『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

神闘編 中編

 神闘編 中編




 バーチャは、正真正銘の神。
 とうぜん、相手にならなかった――が、だからと言って諦めるセンではなかった。


『神だか何だか知らないが、ここは俺の世界だ!! 蛮行はゆるさねぇえ!!』


『無駄無駄無駄ぁあ! 神でない者が神に抗っても無駄ぁああ! 存在の次元が違うのだよ、バカめがぁあ!』


 どうにか持ち込んだタイマン勝負で、センは負けた。
 圧倒的に負けた。


 何をしても通じない。
 どんな攻撃も通らない。
 あっさりと片手で吹っ飛ばされ、
 平和の象徴として建造した巨大なワールドシンボルのガレキに埋められた。


『平和ねぇ……現世の虫ケラ風情が大層な夢を見るじゃないか。私の視点に映る貴様らを、貴様らでも理解できるように例えてやろうか? 観察キットの中で蠢くアリだ。それ以上でもそれ以下でもない。特に何の価値も意味もない虫ケラ。それが私の養分になれるのだぞ? 慈悲深い私は、貴様らに、『意味のある死』をくれてやろうと言っているのだ。理解できたか? ならば、もう一度だけ言おう。光栄に思え』




 ボッコボコにされて、間違いなく死ぬと理解した、その時、
 センの脳裏をよぎったのは、いつもの『弱さ』。


 ムリムリ。
 あれには勝てない。
 強さの次元が違いすぎる。
 あんなの勝てるヤツは存在しねぇ。
 神だっけ?
 ははっ。
 流石、流石。
 オミゴトデース。
 ハイ、コウサーン。


 流石に、今回ばかりはどうしようもない。
 勝てないんだから仕方が無い。
 あいつは、どうしようもない。
 神様には勝てません。
 はい、というわけで、
 さあ、もう、いい加減に終わろうじゃないか。


 思えば、長い地獄だった。
 延々と続く、クソ以下の地獄も、ようやく終わりを迎える。


 なんつーか、あれだよな。
 第2~第9アルファは、たぶん、呪われてんだ。
 仮に、なんかの間違いで、この局面を乗り越えたところで、
 どうせ、また、どっかで同じような災難にみまわれるんだ。
 で、いつか、あっけなく終わるんだよ。


 俺が違う世界に転生している間に、どうせ、気付いたら、『あれ? なくなったの?』ぐらいの感覚で消えちまう運命の世界だったんだよ。


 もう分かっただろ?
 もう充分だろ?


 俺は散々やったよ。
 バカみたいに闘ってきたよ。


 褒められこそすれ、文句を言われる筋合いはねぇ。
 消えちまえよ、もう、こんな呪われた世界。




『もう……いいよな……』




 ガレキの下で、誰に言うでもなく、センは、ボソっとそうつぶやいた。


 砕けた仮面の下からのぞく素顔は、ただの、しょうもないガキのソレだった。


 たまたま、無限転生というチートと、世界一成長が早いというスペシャルを持っていたから、安全に、他の奴より早く強くなれた。
 実際のところは、それだけの転生者。


 腐るほどある異世界転生モノの主人公となんら変わらない。
 ただ、ちょっと変わったチートを持っていただけの高校生、その延長。


『無理だから……勝てないから……もういいだろ……?』


 誰に尋ねているのかすら分からない問いかけ。


 近くには誰もいない。


 神が相手では他の誰も相手にならないから、
 魔法やアイテムを使って強制的に、転移させた。
 一緒に闘うと言った者は多かったし、
 せめて支援だけでもと粘った者もいたが、
 現在、この世界にはセンとバーチャ以外、誰もいない。




『頑張っただろ……俺、頑張ったよな……誰がここまで出来るんだよ……ここまで、世界を守ってきただけでも、やりすぎっていうか、頑張りすぎだろ……』


 溢れ出る。
 こぼれる。


『褒めなくていいよ……喝采も、賛美もいらない……だから……どうか、【諦めていい】って許可だけくれ……それ以外は、もう、何も望まないから』






 圧倒的な力差を前に、センは、漏れ出る弱音を、吐きだした。




『苦しい! 苦しい! 今日だけじゃねぇ! ずっと苦しかった! もう嫌だ! なんで、俺ばっかり! どうして、俺ばっかりが、こんな苦労をしないといけないんだ! 異世界転生モノっていったら、流行りはスローライフだったろ! もしくは、チートで楽勝が相場だろ! しんどすぎるんだよ、ずっと、ずっと、ずっとぉおお!』






『ん……なんだ、まだ生きていたのか。しぶといな。というか、なにを喚いている』






『もういいだろぉおおお! もういいはずだ! 俺なら許可をもらえるはずだ! 諦めていいはずだ! なのに! なのに! なんでぇえええ!!』




 ガラっと、ガレキが動いた。
 絶望の『底』で、センは蠢く。
 血だらけで、傷だらけの、クソかっこわるい姿で、
 みっともなく、涙と鼻水をたらしながら、


 それでも、
 どうにか、ガレキをどかして、


 立ちあがり、




『はぁ、はぁ……』


 呼吸あらく、涙のかすむ声で、


『はぁ……はぁ……くそったれ……なん、で……立つんだよ……』






『それは、私のセリフだろう。そして、ぜひ聞かせてもらいたいな。なぜ立つ? 勝てないのは分かったはずだ』






『俺は……ヒーローじゃない……』






『だろうな。そんなみっともない姿をした者を英雄とは呼ばない。英傑、豪傑、真なる強者……それは、この私にこそふさわしい言葉。すべてを超える神になる、私にこそふさわしい称号。貴様程度が名乗っていいものではない』




『それでも……』




『ん? 何か言ったか?』






『叫び続ける勇気を……』






 センは、ギュっと握りしめた拳を胸にあてて、




『ぶっ壊れて、歪んで、腐って、けれど、わずかに……でも確実に残っている、この想いのカケラを……』






 吐きだした水素イオンが世界に溶けていく。
 空は青くて、雲は白くて、




『集めて……最後の……最後まで……抗ってやる』


 目の前に全部を並べて、揃えて、
 だから、センは言う。


『俺は、センエース。全世界の頂点に立つ、生命の王』






 パァァァっと、何かが開く音が、
 確かにした。




『人間をナメるなよ、神……俺を殺し切ってみせろ』




 全ての弱さを飲み込んで、
 仮面を捨てて、
 さらけ出した想いが、結合して、収束する。




 ついに花開く。




 世界戦争を終わらせ、バグを殺しつくして、
 それでも、まだまだ発展途上だった、
 『センエース』という、世界一の可能性。




 ついに、センの中に眠っていた神種が、輝きだす。






『ほう……神種が開花したか。ずいぶんと珍しい場面に出くわしたな。……くく……しかし、無駄だ』


 バーチャは、余裕の表情を崩さず、


『神になったものは、現世では大きな制限を受ける。例外は私だけ。神の中の神である、この私だけなのだ。貴様は神に成ったことで、むしろ、今までほどの力すら出せなぐぼはぁああああああああああああああああああああああああああ!!』






 右ストレートでぶっ飛ばされたバーチャ。
 血の味を飲み込みながら、


『バカな………ぐほっ……な、なぜ……』


 ドクドクと鼻血を流す神を睨みながら、


 センは言う。










『ヒーロー見参……』







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