『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

17話 頭が高い。ここは神の御前である。

 17話




「……誰かな、あなたは」


 蝉原に声をかけられて、羽織りの男は、


「誰だと思う?」


「さぁ、わからないね……見た感じ……高校生くらいかな?」


「残念、不正解。正解は、神様でしたー」


「……へぇ、すごいね」


 言いながら、蝉原は、ふところから、カイザーナックルを取り出して右手に装着した。


 その光景を見て、羽織りの男は、一瞬だけ、プっと噴き出す。


 笑われた蝉原は、心の中で、


(笑った、か……確かに、見た目はダサいが、こいつは、鉄のかたまり……ただ殴られるよりも遥かにダメージを負うのは事実……実際にはそうそう『振るえない』ナイフよりも、調整がきくし、一般人なら、斬撃よりも殴打の方が、イメージも湧きやすい分、抱く恐怖は大きいはず……この兄さん、頭がおかしいのか、それとも……)


 そんな事を考えてから、羽織の男に、蝉原は言う。
 誰であろうと関係ない。


 蝉原勇吾は止まらない。
 止まっちゃいけない。


「あんたが誰かとか、正直、どうでもいいんだけど……その目、気に入らないんだよね……おれを全く恐れていない目……その目はダメだ……」


 ゆっくりと、羽織りの男の目の前まで近づいて、


「おれの親父は、本物の極道。その辺のチンピラじゃなくて、キチンと組の頭を張っている『親』だ。俺も将来、そうなる」


 脅す口調ではなく、淡々と、事実だけを述べていく。


 蝉原は、そこで、笑顔の質を変えて、


「……みっともなく『背景』までチラつかせたんだから、どうか、怯えてくれないかな?」


 そこで、ユズが、スマホに視線を落としたまま、


「本気ヤクザスマイルでたー。あんた、ユウゴの言うとーりにしたほうがいいよー、この人、優しそうな顔してるけど、けっこう、エグい事とかするから」


 ユズの援護射撃に対し、満足気に頷きながら、蝉原は、


「怯えるだけでいいんだよ。簡単でしょ?」


 言いながら、蝉原は、カイザーナックルをはめた方の拳甲で、羽織の男の右頬をコンコンと優しく叩いた。


 すると、羽織りの男は、


「はっはっは」


 と、楽しそうに笑って、


「蝉原、お前は人の痛みが分かる男だ。だから、いつも、バランスを考える。無茶はしない。非効率な無理は通さない。理想的な暴力の具現。中学生が憧れる『ヤンキーの王様』……」


 蝉原の目をジっと見つめながらそう言った。
 羽織の男は、そこで、『笑顔』を、ニっと、『少し自嘲気味な微笑み』に変えて、


「……くく……ちょいと恥ずかしい話をしようか。俺はお前に、実は、ちょっとだけ憧れていたんだ。賢くて強いヤツだってな……が、どうやら、勘違いだったようだ。お前は、世界一のバカだ」


「……は? 何を言って――」










「神の御前である。頭が高い」










 蝉原は、一瞬で、膝から下の感覚を失った。


 ストンと体が地面に向かって落ちた。


 膝の骨が地面に激突する激痛に、悲鳴をあげる蝉原。


 反射的に、足の方を見てみると、


 ――膝から下がなくなっていた。






「なぁああああ?!!」






「聞こえなかったか? お前は神の前にいる。騒々しくするな、静かにせよ」






 羽織の男がそう言った瞬間、顔の感覚がなくなった。
 両手で触れてみると、顔から『口だけ』がなくなっていた。


「―――――」


 叫びたかったが、口がないから声がでない。




「ようやく静かになったな。それでいい」




 言いながら、羽織りの男は、蝉原の頭を掴んで、




「こんなもんかな」




 微調整を加えながら、蝉原の顔を、


「――――――――」


 地面に何度も、何度も、何度も、何度も、叩きつける。


 鼻がひしゃげ、目が潰れ、皮膚がはがれて、
 それでも、羽織りの男は、叩きつけるのをやめない。


「治癒、ランク2」


 死にそうになるたびに、回復魔法をかけて、感覚がマヒする直前まで戻す。


 そんな事を、何度も、何度も、繰り返してから、


「治癒、ランク3。……さて、だいぶ大人しくなった事だし、そろそろ話をしていこうか。まずは、そこの女」


 そこで、羽織りの男は、ユズに目を向けた。




 ユズは、ずっと、スマホを持ったまま、目を見開いて固まっていた。






 何が起こっているのか、理解できていないらしい。




 羽織の男は、ゆっくりと、ユズに近づいて、


「どうした、そんなに怯えた顔をして。何か怖い目にでもあったのか?」










「な、な、なに……なんなの…………なんなのよ、あんた……」














「なんだ、その口のききかた……ナメてんのか、バカ女」





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