神様にツカれています。

こうやまみか

第一章 18

ただ、神様も特別サービスで手伝ってくれるという点は明るい未来予想図に違いないような気がする。
 広大な空き地には――獣医学部の建設用地だったのだから当然かも知れないが――雑草が物凄かった。あれをどうにかしないと何にも出来ないなと絶望のため息をはいた誠司のスマホが振動して新着を知らせた。
 ラインにはチャラい外見とは裏腹に割と几帳面なのか、幸喜が画像まで添付して空き地に張り巡らせてある、鉄のトゲトゲの――実際には名前が有るのだろうが、誠司は知らない――南京錠の数字まで教えてくれるという丁寧さだった。どうやって突き止めたのかは知らないが。
「まず、あの草を何とかしないとタネも撒けませんよね……。あ!除草剤とかいうモノが売っているらしいです」
 パカーンとまた叩かれた。雑草がすくすくと育っている中で、ザビエルハゲの神様と二人っきりで立っていた。誠司的には好みの清楚な顔と胸が大きな女の子ですら、こんな草の中は嫌だというのに選りにも選ってこんなホームレス風のザビエルハゲと佇まなければならないのかと思ってしまった。しかも直ぐに叩くし。
「アホなのは充分分かっておったのだがな……。あのな、除草剤を撒いたら、その土地に新たな植物を植えることが出来なくなることくらいも分からないのか」
 盛大なため息と共に、またハラリと髪の毛が散っていく。
「あー!葉っぱを枯らすのが除草剤なので、そう言えばそうですね。じゃあ、どうすれば良いんですか?」
 誠司にとってはこの草ぼうぼうの土地を見るだけでゲンナリしてしまう。
 大阪も割合に広いと思っているので――隣の兵庫県には負けるけれども――山も有れば海もある。しかし誠司は生まれてこのかた都会にしか住んだことがなかったし、母親は狭い庭でガーデニングを楽しんでいるらしいが、手伝ったこともなければ、咲いている花を愛でるような高尚(?)な趣味を持ち合わせてはいない。ただ、庭で出来たというプチトマトを美味しく食べるだけだ。
 だから園芸だか農作業かは知らないが、そんなことは神様にアドバイスを貰わなければ絶対に出来ない自信がある、しかも満々と。
「これを刈る……と言いたいところだが」
 誠司がゲンナリとした表情を露骨に浮かべたせいで神様はしまったというように言葉を変えた。

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