『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

55話 幻覚?

 55話 幻覚?




 ……気付けば、ゴートは、浮遊する扉の前に立っていた。


 意識が朦朧としている。


 だが、数秒後、


「う、うぉ!」


 つい数秒前の事を思い出したようで、ゴートは反射的に身を縮めた。
 意志に反して、体がブルブルっと震える。


「う、う……ぁ……」


 全身が冷たく感じる。
 冷や汗で包まれる。
 自分の肉体が『ここ』に存在する事すら拒絶したくなる感覚。
 『かぶるためのフトンがほしい』と、かわいい冗談ではなくゴリゴリのガチで思う。




(な、なんだ、なんだなんだなんだっ、あのゴーレム!! ふざけんな! くそ! ぅぅ……)




「ォエ……ウゥ……」




 ガチガチと、遠慮なく、上と下の歯がぶつかり合う。
 ゴートの目は虚ろで、オーラにも覇気がない。
 心ごと砕かれた。
 それほどの一撃だった。
 蝉原勇吾が可愛く思えるほどの、とことんまで深い絶望を知った。






(……あれが……現実……『本物』の『力』……俺なんて……本物の前では……ゴミでしかなかった……)




 涙が流れた。
 理由は、恐怖。
 それのみ。
 恐かったから、泣いている。
 『お化け屋敷から出てきた直後のビビリ』と『今のゴート』に感情的な違いは一つもないと言っても実は過言じゃない。


 と、そこで、


(てか、俺は、なんで生きてんだ……どういう――)


 ようやく、本当なら最初に抱かなければいけない疑問に届く。
 なぜ生きている?
 間違いなく殺されたはず。
 あれを相手にして生き残れるはずがない。


 疑問符に包まれていると、
 ――背後から、




「……やっと意識が戻ったみたいね」




 ボソっとつぶやく声がして、ゴートはふりかえる。
 そこには、無傷のUV1が立っていて、




「ぇ、あ……えっ……UV1様……ぇ、あの……」


「落ちつきなさい。全部、幻覚よ」


「……げん……か……ぇ」


「どうやら、幻覚の罠にかかったのは、ダンジョンに入る前らしいわね……おそらく、扉をあける直前に発動した迎撃魔法で、感覚器官に攻撃を受け、それが、今、ようやく解けた……そういう事でしょうね。現状を鑑みるに」


 それから、UV1は、ゆっくりと丁寧に、
 自分が見た幻覚について語った。


 大量のヘルズ覇鬼やネオヘルズ覇鬼、一匹でも厄介なイフリートが全部で7体、そして、10000体を超える最高位モンスターや、謎のゴーレムに殺された幻覚の話。


 なぜか分からないが、後半に沸いた1000や10000を超える大量のモンスターはゴートが瞬殺し、それだけの力を持ったゴートが、しかしゴーレム一匹にはデコピンで殺されるという、どう考えても、しょうもない夢でしかない幻覚。




「随分と強い幻覚作用だったけれど、まあ、体に害があるタイプではないみたいだから、さほど問題というほどでもないわ。混乱して、状態異常対抗系の魔カードをドブに捨てるように使ってしまったのが少し痛いけれど……おそらく、時間経過でしか解けないアリア・ギアスがかけられていたのね。凄まじい抵抗値……まあ、でも、学習はした。二度と同じ過ちはおかさない。もし、もう一度、同じ幻覚魔法をかけられても、今度は必ず冷静に――」


 などとゴチャゴチャ言っているUV1の言葉から意識を外し、


(幻覚……もしかして、嘘から出たまこと? 本当に、全部、幻覚だったのか?)


 少しだけ冷静になって考えてみる。
 体はまだ少し震えているし、全身の冷たさも消えてはいない。
 だが、頭が動かないわけじゃない。
 むしろ、いつもより早く回転しているくらい。


(まあ、普通に考えたら、ありえないよな、ここ数十分で起きたこと全部。……俺が神のように強くなったり、神のように強くなった俺がデコピンで殺されたり……そんなことが普通は起こるはずないんだから、全部、『このダンジョンに入る前に魔法をかけられて見せられた幻覚だった』と考えた方が合理的で――)


 一瞬だけ疑いかけたが、


(いや、違う)


 すぐにゴートは首を振った。
 まず、感じる己の力。
 パラソルモンの地下迷宮に入る前のレベルは29だった。
 相応の、脆弱さを自分に感じていて、
 そして、中で力を手に入れてからは、
 全身にみなぎるような力を感じた。


 今、ゴートは、みなぎる力を感じている。
 絶対に、レベル29ではない。


 即時、ゴートは、自己鑑定の魔法を使ってみた。


 すると、


(レベル529万……やはり、幻覚じゃない。あれは確かにあったこと……)









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