『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

51話 違う。



 51話 違う。




 超々々々高次の指導。
 拳の道、体さばき、目配りも呼吸も、全てがフッキを導く光。




 認識能力が、果てなく向上していく。
 空間支配値や次元占拠率が膨張していく。


 今のフッキならば、数分前のフッキを、ほんの数秒でスクラップに出来る。




 比類なき最強神の手ほどきを受けた事で、フッキは驚くほど強くなった。
 限界なく、際限なく、強く、強く、強く、強く、強く、強くなり続けた。


 ――爆発的、急成長。




 1段、2段、3段、5段、9段、15段と、
 果てなき階段を、最初は一段ずつだったのだけれど、
 徐々に、数段飛ばしで駆けあがっていった。




 研ぎ澄まされていく。
 研磨されていく。


 視野が広がる。
 処理速度が増していく。


 全てが鋭くなって、
 全てがかみ合って、


 だから、


「俺は……」


 だからこそ、










「あなたに……勝てない……」










 ――分かる。


 自分は最強じゃないってこと。
 『最強にはなれない』って事。


 ナニを、どれだけ、どうしようと、
 目の前に立つ、この『絶対的な最強』がいる限り、
 永遠に、自分が最強になることはありえない、と魂が理解した。




「……ぁあ……」




 フッキは、苦痛や恥辱という『表面的な理由』に引きずられたのではなく、
 ただカラッポになったことで、ガタリと崩れ落ちた。


 ヌケガラになって、
 存在意義を失って、




「俺は……最強じゃない……」




 ナニモノでもない。
 何も持たない、ただの――




「……俺は……ただのガラクタだった……」




 なにもかも否定された気分になった。
 すべてから否認された気分になった。


 『抗えない虚しさ』という、抱えきれない重荷だけ残った。
 『空っぽ』なのに『重荷だけは在る』という精神上の矛盾。


 空蝉うつせみのガラクタになったフッキ。


 そんなフッキの現実を、










「――違う――」










 センは否定する。


 反射的に、フッキの目が、センを追う。
 何が『違う』のか、今のフッキには、さっぱり分からなくて、
 だから、『答え』がほしくて、




「そこで終われば、ガラクタになるんだ」




 まだ、どう違うのか、理解できない。
 どこで終わろうと、答えは一緒のような気がして――




「自分自身でテメェの存在価値を殺し、カラッポだと気付き、本当の虚しさを知って、その上で何をするかで、お前という『一つ』が、いったい『誰』なのか決まる」


 そこまで至って、フッキは、ようやく、少しだけ気付く。
 神は、尋ねてくれているのだ。


 なにもかも全て見失って、求める事すらやめてしまった自分の代わりに、
 神は、フッキに、問うてくれている。




 ――お前は誰だ?




「今、決めろ、ガラクタ。ガラクタのまま終わるか、それ以外を望むか」










「それ以外になど……」


 絶望の底で、フッキは、


「なれるの……ですか……?」










 言葉を紡ぐ。
 自然と、態度が軟化した。
 それは、ただの『理解が引きずり込む羞恥』からくる変化。
 けれど、『それ以外の何か』――あるいは『敬意とか』が『ない』とは言えなかった。




 フッキの問いに、センは、


「知るか。お前が最終的にどうなるかなんか、俺に分かるはずがない」


 とても冷徹な一刀両断で応えた。
 事実だからこそ、余計に鋭さを感じさせる。


 ――そんな『前』を置いてから、


「だけれど、」


 と、センは続ける。


「……かつて、カラッポだったガラクタが、高みを目指した結果、いまだ全知全能にすらなれてはいないものの、しかし、少なくとも、お前程度だったら叩き潰せるほどの存在にはなれた――という事例なら知っている」


 『天才相手にテストで負けた』とか『中坊のカリスマにボコられた』とか、
 そんな、『クッソくだらない領域』でもがいていた『真正のカラッポ』が、


 ――今は、『全てを超越した神』として、ここに立っている。









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