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16話 天国の使い。



 16話 天国の使い。

 ホスルドとダーキニィの姿を確認したゴートは、即座に二人を測定する。

(フーマーの使いか……? この強さは、まさか使徒……いや、違うな)

 世界の常識に照らし合わせて推察していくゴート。

(存在値が別格に高い。高すぎる。常識的な人類の枠におさまっていない。……となると、こいつらは、使徒ですらない。……おそらく、その上の……)


「私たちは、天国に所属する神の一柱。フーマーを統べている、この世の支配者」


(やはり、天国からの使者か……一足とびで、そっちから使者がくるとはな……)

 ゴートが、入手した情報をもとに、現状についての理解を深めている途中で、
 ホルスドとダーキニィの二人は口を開いた。


「ラムド・セノワール。君の事は、下からよく聞いている」
「なかなか見事な資質だわ」


「彼女が下界の者を褒める事は滅多にない。誇るといい」
「私だけではなく、大いなる主も、貴方が覚醒したことを、大変お喜びになられているわ。光栄に思いなさい」

 そんな発言を受けて、ゴートは、

(UV1よりも遥かに弱いザコの分際で、よくも、まあ、それだけ偉そうなことがいえるな……お前らなんて、俺がその気になったら、溜息でワンパンだぞ)

 と、思ったが、

(まあ、いい。そんなことより、まさか、使徒をすっとばして、従属神が接近してくるとは……こんなに、はやく、エレガとのルートが出来上がるとは思っていなかった……)

 天国との繋がりは、フーマーと連携する中で、『徐々に築き上げていかなくてはいけないだろう』と覚悟していたが、意外とアッサリ繋がる事ができて、肩すかしをくらった気分だった。

(大幅に手間がはぶけた。これなら、今後は、『フッキを殺す方法の追求』だけに専念できる。エレガとは『いつでも謁見できるルート』だけつくっておいて、もし、どうしてもフッキをこえられなかったその時は、サクっとエレガを暗殺する。それでミッションコンプリートだ)

 高速思案の後に、ゴートは、『これから、従属神たちに対して取るべき己の態度』を決めると、

「大いなる主に喜んでいただけるとは……大変、恐縮でございます」

 そう言いながら、片膝をついてこうべを垂れるゴート。

 その態度に満足したのか、ダーキニィが、

「うん、良い態度よ、ラムド。あなたなら、いつか、使徒の上、私達と同じ領域にまで辿りつけるかもしれないわね」
「うむ。気性が荒い『彼(アバターラ)』とは違い、いい同僚になりそうだ」

「……彼? ともうしますと?」

「あなたは知らなくていいわ」

「……了解いたしました」

 返事をしながら、

(俺の知らない上の動きか……それとも別件か? まあいい……)

 と、心の中で整理をつけていると、

 ――ダーキニィが、

「大いなる主は、あなたと一度会って話したいと仰っている。けれど、今年は、天国も冒険者試験に注力するつもりだから、その仕事が終わるまでは待ってもらう事になるわ」

「冒険者試験に注力? ……その理由をお聞かせいただいても?」

「それも、あなたが知る必要はないわ」

「……なるほど、了解しました」

 そう言って、こうべを垂れるゴート。


(間違いなく、天国で何かがあったな……はてさて……)



 ・『箱』が開きそうだから、
 ・アバターラの強さがナルキを超えてしまったから、
 『もしもの時を考えて、できるだけ戦力増強をしておきたい』――というのが、天国サイドの、『冒険者試験に注力する事』と『ゴートに接見してきた事』の『主な理由』だが、そんなこと、もちろん、ゴートには知る由もない。


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