センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
10話 尊き御方。
10話 尊き御方。
フーマーは、この世界に存在する『強者』をすべて把握している。
隠そうとしても、フーマーの目はごまかせない(アダムはバリバリごまかせていたが)。
――ケイレーンは、ジャミとバロールに視線をうつして、数秒、
(ドーラの配下……どちらも、ずいぶんと存在値が高いようだな……世界全体を見渡しても上位30以内には入れるであろう、素晴らしい強さ……だが、祖国のバンクに、この二人のデータはない……いったい、どこに隠れていた……?)
本来なら、フーマーの目から逃れる事はできない。
『実力を隠そうとしていたモナルッポ』も、フーマーはあっさりと看過した。
フーマーはあざむけない。
それが常識。
(だが、ランク5の魔カード量産という離れ業を成せるレイモンドならば、われわれの目の届かない場所に強者を隠すことも、あるいは不可能ではない……『レイモンドならば』というより、レイモンドを隠れ蓑にしている『このドーラという少女の父親』、か……いったい、どのような存在なのか……)
ドーラという娘がいる事は分かった。
ジャミやバロールのような、『隠れていた強者』がいた事もわかった。
だが、肝心の、『黒幕(ドーラの父)』の姿がまったく見えてこない。
シッポすら掴ませない慎重さ。
行動を起こす迅速さ、フーマーをも敵にまわす大胆さ。
すべて、警戒に値する。
「確かに、素晴らしい力を持っている。見事だ。……ところで、一つ聞きたいのだが、君の父君は、どのような存在なのかな? ランク5の魔カードを量産してみせるほどの力の持ち主というのは、私の記憶になくてね」
「尊き御方よ」
ケイレーンの問いに、ミシャ(ドーラ)は、即答する。
あまりに迷いがなさすぎる解答に、ケイレーンは一瞬だけ面喰ったが、すぐに立て直して、
「……もう少し具体的に聞いてもいいかな?」
「これ以上の説明は無意味なのよ」
またもや迷いのない即答。
ミシャは、三老人に背を向けて、
「それでは失礼するわ。いつまでも、あなた方の相手をしているほど暇ではないの」
「なっっ、なんだと、貴様ぁ! いい加減に――ぶぅっ」
コーレンが激昂したと同時に、バチィンっと乾いた音が響いた。
ケイレーンの裏拳が、コーレンの顔面を弾いた音。
それほど強い一撃ではないが、いい角度で当たったせいか、コーレンの鼻から鮮やかな色の血がタラっと流れた。
「本当にキレるな……みっともない」
「……っ……ぅ……」
真っ赤な顔で、しかし押し黙ったコーレンに視線を向ける事もなく、
ケイレーンは、ミシャの目をジっと見つめ、
「レイモンドの意思はおおむね理解した。われわれもヒマではないので、これで失礼しよう。君たちの参加受付は、こちらですませておく。今日はもう、ゆっくりと休み、明日の武道会に向けての英気を養うといい」
「あら、ありがとう。たすかるわ」
そう言って、決別する両者。
帰る途中で、バロールが、通信魔法を使ってきて、
(痛快な挑発、実にお見事でした、ミシャンド/ラ様)
(ただのテンプレよ、たいしたことじゃないわ)
などと軽く会話をしながら、受付会場である屋敷から外にでようとしたところで、
受付にきたと思しき『トーンの上位議員』と擦れ違うミシャ。
※ 襟に『でかいバッチ』をつけているので一目でソレと分かる。
ミシャたちが、その上位議員と『視線を合わせる』ことすらなく、
黙って隣を通り過ぎようとしたところで、
「……ぉいおい、そこのみすぼらしい恰好のガキ、私の横を黙って通り過ぎるとは、どういう了見だ」
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