『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

38話 神にふさわしい、素晴らしい神器

 38話








「は、はは……ははは……」


 サイケルは、静かな海の底にいる気分だった。


 深く、広く、高い――そんな、絶対の世界。


 高揚感すら昇華された果て。
 完全なる静寂の中に、サイケルは存在している。




「私は、ここにいる……」


 サイケルは、穏やかに、


「私は、今、全ての中に存在している」


 サイケルは、柔らかく目を細めて、センを見つめる。






「……ありがとう……」






 静かな感謝。


 満たされて、だから、




「名前を聞かせてくれないか、『私の左に立つ者』よ」




「お前に名乗る価値はない」


「そうか。殊勝な事だ。正しい認識」


(――『名乗るほど価値のある名前じゃない』と捉えたか。とんでもない自意識だな。先の発言は、『お前には、俺の名前を知る価値がない』という意だったんだが、まあいいや)


「……私の左に立つ者よ。貴様の、『強さに対する誤解』が、私をここまで連れてきてくれた。私自身の資質が九割……とはいえ、独りでは難しかったのも事実。やはり、アダムと貴様がいたから、私はここまで来る事ができた」


 しみじみとそう言ってから、


「どうだ……美しいだろう? これが本物の……『最強』だ。この世で最も美しい耀き」


 サイケルの言葉を聞き流しながら、センは、心の中で、


(別に美しくはないが、確かに、俺以外にも現世で神化できるヤツがいたってのには驚かされた……こいつが例外なのか、それとも、この場所が例外か……ニーは神力が封じられていたから、少なくとも、『この世界』でならどこでも神の力が使えるって訳ではないだろう)




 考えていると、サイケルが続けて、


「さぁ、私の左に立つ者よ。この世で二番目に尊き耀きよ。時はきた。その深淵をのぞく運命に感謝しながら、溢れる涙と共に――私となれ」


「拒否すると言ったら?」


「受け入れるさ。なぜなら、私がそれを望んでいるからだ。私は、この世で最も尊き者、真に大いなる耀き。全てを一つにするために存在している神の中の神。神の運命は揺るがない」




 サイケルの発言を聞いて、センは、


「ははっ」


 と、鼻で笑い、


「どんだけ粋ってんだよ、スライムより弱いくせに」


 言いながら、センは、アイテムボックスから一本の棒を取り出した。


 それは、『キノキの棒』と呼ばれる武器。
 『センが最初に転生した世界の森』にウジャウジャ生えている『キノキという名前の木』の『枝』を加工した殴打属性の最下級武器。


 仮に日本刀の攻撃力を50とした場合、キノキの棒は7くらい。
 土産モノ屋で売られている木刀とドッコイの、とにかく弱い子供のオモチャ。


 センが、六歳の頃、お小遣いをためて買った、生まれて初めてちゃんと装備した、記念すべき最初の武器。


 完全にゴミなのだが、なんとなく捨てられなかった思い出の品。




「キノ、起きろ。お前の全てを許可する」




 命じると、キノキの棒は輝きだした。


 特に変形する訳でもなく、ただポワーっと薄く光っているだけ。


 若干、棒の部分に神字が浮かんでいるが、『だからどうした』と言わざるをえない微量な変化。


 ――『キノ』は、センとずっと一緒にいた結果、九十九神化したのだけれども、流石に元が弱過ぎたため、結局、クオリティ200程度の低級神器にしかなれなかった、いわゆる一つの、燃えなくなったゴミ。










 そんなキノ(ゴミ)を見て、サイケルは『ほぉ』と心からの感嘆のため息をもらし、










「素晴らしい神器だ。……なるほど、どうりで余裕があった訳だ。それほどの切り札を隠し持っていたとは……おそれいったぞ」


(これを切り札扱いしだしたら、俺もいよいよヤバいんだが……まあ、いいや。それより……)


 センは、キノを、ためつすがめつ見て、


(神の力、普通に使えているな……やはり、この場所が異常なのか……)


 思案にふけっていると、






「私の左に立つ者よ」






「あん? お前の左にいるつもりはないが……なんだ?」


「その神器を、渡せ」




「ん? 見たいの? いいよ、ほい」


 投げ渡すと、サイケルは、受け取ったキノをジックリと見つめ、


「本当に素晴らしい神器だ。私に相応しい。大事に使うと約束しよう」


「やるとは言ってねぇよ」


 パチンと指を鳴らすと、サイケルの手からキノが消え、センの手の中に戻ってきた。


「貰おうなどとは思っていない。貴様と一つになった後、戦利品の一つとして受け取るだけだ」


「ここからの闘いで、お前が得るモノは何もねぇよ。確かに存在値は増したが、それがどうした。俺からすれば、『ちょっと頑丈なアリになって、さっきより踏みやすくなった』――それだけだ」


 キノの棒先を向けながらそう言うと、サイケルは微笑んで、


「それだけの神器を持っているのだ。自惚れるのも仕方ない。くく……しかし、なんと滑稽。無知とは、こうも愚かしいか」


「まあ、確かに、俺は、終わり方の一つも知らない浅学非才の身だが」


「ふふ、私以外の者が聞けば、皮肉にしかならない謙遜だな。それほどの高みにあれば勘違いするのも仕方ない。が、そこで終わらせたくないという私が、どこかに確かに存在している。貴様には理解をさせたい。これは私のワガママ。少しばかり醜い自己顕示欲。けれど、抑えられないモノ……貴様ごときが相手では、必要ないのだが……特別に、見せようじゃないか」


 サイケルは、ニっと微笑みを強めて、




「……私が辿り着いた……真に……尊き……」




 ゆっくりと、噛みしめながら、




「最果てを」




 サイケルは、とことんまで洗練された優美さをもって、その両手を合わせた。


 精神が統一される。


 躍動する魂魄。




 ……しかして、世界に、宣言する。










「――超神化――」










 それでは、すべてを超越した神話をはじめよう。





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