【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

貝塚ダンジョン攻略(3)




「走ってもかなり時間がかかりそうだな」

 MAPを見る限り地下100階まである。
 地下12階層から地下100階層までは赤いポリゴン線でMAPが表示されていることから、踏み入れた階層が青いポリゴン線に変わるのだろう。

「とりあえずなるべく早く進むとしよう」

 溜息交じりに歩きだそうとしたところで、視界内に半透明なプレートが拡大されてログが流れる。



 ――スキル「MAP作成LV10」とスキル「暗視LV10」が、スキル「解析LV10」に統合されます。
 ――スキル「神眼」を手に入れました。



「神眼?」

 スキルを選択する。
 


 ▼「大賢者」(●ON/OFF)【頑張った自分へのご褒美のため長期休暇中】
 
 「賢者LV1」人類の英知を利用すること可能。
 「演武LV1」劇に登場した人物全ての個人情報の閲覧が可能。
 「神眼」直視した相手のステータス・ダンジョン内のモンスター・人物の位置・ダンジョン内MAPの確認が可能。
 「演劇LV10」自分だけではなく周囲の人間をも劇の登場人物として強制参加。
 「危険察知LV10」危険が近づいた場合に、知らせる効果。



「かなり使えるんじゃないのか?」

 視界内のMAPへと視線を向けると、黄色い斑点が無数に表示されていく。
 カーソルを黄色い斑点に合わせると『レベル11 名称 飛翔する落花生』と表示される。
 
「これは……」

 1つだけ色違いの――、赤い斑点が1個だけある。
 カーソルを合わせる。

「なるほど……」

 『レベル11 名称 飛翔する落花生R』
 そう書かれている。
 どうやら、かなりダンジョンを攻略する上で有利なスキルのようだ。

 そろそろいくとするか……。

 地下11階層内で1匹だけ居るモンスターは、地下に降りる階段前にいるようだからな。
 全力で走ればすぐだろう。

 高さ3メートル。
 横幅5メートル。
 それが通路の高さであり幅。
 そして上下左右を、ヒビが入った石畳で覆われている。
 それは床も例外ではない。
 俺は、床を踏みしめたあと――、走り出す。

 ――走り出したと同時に、後方から何かが爆散した音が聞こえてくる。
 
 走りながら後ろを振り返ると、どうやら床が爆発したようだ。
 踏みしめるときに力を入れすぎたのかも知れないな。

 通路を走り始めると同時に、前方にダンジョンモンスターであるレベル11 名称 飛翔する落花生が見えてくる。
 まだ俺に気がつかないというか気がついているが、攻撃態勢に入るのに時間が掛かっているらしく動きがスローモーションだ。

 MAP上の、俺と思われる緑色の斑点と、黄色い斑点が重なる。
 それと同時にダンジョンモンスターであるレベル11 名称 飛翔する落花生は、俺の体に衝突すると同時に粉々に砕け散っていく。

「どうやら走っているだけでモンスターを倒せるようだな」

 さあ! 速度を上げるぞ!
 視界内のMAPがナビゲーターをしてくれているおかげで、曲がる方向は事前に判別がつく。
 
 いくら速度を上げても壁にはぶつからなそうだ!
 通路内を縦横無尽に走り続けダンジョンモンスターを瞬殺していく。
 そして、わずかな時間で階段前を守っていた1メートル近い巨大な落花生も衝突で破壊する。

 止まろうと努力はした! 

 努力はしたが、止まることは出来ず正面衝突してしまった。
 まぁ不可抗力という奴だろう。

 ただし、嬉しい誤算。

 1メートル近い巨大な乳白色の落花生の中は空洞になっており、縦横奥行50センチ程の板で作られた木箱が床に落ちた。
 手に取ってみると少し重い。

「とりあえず中身を見てみるか……」

 木箱を無理やり開ける。
 中には、銀色の百合の花をモチーフとして作ら得たのだろう。
 首から下げられるブローチが入っている。

「とりあえず確認出来るかどうか分からないがやってみるか」

 スキル「神眼」で確認をする。



 【アイテム名】  
 
  百合の花の魔力ブローチ
  
 【効果】   
 
  装備者の皮膚病を持続的に治癒させる。



 皮膚病か……。
 とりあえずアイテムボックスに入れておくとするか。
 アイテムボックスを起動。
 カーソルでブローチを選んだあと、アイテムボックスへとカーソルへ移動する。

 すると手の上からブローチが消えた。

「次は地下12階層だな」

 階段を降りて階下に到着すると同時にスキル「神眼」を発動。
 半透明のプレートが視界内の中央に表示されると同時にログが流れる。

 

 ――ダンジョン内、地下12階層にてレベル12 名称 飛翔する落花生 が、3802匹確認できました。
 ――ダンジョン内、地下12階層にてレベル12 名称 飛翔する落花生R が、1匹確認できました。
 ――スキル「神眼」により、全てのダンジョンモンスターの配置をMAP上に表示します。



 ログが終わると同時に視界内中央に表示されていたプレートが閉じると同時に、視界内の右上に表示されていたMAPに赤い斑点が一つ、黄色い斑点が無数に配置されていく。

「やはり、赤い斑点は階段前を陣取っているのか」

 地下12階層から地下20階層までは一本道。
 そして、俺の推測だが――。

 SSRがすーぱーすごいレアって意味だと、ネットの仲間が言っていたことから考えると、きっとモンスター名の後ろに付いているRはレアって意味でいいだろう。

「そのうち、RRとかSRとかSSRとか出てくるということはないよな……」

 まぁ、いいドロップをくれるなら文句はないが……。
 皮膚病を持続的に治すブローチは今のところ使い道はないから、アイテムボックスに死蔵されることになるからな。
 
「さて――、階段前にいるってことは好都合だな。一気に駆け抜けて処理していくか」

 床を蹴りつけ走る。
 すると魔物の姿が見え――、相手がこちらに気がつく前に互いに衝突し――、モンスターを消し飛ばした。
 周囲に散らばるモンスターコア。

 拾う時間がもったいないから捨て置くことにする。
 そのまま走り続け本来なら歩けば20分は掛かる距離を1分もかけずに踏破すると同時に、明らかに毛色が違う落花生を視界にとらえるが――、目で見てから避けられるのとは別問題。
 
 ――そのまま正面から激突し、モンスターは粉々に飛散すると同時にやはり木箱が床の上に落ちて転がる。
 
「さて――」

 木箱を無理矢理開ける。
 中から出てきたのは、銀色の腕時計。
 中の文字板が透けているが動いてはいない。



【アイテム名】  
 
 逆針(ぎゃくしん)の腕時計
  
【効果】   
 
 発動回数(10/10)
 装備者は、命の危険に晒される出来事を白昼夢として10秒前に知る事が出来る。
 装備者に応じて、時計の大きさ・腕時計のベルトの太さが自動で調整される。


 
「これは使えそうだな」

 腕に時計を付ける。
 ベルトの太さや、腕時計の大きさが自動的に変わる。

 かなり便利な代物だな。



 ――地下13階層

 代り映えの無いダンジョン。
 そして代り映えの無いダンジョンモンスター。
 
 唯一、代わりがあったのは――。



 ――ダンジョン内、地下13階層にてレベル13 名称 飛翔する落花生 が、3331匹確認できました。
 ――ダンジョン内、地下13階層にてレベル13 名称 飛翔する落花生R が、1匹確認できました。
 ――スキル「神眼」により、全てのダンジョンモンスターの配置をMAP上に表示します。



 モンスターのレベルが上がったくらいか。
 そしてここのレアなダンジョンモンスターからも木箱が出た。
 木箱の中身は、皮袋。
 スキル「神眼」で確認したが――。


【アイテム名】  
 
 流水の革袋
  
【効果】   
 
 天然水が無限に湧き出る。
 煮沸しなくても飲むことが出来る。


 
「一応飲めるのか……」

 革袋の水が出る部分は、ペットボトルと同じキャップと同じ作りになっている。
 念のため、1口飲んでみる。
 
「これは、良く冷えていて美味しいな」

 口元を拭ったあと、アイテムボックスへ収納。
 まぁ、あまり高くは売れないだろうから、これは死蔵コースだな。
 それに売ろうとしても、日本ダンジョン探索者協会を通さないといけない。
 
 探索者の資格も取らないといけないだろうし、そこまでする価値はないな。


  
 ――地下14階層

【アイテム名】  
 
 流水の革袋
  
【効果】   
 
 天然水が無限に湧き出る。
 煮沸しなくても飲むことが出来る。



 同じアイテムが出たぞ……。
 こんな使い処の無いアイテムばかりが出ても困るんだが……。
 
「はぁー、とりあえず20階層までいくか」

 ………………
 
 …………
 
 ………

 ――地下20階層

「この階段を降りたら地下21階層か」

 床に落ちた木箱を開けるが、中身は流水の革袋。

「これで、流水の革袋が8個か……」

 これなら皮膚病を持続的に治すブローチか、腕時計の方がずっと使い道があったんだがな。
 


 アイテムボックス

 流水の革袋 8
 百合の花の魔力ブローチ 1
 牛野屋の牛丼  399
 ヌカリスエット 114
  
 

「とりあえず21階層に向かうとしよう」

 階層が深くなれば、それだけ良いアイテムが出るかもしれないからな。
 それに、ダンジョンに潜ってからすでに1時間近く経過している。
 作ったアリバイも何時まで持つか分からない。
 早めにポーションを手に入れないといけないな。




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