『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

17話 雲の意図。



 17話 雲の意図。


「……となると、貴様が所属するレイモンドとかいう魔カードの会社も、フーマー東方の上位者が経営しているということか? 直接そうでなくとも、なんらかの繋がりは……ちっ、ならば、最初からそう言えばいいものを……」


 そこで、ホアノスは、剣を鞘におさめて、


「非礼を詫びよう。正式に謝罪する。申し訳なかった。だが、分かってほしい。『フーマー出身だ』と最初から言ってくれていれば、このような事にはならなかった。今後は、互いの関係改善に向けて――」


「――剣を収める必要はないわ。抵抗する許可くらいはあげる。そうでなければ、きっと、『分からない』から」


「落ちつけ。フーマーの者に手を出す気はない……が、暴れるというのなら、鎮圧しなければならなくなる。トーンの上位議員である私は、フーマーとモメるわけにはいかない。これは、個人の問題ではなく、非常に高度な政治的問題だ。フーマー出身者なら、そのぐらいは分かるだろう。和解金を望むなら、それなりの額を積もう。そうだな。金貨5000でどうだ?」


「醜さの塊よ。己が罪を数えながら、冷たい闇の底でもがき苦しみ続けるがいい」


「過ちは絶対に許さない潔癖症、高潔さの意味を勘違いした殉教者タイプか……ちっ、仕方がない。こうなったら、さらって、バラして、あとは『知らぬ存ぜぬ』で通す」


 ホアノスは剣を抜きなおして、


「頭のおかしいガキが……誰に刃向ったのか、その身に教えてやる! 今日一日、貴様は私のオモチャだ。皮をはぎ、肉をそぎながら、徹底的に犯してやる。飽きたと同時に解体して焼却する。己の未来を想像して震えろ、妄想の神に狂った愚者よ」


 ダっと距離を詰めるホアノス。
 なかなか速い。
 太刀筋も悪くない。
 間違いなく強者。
 『何かの間違いで不死のスペシャルを得て、500年ほど必死に修行』すれば、楽連の下部組織である『愚連のE級武士(一番下の階級)』になるくらいなら出来るかもしれないほどの才能の持ち主。


 そんなホアノスの剣を、


「千年振っても届かないと気付かせるために、」


 ミシャは、その身で受けて、


「千年振らせる必要はない。心は敏感だから」


 飲み込んだ。
 グニュリと嫌な感触がしたと思った直後、ホアノスの剣は、沼に堕ちていくかのように、ミシャの深部へと引きずり込まれた。


「っ……はぁ?! ぁあっ?!!」


 困惑しているホアノスに、ミシャは、


「心の弱さを知れ。それが『弱い心を殺すため』に必要な最初の一歩だ」


 言いながら、ミシャは、少しだけ息を吸って、
 口の中で固めた空気の塊を、フッっと吐きだした。


 吐きだされた空気の塊は、弾くように、ホアノスの右足を爆散させた。
 八方へ飛び散った血と骨。
 その感覚情報は、わずかなタイムラグを経て、ホアノスの脳へ届く。


「うっっがぁあああああああああああ!」


 極端な激痛の中でもだえ苦しむホアノスを見下しながら、ミシャは、


「師の教えは深く尊い……局所は全体を、全体は局所を支えている。心は、いつだって、大局の中、関数を装った幾何であろうとする。そのまどろみは、まるで、雲で積み木をするかのごとし」


「ぎぃいい! 足が……私の足がっ……ひっ……ひぃっ!」


「――『千年振っても届かない相手』を前にして、それでも立ち向かえる心。もし、貴様にそれがあるのであれば、一度だけチャンスを与えよう」


 ゼノリカを支える柱としての義務を果たす。
 そんな蜘蛛の糸を、




「ば、ばけものだぁああああああああああああ! こいつ、やばいぃいいいいいい! 助けてくれぇええええええええ! 誰かぁあ! 誰でもいい! 誰かたすけてぇええ!」




 ホアノスは無視して恐怖だけを叫ぶ。







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