは小屋の外を指さして言った。
ゴブリンの死体を見てきたのだろう。

「はい、でも、ジャックさんなら倒せたのでは?」
「そうかもね、でも僕は仕事でここにはあまりいないからさ」
「そういうことでしたか」
「うん、それにしても君が来てくれるとは思っていなかったけどね」

ジャックは嬉しそうに微笑む。
ユウトにしてみてもジャックから魔法を習いたいと思っていたところなので好都合だった。

「あの、時間ありますか?」

ユウトは思い切って尋ねてみる。
すると、ジャックは少しも悩み素振りを見せずに即答した。

「うん、いいよ」
「え? なにがですか?」

ユウトが用件を言う前にジャックは笑顔で頷いた。

「魔法を習いたいんだよね? 以前話したときも興味津々だったみたいだし」
「正解です」

ジャックの言葉はユウトの考えていたことと全く同じであり、ユウトはそんなに自分の態度がわかりやすいのかと自分の行動を思い返していた。

「じゃあ、まずは魔法とは何かからだね」
「はい、お願いします」

そうしてジャックの魔法講座が始まった。
ジャックが言ったことをまとめるとこうだ。

魔法とは魔力から生まれるもので、基本的には様々な事象を起こすことが可能。
そして死者蘇生は不可能。
生き物の体内には魔力をためる器の様な物があり、その大きさは人それぞれである。
魔力を補充するには、大気中から不足した分量を体が自然に補充していく。
魔力を含んだ食べ物を食べることにより補充することも出来る。

魔法の大きく分けると、自然の力を発現させる属性魔法。
身体に作用する、精霊魔法。
オリジナル魔法などのどれにも当てはまらない、創造魔法の三つに分けられる。
精霊魔法に限って言えば、魔力だけでは発現出来ず、精霊と呼ばれる存在と契約しなければならない。

「これぐらいかな」

ジャックは一通り説明を終え、息を吐いた。

「じゃあ、酔い止めの魔法は精霊魔法なんですか?」

ユウトはついさっき見た、館長に使われていたと思われる魔法について聞いてみる。

「まあそういうことだね、それにしてもそんな魔法どこで見たんだい?」

苦笑いを浮かべてジャックはユウトに尋ねた。

「冒険館でですね」
「あー、あそこの館長はすぐ酔うからなぁ、その時に見たのか、あ、ちなみに酔い止めの魔法は精霊魔法の解毒系だね、他には体力を回復させる回復魔法、身体能力をあげる付与魔法なんかがあるよ」
「それって、契約する精霊? によって使えるものが決まっているんですか?」
「うん、普通の精霊ならどれか一つだ、まあ精霊と契約出来る人なんて限られてるんだけど」
「そうなんですか、ジャックさんは?」

ユウトの問いにジャックはニコッと笑ってその質問を待っていたかのように嬉しそうだ。

「ふっふっふ、実はね僕も精霊魔法は使えるんだ、付与魔法だから治療とかは出来ないけどね」
「ということは精霊と契約を?」
「そうだよ、話してみるかい?」

ジャックの提案にものすごく興味があるユウトはすぐに頷く。
精霊とはなんとも響きがいい言葉だろう。
ユウトの男子高校生としての本能が騒いだ。

「是非!、お願いします」
「あ、ああ、待ってくれよ」

ユウトの剣幕に少したじろいだジャックが目を閉じて何かをブツブツと喋った。

「じゃ、簡単な方法にしようか、精霊を現界させるにはたくさんの魔力が必要だからね」

そう言うとジャックの体が一瞬力が抜けたようにカクンと首が下がった。
そして次には何もなかったかのように顔を上げる。

『お主か、私と話したいというのは』

ジャックが口を開くと、いつもと違う口調と声音が響いた。
声だけでは男か女か分かりかねる声だった。
精霊には性別というものがないかもしれない。
そしてその瞬間にこれが精霊だとユウトは悟る。

「はい、初めまして」

ユウトがお辞儀をして、自己紹介をしようとすると精霊は手を前に突きだして遮る。

『よい、お主と同じように私も鑑定眼が使えるのでな』

さすがは精霊とユウトは勝手に感心する。
もしかすると、全ての能力眼が使えるかもしれないとユウトは期待する。

『ほう、異星人のユウトか、異星人と話す時が来るとは、生涯何が起こるか分からないな』

若干嬉しそうに声が震える。
ユウトは表情は読めないので声だけで判断するしかなかった。

「あの、精霊というのは」
『ふむ、ジャックは精霊の説明すらしないで私を呼び出したのか、まあよい、精霊というのは魔力が意志を持った存在、ふむ、いわばお主たちの中にある器といった方が正しいかもしれん』
「器ですか?」
『詳しいことを知らなくても困りはしないさ、そして私はあまり高位な精霊ではないのでな、こうしてジャックの体か魔力を使ってしか現界できんのだ』

精霊の階級は高いほど魔力保有量が多いらしく自分だけの力で姿を現せるらしい。
となると、人間に化けている個体もいるかもしれない。

「それで……」

ユウトは口ごもり言うのを戸惑う。
精霊はそれをお見通しのようで言葉を述べた。

『お主が知りたいのは、どうすれば精霊と契約できるのかだろう? そんなのは精霊に好かれれば簡単なことだ、そして異星人という珍しい存在であり魔力も多いお主なら好かれやすいと私は思うぞ』
「そ、そうですか」

喜びをかみしめながらユウトは返事をする。
今すぐにでも飛び跳ねたい気分だったがユウトは精霊の目の前なのでこらえる。

『私ばかり話してはなんだ、お主の話も聞かせてくれ』

精霊はユウトの世界の事について興味があるようだ。
それに応じてユウトもその話をする。
そしてしばらくたった後、精霊は満足したようで言葉を発した。

『有意義な時間だった、ではそろそろ戻るとしよう』
「ありがとうございました」

精霊がそう言うと、ジャックの体がビクンよ揺れ顔を上げる。

「話しは終わったかい?」
「はい、ありがとうございます」
「精霊が出ている間は僕の意識はないからね、変なこと話してないよね?」
「もちろんですよ」

ジャックと一通り話しを終えたユウトはジャックから任務達成依頼の証明書を貰い小屋を出る。
魔法は後の機会にお預けだ。
今はさっさと報告をしなければならないためだ。

「では、またどこかで」
「うん、またね」
「ワシもたまには依頼を出そうかのう」
「是非、お願いします」

そう言ってユウトは小屋から出て王都へと向かった。
道中、再びスライムやらゴブリンやらを倒し、無事に門へとたどり着く。
幸運なことにザックはいないようで違う門番がいた。

「お、冒険者かい? お疲れ様」
「はい、そちらもお疲れ様です」

ザックより百倍感じの良い門番に笑顔で対応するユウト。
そして門をくぐりすぐに冒険館へと向かう。
そして中に入り、報告をする。

「お疲れ様、随分時間がかかったようだけど、大丈夫だった?」
「はい、依頼者が知り合いだったので」
「なるほどね、じゃ、報酬ね」

受付の女性から報酬のお金を受け取りユウトは魔法を試したい気持ちが高ぶっていたため城へとさっさと向かおうと冒険館を出た。
途中で館長らしき声が聞こえた気がしたが無視をした。
そうしてユウトは長い一日を終えたのだった。

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