センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
38話 この世で最も美しい神
38話 この世で最も美しい神
「ん? どうしまちた?」
「貴様は本当に……なぜ、いつまでも、そんな態度でいられる。かつて、貴様が、『主上様の師だった時期がある』というのは知っているが、今の主上様は、貴様を遥かに超越しておられるのだぞ。膝をつき、こうべを垂れて、崇め奉る事こそ、御方に対する正常な態度だと、どうして思わないのか、私は不思議で仕方がない」
「オイちゃんが、お兄を崇める? ありえないでちゅね」
ハハンと鼻で笑うシューリ。
その態度に、ムっとするアダム。
シューリはセンを愛している。
アダムも、それは分かっている。
だから、シューリのセンに対する態度に本気で怒ることはない。
だが、
「貴様の主上様に対する想いは理解しているつもりだ。それに、主上様も、貴様の、そういう態度を、どこから楽しんでおられるようにも見受けられる。だから、出来るだけ口をはさまないでおこうと思った、が……もう我慢できない。貴様は、あの御方がどれだけ偉大な存在か、もう少し理解すべ――」
そこで、アダムは口をつぐんだ。
「……」
シューリの射抜くような目が、アダムを黙らせた。
シューリは、数秒、逡巡する。
冷たい迷いの中で彷徨う。
自分のプライドと激闘。
くだらない葛藤は、『その半歩先の次元に根付く感情』に飲み込まれて収束していく。
どうにかプライドをねじ伏せると、
シューリは、スっと両目を閉じて、
ボソっと、小声で、
「あの子は本当に強くなった……」
決して、センの耳には届かないよう、諸々配慮しつつ、
「かつて、あの子は、あたしの足下にも及ばなかった。けれど、ほんの数千年で、あの子はあたしを遥かに飛び越えた」
そのとびぬけた事実の異常性。
バカじゃないんだから、もちろん、わかっている。
とうぜん、理解できている。
センエースは素晴らしい。
センエースは『ただ力を与えられて粋っているだけのカラッポな最強』なんかじゃない。
終わらない絶望の底で、ドロ臭くガムシャラに、一つ一つを積み重ねてきた輝きの結晶。
この世で最も偉大な命の王。
全てを超越した神の中の神。
決して誰にもマネできない、
全てを包みこんでみせた光。
「あの子が、あれほどの領域に辿りつけたのは、あの子の資質があったからこそ――けれど、あたしがいなければ、『今ここ』に『今のあの子はなかった』と断言できる。あの子だけが、あたしの誇り」
センエースは偉大なる神である――そんな事は、『みんな』が知っている。
センエースこそが、この世で最も美しい輝きである、なんて、
そんなただの事実は、『誰だって』、一目で理解できること。
理解できないのは相当のバカだけ。
相当のバカだって、ちょっと時間を重ねれば、当り前のように気付く。
――センエースは美しい。
「……あの子と出会うまで、あたしはただの歯車だった。最上位神として産まれ、ただ最上位神であり続けただけの部品。そこに誇りなどあるはずもなし」
『無』から産まれおちた瞬間から、ほとんど『完全』な存在。
完全を『求め』られた存在。
『始まり』の記憶は薄いため、
『自分が真にナニモノなのか』の疑問には答えられない。
しかし、ただただ、とにかく、事実・現実として、
『最初』から『頂点』だった神、シューリ・スピリット・アース。
『神の頂点』といえば、聞こえはいいが、
結局のところは、単なる『世界を運営する雑用係の委員長』でしかなかった。
究極超邪神アポロギスに身をささげるまでの間、
『最高位神としての責務』をこなすだけの歯車。
シューリが消えても、世界は何も困らない。
なぜなら、弟が引き継ぐだけだから。
『頂点』である究極超神が二柱も在った理由。
『全部で三柱も在る現在』がおかしいだけで、本来は一本で収まるはずだった。
センと出会うまでのシューリ・スピリット・アースは、
『取り替えられることが前提の歯車』でしかなかった。
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