『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

59話 メリット

 59話




 その『かわいい』には、女性特有の、様々な意味がこめられていた。
 みっともなくてかわいい。
 無様すぎてかわいい。
 ダサくてかわいい。
 キモかわいい。
 ブサかわいい。
 純粋に、かわいらしい。


 プラスもマイナスもないまぜになった、かわいいという感情がフツフツと湧き上がってくる。


 すると、不思議なもので、
 それまでとはまったく違う思考形態に切り替わったように、


(アダムを殺す事に……メリットがない……)


 心の底からそう思うようになる。
 そして、それは事実で、


(どうにか苦労して、アダムを殺せたとして……何が変わる? アダムが現れる前と何か変化が生じるか? アダムの無限蘇生を削り切れるほどの力を得る労力と引き換えに、あたしは何を得る? 何も得ない。何も変わらない。むしろ、ただのマイナスにもなりえる)


 実際そうだ。


 このままいけば、いつか、焦って、『アダムを殺すためだけ』のアリア・ギアスを積んでしまう可能性だってある。
 アダムが死んだあとは、ただのマイナスにしかならない借金を背負う可能性。
 地獄。


 そして、それだけの負債や時間を積んで、
 どうにかこうにかアダムを殺せても、
 特にメリットなどない。


 アダムが死んだからといって、センがシューリにプロポーズをするわけではない。


 確かに、センの周囲から、鬱陶しいハエが一匹消える。
 だが、それだけだ。
 自分とセンの関係には何の変化も生じない。
 プラマイゼロ。
 『センのバカさ加減』と『自分の面倒臭さ』に対してイライラするだけの、まったくもって無意味かつ非生産的な停滞が延長されるだけ。
 正直なところ、もうウンザリしていた『あの低空飛行』が、その先も続く。
 それだけ。


(だが……)


 シューリは考える。
 優秀な頭脳などなくとも簡単に導き出せる答え。
 この状況、見方を変えれば、チャンスともとらえられる。


(殺す事を考えれば、デメリットばかり……しかし、利用する事を考えれば……)


 アダムを利用すれば、メリットばかり。
 まず、センの盾が増える。
 この先、センは、原初の深層に挑む。
 あのバカの性格は熟知している。
 やると言ったら絶対にやる。
 そして、それは、そこにどんな危険があろうと関係ない。
 ならば、センを守る盾はいくらあっても足りない。
 その点で言うとアダムは満点合格。
 なんせ、シューリがその気になっても殺しきれないほどの存在値と、ほぼ完全不死身のウルトラプラチナスペシャルを持つのだ。


 とにかく有能で、そして、何より、センに惚れているから絶対に裏切らない。


 アダムは確実にセンに惚れている。
 これが、他の何よりも大きい。
 どんなピンチを前にしても、アダムは決して逃げないだろう。
 忠誠の中で最も信頼できるのは愛。
 絶対に裏切らない、約束の鎖。
 その辺に転がっている『安い愛』ならば、『それ』が『憎悪』に変わる可能性を考慮しなければいけないが、『その愛が向かう対象(あるいは矛先)』がセンである場合に限り、その心配は不要。
 『センに対する愛情』だけは、各所で頻繁に起こっているような『愛情が憎悪にひっくり返る凄惨な感情の逆転劇』は絶対にないと、シューリは確信している。


 『センほどの男に対する感情が冷める事などありえない』
 『センという究極の男を知っていながら、他の男に目移りするなどありえない』
 ――という、シューリからすれば極めて常識的な認知。


 つまりは、
 シューリはシューリで、だいぶセンにイカれているってこと。
 それがゆえに起こる、論理を欠いた謎判断。
 感性に頼りまくって導き出した結論でありながら、
 これは認知だと言ってはばからない。
 恋は盲目。




(何より)




 そう、実際、シューリが何より注視している点は、ここ。
 何よりも、


 アダムは、『権利』を持っている。
 『センになんでも命令できる』という至高の権利。


 それを有しているのが『自分ではない』という点がミソだ。
 その権利を『アダムが有している』というのが大事なのだ。
 仮に、シューリがその権利を持っていたとしても、使い道がない。
 シューリがセンに『何かおねだりをする』など、ありえないから。







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