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5話 ゼンの予選

 5話 ゼンの予選


 ソロウ侯の第三屋敷に向かったゼン一行。
 屋敷に近づいた段階で飛んできた『屈強な門番二人』に止められたが、暗号文の解き方を説明しようとした段階で、『入れ』と、あっさり通された。




 外観は豪華だったが、中は質素というか、ほとんどモノがなかった。




 執事のような初老の男に案内され、奥の部屋に向かうと、
 そこでは、『フーマーから派遣された試験官の一人』が待っていた。


「ようこそ、冒険者を目指す者達よ。君たちはチームかな?」


 その質問に対し、ゼンが、


「ええ」


 と簡素に答えると、


「ふむ。なら、代表一人がこのクジを引いてくれ。それによって、君たちが、どこのダンジョンに挑戦するか決まる。予選の内容は、強制的に転移でダンジョンの深部に飛ばされ、そこから帰還し、またここに戻ってくること。この予選で飛ばされる可能性があるダンジョンは、全27種類。冒険者たるもの、運も必要。運が良ければ、子供でもクリアできるダンジョン、運が悪ければ、歴戦の冒険者でもてこずるダンジョン。さあ、君たちはどれをひくかな」


 そう言って、神社でよく見るおみくじのような、無数の棒が入った筒を差し出してきた。
 ゼンは、振り返って、ハルスに視線を向けた。


「ようするに『強制的なダンジョン攻略』が予選のメインって訳ね。なるほど、なるほど。わかりやすい……というわけで、代表、よろしく」


 すると、


「クジをひくだけだろ。お前がひけ、めんどい」


「……まあ、こういう場合、凡運の方がいいかな」


 言いながら、クジをひくと、試験官は、




「おっと……こりゃ、大変だ」


「は? 大変?」




「君たちが挑むダンジョンは、全27種類あるダンジョンのうち、最も難易度が高いパラソルモンの地下迷宮」


「……えぇ、つまり、大凶ひいたってこと? ウソだろ? 俺が? この俺が?!」


 あまりの衝撃に愕然としていると、試験官が、


「この奥の部屋から転移してもらう訳だが……今なら辞退は可能。さあ、どうする? ちなみに、当り前だが、ダンジョンの奥で死んだとしても、委員会は責任をとらない。すべて自己責任だ。死ぬのが嫌なら、ここは退いて、来年まで待ち、再挑戦したほうがいい。人道的理由で、私はそちらをお勧めする」


 そこで、ハルスが、


「別に悲観する必要はない。パラソルモンなら、どうとでもなる。さっさと行くぞ」


「え、知っているダンジョンなの?」


「南大陸にある地下迷宮だ。全部で15階層くらい。そこそこ強いオーガやスケルトンが沸くが、対処できないほどじゃない。ワナもほとんどないしな。その気になれば、最奥からでも、一時間あれば脱出できる」


(そこそこ強い鬼種やアンデッドが沸くって、普通にしんどいじゃねぇか……まあ、でも、勇者からすれば楽勝ってことか……)


「ふん。まあ、予選なんざ、しょせん、こんなもんだろう。最高難易度だろうが、俺なら楽勝……」


 と、そこで、ハルスは、試験官に視線を向けて、


「ちなみに、ダンジョンから出たあとの『北大陸へ帰るルート』はちゃんと用意してあるんだろうな? 俺は、ちょいと事情があって、身分証明が出来ねぇ。クジをひいたのはこっちでも、場所そのものを選んだのはそっちなんだから、流石に、その辺の面倒はそっちで処理してもらうぜ」


「問題ない。もし迷宮から脱出できたら、そのまま北にむかえ。一キロほど先に、委員会の臨時拠点がある。そこから転移で北大陸に戻れる」


「そうか。なら、問題は何もない。ほれ、さっさと行くぞ、カスども」

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