神様にツカれています。

こうやまみか

第二章 3

 顔を仰いでいる黄金のウチワ(?)は、ザビエルハゲでホームレス風の服、そしてワラジらしきものを履いた神様には全然似合っていなかったけれど。
そんなことを言ってしまえば神様の機嫌を損ねるのは間違いないので黙っておくことにした。さっきも「信じるものは救われる」とか言っていたけれど、あれってイエスキリストの言葉じゃなかったかとも思ってしまった。ただ、誠司も正確には覚えていなかったのでスルーしたが。
「本来ならば水を撒いておしまいじゃが、それではカミットに間に合わないので、成長リキッドを使う。これなどは最も強力なアイテムでの。六か月分が短縮されるんじゃ。
 こんなレアアイテムをふんだんに使えることに感謝して欲しいモノじゃ……。プラチナ会員級のこれからの人生にこれだけのレアアイテムを使えるのは、ひとえにワシの好意じゃからの……」
 黄金のウチワを閉じたり開いたりしながら「わっはっは!」と大口を開けて笑っている神様だったが、前歯が二本も欠けていることに初めて気付いた。

 ザビエルハゲ・ホームレス風の恰好に、前歯の欠けがよく似合う。

 さっき、誠司に見せてくれた「詐欺の神様」の新宿――誠司はドラマでしか知らないが――新宿のカリスマホストのようなイケメンでお金が物凄くかかってそうな、そしてフェラーリとかポルシェとかを乗り回している雰囲気の神様とは違いすぎている。
 だからこそ全国の神様の集まるカミットなるモノが開かれる10月?え11月だっけ、ま、些細なことは良いだろうけど……そういうイベントにはもっとマシな恰好で行きたいという気持ちが痛いほどわかった。
 前歯がないとこんなにも貧乏神ちっくになるのだろうな……と思いながら誠司は、育毛じゃなくって……ええと「成長リキッド」を手にして、種を撒いたところに掛けてみたら、葉っぱが出てきたかと思うとみるみるうちに葉が茂ってきた。といっても、この植物は竹とかアスパラのように真っすぐに伸びる種類らしい。
 こんな便利なアイテムをゲット出来るんだったら、髪の毛がふっさふさになる育毛リキッドくらい持っていそうだ。
 ただ、神様は自分の司るモノ以外には何の力も発揮出来ないのかも知れないのだけれど。
 楽しく葉を茂らせていた誠司のジーンズのポケットに入れていたスマホが振動したので画面を見た。
 大学生の基本だ、今の。

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