『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

68話 『高み』

 68話










 シグレの姿が見えなくなって20秒ほど経過したところで、


「ふんっ」


 ホルスドは、呪縛を破った。
 純粋な筋力だけで破壊してみせると挑戦してみて20秒。
 ようやく成功。


 その様子を見て、ゼンは、


(これだけ魔力を削ったってのに……20秒で終わりかよ……しかも、魔法を使われた感じがしなかった……力の差をまざまざと感じさせてくれるじゃねぇか……)


 かなり大量の魔力を使わされたというのに、あっさりと砕かれた。
 『腕相撲で大人の力を見せつけられた時の小学一年生』のような顔で、ゼンは、溜息をつく。




 ホルスドが、小馬鹿にした顔で微笑み、


「魔力量はみとめよう。しかし、ランク1の魔法が私に通用する訳ないだろう。とはいえ、数十秒は拘束されてしまった訳だが……くく、私もまだまだ修行がたりないな。さて、どうする? まだ何か出来る事はあるか? なければ死ぬだけだが」


「二秒だけ待ってくれる?」


「ただの時間稼ぎを許す気はない」


「そうじゃねぇ。生命力バリアの減少は分かるようになってきたが、MPはまだまだだから、マジでちょっとだけ確認させてくれってだけ」


 そこで、ゼンはスマホで自分の残りMPを確認する。


(残り600か……ごっそり減ったなぁ……こりゃ、もう無理かもわからんね……はっ……死んだ、死んだ……ったく、バカか、俺は……なにやってんだか)


 はぁあと溜息をついてから、




「あのさぁ、一つ、頼みがあるんだけど」




「頼み? 命乞いか?」




 バカにしたような笑みを浮かべるホルスド。


 ――シグレならともかく、ゼンの命乞いなど聞く気はない――


 態度でハッキリと示してくる。




 そんなホルスドの目をジっと見つめて、ゼンはシッカリと言う。






「全力で闘ってほしいんだ」






 澄切った目。
 固まった目。
 決意した目。


 怯えや恐れも、当然あるけれど――


 しかし、その上で、ゼンは望む。






「最後に高みを見せてほしい。強さの向こう側。俺が求めたもの。せめてそれを知ってから死にたい。俺が『辿りつけたかもしれない世界』を知ってから……死にたいんだ」






「くく……」


 ホルスドは、薄く笑ってから、


「値しない」


 バッサリと言い捨てた。
 ゼンの想いなど知ったことじゃない。


「辿りつけたかもしれない世界? バカが。まあ、勘違いは好きにすれば……いや、あれだけの召喚獣を貸し与える事ができるほどのイレギュラーの眷属である貴様ならば、あるいは、私の高みに近づくこともできたやもしれん。私を超える事は不可能だとしても、近づくくらいはできたかもしれない」


 ガキのたわごとを『強め』に切り捨てる方がみっともないとでも思ったのか、
 ホルスドは、そこから、少しだけ冷静かつ『大人』な対応をこころがけて、


「これこそ勘違いだろうが……しかし、そう思わせるだけの『何か』が、かのイレギュラーにはある。ゆえに、貴様の、その『妄想』を、ただの勘違いと切り捨てはしないさ。ただし、事実、今の貴様には何の価値もない。貴様ていどに見せる『全力』など、私は一つとして持ち合わせていない。アクビまじりに踏みつぶされて死ね」


 虫ケラの相手などしない。
 明確な宣言。
 見下しているというより、視界に入っていない。






「そうか……残念だ。本当に……残念だ」




 言いながら、ゼンは剣を構えた。


 ――『注文の多い多目的室』


 剣としては、正直、微妙なスペックだが、それでも、こんぼうよりは遥かにマシ。




「残念だ……けど……なんだろうな……まあ、そうだよな……」


 なんだか、納得できた。
 自分は、虫けらのように弱い。
 相手は、きっと恐竜よりも強い。


 だから、これが、普通。
 圧倒的弱者が、圧倒的強者に、サクっと踏みつぶされて死ぬ。
 自然の摂理。


 至極、当たり前の場景。


(超魔王軍の連中は、こいつよりも強いのかな……いや、流石にこいつよりは弱い? んー、わからんけど……もし、この異常なほど強い『ホルスド』よりも『超魔王』や『ミシャンド/ラ』や『平熱マン』の方が強いっていうなら……その強さ、一目でいいから見てみたかったな……どのくらい凄いヤツ……どれほどの高みにいる『奴ら』だったのかな……せめて、そのぐらいは知りたかったな……)




 心が、点になった。
 いくつかの線が重なって、点に見えたんだ。


 ゼンは、下半身に力を込めた。
 目にぐっと力を込めて、心のままに叫ぶ。










「最後の最後! さあ、行こうかぁ!!」










 全身に気合をぶっこんで、ゼンは飛びだした。


 両手で持った剣を、大きく振りかぶり、腰を回転させて、ホルスドの首めがけて振り下ろす。
 その一連――あまりにも、ドへったくそ。


 ただ、剣の重さに振り回わされているだけ。
 練習が足りていない子供のお遊戯――それ以下。
 とても剣技とは言えない。


 だからという訳でもないが、


「……ふあーあ」


 わざとらしく、ホルスドは、そう言った。
 あくびをしている訳ではない。
 小さく口をあけて、あくびをしているフリを見せつけただけ。
 ただのポーズ。


 ホルスドはゼンの攻撃に対して何もしなかった。
 むしろ、首を少し傾けて、さし出してきたくらい。
 そして、その首は、ゼンの剣をギィンとたやすく弾いたのだった。


 一手で理解できた。
 いや、最初から分かっていた。
 シグレとホルスドの戦闘を、ゼンは全部見ていた。
 だから、こうなることは、最初から分かっていた。


 それでも体験したかった、痛感したかったのだ。


 今のゼンの力では、ホルスド相手に出来る事は何もない。


 何万、何億……どれだけ剣を振り続けても、ゼンの剣は、ホルスドに傷一つつける事もできない。




 絶対に縮まらない差が、ここにはあった。


 本当は、越えられる気がしない壁。


 あるいは、これが、神と人の差なのかもしれない。








 なんて、
 そんな事を思った。







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