『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

23話 本気を出すといったが、あれは嘘だ。

 23話




 センは、アダムに右手を向けた。
 その瞬間、鈍い痛みが、アダムを襲う。
 すぐに理解できた。
 この痛みは、時間と共にキツくなっていく。
 真綿で、首をしめるように、ジワジワと――










(……死ぬ……)




 抵抗する気はなかったが、抵抗しようとしても無駄だろうと、アダムは思った。
 勝てない。
 何をしようと絶対に。


 ギチギチと音をたてだした『軋み』という激痛の中で、アダムは思う。


(……この御方の強さは、私ごときが理解できる範疇になかった……)


 『初めて闘った時』とは根本的に状況が違う。
 あの時は、同じキャラを使い、慣れ親しんだ『同じゲーム』で闘った。


 すなわち、かつてのセンは、
 『子供と遊ぶ時』のように、
 アダムのレベルに合わせて、
 坊主めくり、はさみ将棋、五目並べという、
 シンプルなルールで『闘ってあげた』のだ。
 和歌を丸暗記する必要も、駒の動きを理解する必要も、石の取り方を覚える必要すらない、とことんまでシンプルな世界で『キャッキャウフフ、たのしーねー』と遊んであげた。


 アダムは、『その時の手並み』を、『センの器』だと判断した。
 その判断を元にして、互いを測った。
 ゆえに、存在値がハネ上がった現状だと、『己の方が強い』と認識した。
 『その遊び方』しか知らないのだから、そう思ってしまうのは仕方がない――が、調子こいてナメた口をきいてしまったのだから、もはや、『仕方がない』ではすまされない。


 無知という恥が産んだ罪。
 あまりにも重い。






(はじめて闘った時は……遊ばれていただけ……あれだけの差を見せつけられていながら……あのまばゆい輝きすら……ちょっとしたお遊びでしかないと……)






 かつての闘いでは、全ての条件が同じだった。
 ゆえにハッキリと理解できた、圧倒的な力の差。




(いったい……この御方は……どれほど遠いのだ……)




 現状は、あの時よりも遥かに酷い敗北。
 あの時は、『あんなにも遠い』と理解できた。
 しかし、今は、


(……『どこにいるのか』すら……分からない……何も見えない……)


 前方にいるのか、空上にいるのか、深淵にいるのか。
 影すら見えない。
 何もわからない。




 アダムは、これまでの諸々で、センを理解した気になっていた。
 『あの辺りに御座す神様だろう』と勝手に推測していた。
 『あんなにも遠い場所に御座すとは、なんと素晴らしい御方だ』などと、そんな下らない勘違いをしていた。
 全部、思いこみ。
 ただの妄想。
 完全に見誤っていた。
 まったく理解できていなかった。
 『この御方を理解する事など出来ない』という事すら理解できていなかったマヌケ。




(私ごときに……測れる御方では……なかった……)




 アダムは、『神』を知らなすぎた。
 まるで、『何かによって削られでも』したかのように、
 まるで、それが『代償』だったかのように、


 アダムは、神について、あまりにも無知だった。




「アダム。お前は、所詮、『神の戦い』を知らない現世の天才」


 先に同じ色の石を五個並べれば勝てると思っている、カワイイお嬢ちゃん。
 『地』という概念を理解する事すら出来ていないお子様。


 将棋で言えば、王をとった方が勝ちだという事すら知らない状態。




 そんな女の子が、全冠の神と対峙している。
 本気で勝てると――絶対に勝てると思いこんで、神の前に座したのだ。
 『私、あなたより強いよー』
 『私が勝ったら、あなたは私のものねー』


 『そうかい、そうかい。すごいねー、ところで、飛車の動かし方わかる?』
 『飛車ってなにー?』




「……当たり前だが、俺の足下にも及ばない。経験量の不足、無知の差。あまりにも大きい」




 アダムは、思わず目を閉じてしまった。
 理解できたから。
 自分が情けなくて、情けなくて……


(距離は理解できない……が……しかし、『今の自分では、まともな相手にすらならない』という事だけは理解できた……遠すぎる……何もかも……)


 積み重ねてきたモノの質の違いを、ただガツンと思い知らされた。
 アダムは赤面した。
 そして、青くなる。
 また、赤くなる。
 感情があっちこっち。


 ――しめつけが強くなってきた。
 ――痛みは増していく。
 ――けれど、痛みを感じている余裕などないほどの羞恥。


(……私は……どれだけ愚か……)




 結果だけが全て。
 テキトーに遊ばれた。
 それだけの話。


「さっき俺は、お前に、『二撃くらったから、本気を出すという約束は守る』と言ったな? あれは嘘だ。お前ごときに俺が本気を出すわけないだろ」


「……」










「お嬢ちゃん、身の程を知りまちょうねぇ」










 シューリのマネをして、そんな事を言うセン。
 口調だけではなく、シューリの気持ち・心理もトレースできている。


 ――赤ちゃん言葉は、大人が赤子に使う言語。







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