神様にツカれています。

こうやまみか

第二章 7

  
  幸喜がこの空き地の鍵の開け方を知っていたのも、もしかしたらここに女の子を連れ込んでいたのかもしれないな……と思ってしまう。
 だって、こんな目立たない裏地にあるし、ああ、でもさっきまで雑草が生えていたから無理なのかも。今は神様のお蔭か蚊とか蛾なんかもいないようだけど、普通こういう草っ原にはそういう虫がたくさん居るような気がする、あまり良く知らないけど。
「おーあるぜ。経済学部から情報学部に行く近道あるだろ?あそこ、ホントならなんかオブジェ?置物?みたいなものを作る予定だったのが、何故か放置されていて、それきりになってる。何かさ、今年の1月にオレ達がテスト前のレポートで苦しんでいた時に、お偉いさんが大学の雰囲気を変えようと必死になってたぽいけど、それ以降はまるっきり放置でさ。わけわかんねーよな。
 ま、それはともかくあそこも人は通らないし、植えるのは良いかも……。1回さ、誠司にお手本見せて貰って、二手に分かれようぜ」
 幸喜がこんなにノリノリになってくれるとは思ってもいなかった。大学のお偉いさんがやる気をなくしたのは「ノリカケ」問題とかで、獣医学部設立の夢が絶たれたのが原因かな?と思ってしまったがそれも一瞬で頭から吹っ飛んだ。
 ノリノリどころか草刈鎌を最初はぎこちなく動かしていたけど、直ぐにコツを掴んだのか、もう、草刈りのプロ!みたいな感じだったし。
 みるみる内に再び空き地みたいな感じになった。すると、見覚えのあるアイテムが誠司の足もとに出現した。といっても誠司には神様が黙って置いてくれたのは見えていたけど。
「おお、これは便利だなぁ……。ついでにさ、草を乾燥させてわらみたいにするアイテムが有ったらもうサイコーなんだけどな……」
 幸喜も「アルプスの~」のファンだったのかなと思ってしまう、見かけによらず。
「よし、特別サービスじゃ……。ワシがカミットで隅っこのまた隅ではなくて少しは『神』らしい席に座れるのでな」
 神様は誠司一人ではなくて、三人も協力者が増えたのがよほど嬉しかったらしい。サミット……いや、出雲大社で毎年開催されるとかいうカミットでは、誠司の想像では一番隅っこに追いやられていたド底辺からの脱却を目の前にハイテンションになっているようだった。
 今度は一升瓶ではなくて、ヒョウタンみたいなものをくれた。

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