『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

26話 主がおられる場所

 26話




 少し影のある口調で『今』を語るパメラノに、バロールが少しだけ顔を赤くして、


「パメラノ殿! それは、何よりの素晴らしい事ではないですか! なぜ、そのような、まるで嘆かわしい事かのようにっ?!」


「もちろん、悪い事ではない。しかし、高潔すぎるがゆえの『弱さ』は実在する」


「……」


「永遠の絶対平和を体現するためには、ゼノリカの軸となる者すべてが、概念レベルで、『器の底』を知っておらねばならん……と、わしなんかは思うんじゃよ。ゾメガ様は、血で血を洗っていた時代を知っておる。ゆえに、高潔すぎるがゆえの弱さなどとは無縁。ミシャンド/ラ様もそうじゃな。あの御方は、この世の誰よりも深い闇を抱えておる。ゆえに強い。平熱マン様も、無数の闇を切り裂き続けた事で輝かれた勇者」


 三至天帝の過去はどれも壮絶。
 三名とも、本物の地獄を潜り抜けてきた歴戦の猛者。


「はるか昔、8000年以上昔、世界は穢れで溢れておった。『ゆえこそに磨かれた力』というものが実在する。あのころはよかった……などと言うつもりは毛頭ない。あんな地獄、二度とごめんこうむる」


 パメラノの脳裏に、かつての地獄が浮かんだ
 総死者『数十億』という、深すぎる傷跡を残した地獄の大戦争。


「最近の若者は……などというアホを晒す気もない。ただ、今の九華には足りぬモノが確かにある。それだけの話じゃよ」




 アルキントゥが、少し伏し目がちに、


「穢れ……ですか。確かに私には分からない領域ですわね。私が生まれた時には、すでに、世界はゼノリカによって完璧に平定されておりましたゆえ」


「平和に産まれ、ゆえに平和を愛す――決して悪い事ではない。……が、悪を知らんという事は、単純に……あえて極端な例をだすならば『悪に騙される可能性、その余地がある』ということじゃ。本物の悪を知らぬ『今のぬしら』では、『騙される』ということの恐ろしさすらわからんじゃろう。害意と悪意に染まった虚実。形なき炎で身を焼かれるような、あの絶望……騙されるということは、引きずり込まれるということじゃ。今と未来がドス黒く染まり、何もせずとも、一日中呼吸が乱れ、赤い涙が流れ続ける。……理解できんじゃろう。できるわけがない。『悪』の脅威は、体験せねば分からぬよ」


 パメラノは、とうとうと、


「ありえんが……仮にゼノリカと同等以上の悪が出現し、全面戦争となった場合……正直言って、『微温湯ぬるまゆしか知らぬ、平和ボケした今のぬしら』では、対抗勢力として、ちと不安じゃな。少なくとも、『ぬしらがいるから、世界は大丈夫』とは思えん」


 バロールが、ギリっと奥歯をかみしめ、


「御言葉ですが、どれほどの困難を前にしても、決して背を向けないという覚悟はあるつもりです」


「気概の話などしとらんよ。目の前の困難に挫けるようなフヌケなど、ここにはおらんと信じておる。……ただ、正しく敵を知らねば、無意味に闇の中でさまようことになるという『問題』の解決方法について論じておるのじゃよ。ぬしのために、単純な結論だけで会話をしようか? 正しく悪を知っておれば、百戦危うからず。そうは思わんかの?」


「それは……確かに……ですが……」


「主は常に、今ではなく、遠くを見ておられる。昔からそうじゃったよ。常に、ここではないどこか……遠い、遠い、その果てを見据え、誰よりも真摯に、誠実に、わずかも弛まずに、『横で見ているだけでも気が狂いそうになるほどの、流した血で魂を削るような途方も無い研鑽』を積み続ける……我らの主とは、そういう御方じゃ」


「「「「「「……」」」」」」










「みなに言っておく。……主を敬愛するのは当然の事。しかし、『主を理解した気』になるのは許さん。主の真なる尊さが理解できるものなど、この場にはおらんよ。誰も、その高みには至っておらん」


 表面上、穏やかに言葉を並べているが、
 その深部から漏れ出ているのは、まるで鋭い刃物のようで、


「神の御言葉に触れたことで、みなの心に神が宿ったことであろう……きっと、ぬしらの中の神は、はるかなる高みで輝いていることだろう。しかし、あえて言おう。認識を改めよ。主は『そこ』よりも、もっともっと高い場所におられる」






 最後に、パメラノは、全員に睨みをきかせてから、
 ズズっと茶(魔法で出したもの)を喉に流した。




 真に『主を知る者』の、『遠い言葉』を受けて、この場にいる誰も黙った。




 ただ、その耀きに触れただけで、アホウのように舞い上がって、
 大したものは何も積み重ねてきていない薄っぺらな身でありながら、
 不敬にも、


 直接お会いしたいだなんて……










(……なんと……おろかしい……)










 バロールは、思わずギュっと両目を閉じてうつむき、歯噛みした。









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