『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

20話 そうだ、神様! 私を選んでください! あんなガリ勉よりも、この蝉原勇吾の方が、遥かに優秀だ!

 20話




「単語を暗記するのが好きだと思うか? 漢文なんざ、クソ以下だ! こんな、つまんねぇ世界の歴史なんか知ったこっちゃねぇんだよ! どいつもこいつも、魔法の一つも使いやがらねぇ」


 すげぇとは思う。
 魔法も使わず、こんだけの世界を作り上げた。
 その『気合い』と『根性』はすげぇと思う。


 けど、そんだけ。


「ぶっちゃけ、本音は、どうでもよかったんだ、現実っていう、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ! つまんねぇ、つまんねぇ、つまんねぇ! ……学校の勉強なんざ、どこまでいっても『根性の比べ合い』でしかねぇ……大学受験なんざ『ガマン大会』以外のなにものでもない。俺は、それを知っていた……だから、知りたくもない事を必死に頭に叩き込んできたんだ。『なんで、勉強をやらなきゃいけないの?』なんて、そんなこと、俺は一度も口にした事はねぇ! 全部、受け止めていたからだ! この絶望、この苦痛! 全部、受け止めて、俺は闘ってきた! 必死こいて、全力で! そんだけぇええ!」




 けど、逃げた。
 田中からは逃げた。




 それとこれは別?
 いや、別じゃない。
 同じなんだ。


 人生に背を向けた事はないかもしれない。
 しかし、根っこの部分は同じなんだよ。




 だからこそ、センは歯噛みしながら、あれ以来の一秒一秒を生きてきた。
 あの瞬間、『逃げなかったという証だけを求めて積んできた全て』が穢れたんだ。




 負けたことよりも、その事が――ただ悔しかった。




 気付かないフリをして、呑気を飾って、痛みまで求めたりなんかして、
 ――けれど、それでも『戻りたくはない』という本音に蝕まれて――


 『勝てない相手に挑む不合理』を積ませるほどの魅力が、この世界には無かったのも事実。
 それだって、もちろん、センの本音。
 けれど、とうぜん、『本音だからいいだろ』って話でもないんだ!




 グチャグチャの感情。




 どうすればいいのか分からない、モラトリアムの暴走。










 ――ようするに、まだまだガキだったってだけの話――










「蝉原。もし、俺を異世界に連れていってくれるのなら、お前の全部を許してやるよ。忘れはしないが……許してやる」


 そこで、蝉原は、絶望の表情を見せた。
 センの言葉に嘘がないと分かったから。


 センの言葉は皮肉でも嫌味でも脅しでもない。
 ただの事実。


 だからこそ、逆に、絶望は濃くなった。






「ふざけんな……そんなの……無理に……」






 と、言いかけたが、そこで、ハっと気付く。


「ぃや! そうだ! 神様! 私が対価を払います! 異世界でもなんでも行きます! 魔王だろうが、なんだろうが、皆殺しにしてみせます! あんなガリ勉よりも、私の方が絶対に優秀ですよ! 私を選ぶべきだ! そうでしょう! 神様!! だから、俺を選んで――」


「どこが優秀なんだ?」


「え?」


「お前のどこが、優秀だってんだ? 俺には、お前が、どっからどう見てもカスにしか見えないんだが?」




 神に睨まれて、「うっ」と声がつまる蝉原。




 そんな彼に、神は、少しだけ表情を柔らかくして言う。


「ん? どうした? もしかして、俺の言い方が少しキツかったから、なにか誤解したか? そんなに怯えるな。別にお前をディスっている訳じゃない。お前の事なんか知らんから『プレゼンしてみろ』と言っている。お前は、『セン』よりも自分の方が優秀だと言った。お前は、どこがどうセンよりも勝っている?」


 神の言葉を理解すると、その瞬間、


「なるほど、そういう事なら――」


 蝉原は嬉々として、


「まず、私は、頭がいいです! 私は勉強もできるのです! テストの順位は、あいつよりも下ですが、あいつは勉強ばかりしているのに対し、私は、手広く様々な事をしながら高順位をキープしています。仮に私が勉強だけに時間を費やしていれば、テストの順位も、普通に、私の方が上だったでしょう」


「ふむふむ」


「あと、私は運動も得意です! 幼いころからボクシングと剣道と空手と柔道を散々やりこんできており、その辺のガキが相手なら、誰が相手でも負けません。剣を持たせてもらえれば、オーガですら一刀のもとに切り伏せてみせましょう! 私は今でも充分に強いのです。ここから、さらに鍛えこめば、異世界の魔王とやらも倒せるでしょう!」


「ほむほむ」


「頭や技術だけではありません! 私は、単純な体力テストでも、ぶっちぎりトップなのです! この細身なので、誤解されているかもしれませんが、私の握力は90! 50メートル走は5秒7! 異世界とやらで、もっと、もっと、もっと、鍛えれば、私は最高の勇者になれるでしょう!」


「ははは、蝉原。お前、意外と、異世界モノに詳しいな」


「情報は強者の武器です! ゆえに、私はあらゆる情報を網羅し武装しています! 『神に召喚された日本人が異世界の勇者となり魔王を倒す』と言ったたぐいの物語が流行っているという事も、その理由も、今は理解はできています。私は優秀です! 蝉原勇吾は、間違いなく逸材! ただ、頭がよく、運動ができるだけでもありません。直観力も観察力も洞察力も優れていると自負しています! その証拠を、お見せしましょう……おそらく、『あの手の話が爆発的に流行った』のは、この日のためでは? 神様の意向を、瞬時に理解できるように――」


「ああ、ストップ、ストップ、もういい」


 神は、鬱陶しそうに、蝉原の『おれ、鋭いでしょ?』アピールをバッサリと切って、


「お前の事はだいたい分かった。もうプレゼンは終了だ」




「ありがとうございます! ご理解いただけたようで何よりです!」




「確定したな。つまり、お前より『セン』の方が、異世界では使えるって事だ」










「そのと……は?」







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