同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第二十三話 二国戦争Ⅱ

    急いで最前線へと向かう。到達した時に見たのだが、明らかにあちらは人数が多い。しかも、不死者アンデッドもおり、こちらはかなり苦戦を強いられている。

『この戦況を変えるためには・・・・・聖越魔法でまずは不死者アンデッドを死滅させて、その後に、特大の魔力を込めた風魔法の大気風刃ウィンドカッター"を放って、相手の兵士達を切り刻むか』

『聖越魔法 "越聖陽光"』

    巨大な魔法陣が構築されると同時に、その魔法陣から光が放たれる。
    その光によって、不死者アンデッドは全員消滅した───様に見えたのだが、誰一人として、死んでいない。

「まさか・・・・強力な結界魔法?」

    まさかと思い、自分の目に強化魔法を使って見てみると、一つのアイテムに向かって、数万人単位の人達が魔力を送っている。恐らくだが、何かの神器なのだろう。
    それにしても・・・・だ。問題なのは、あの神器から展開される、魔法無効化と思われる結界なのだ。

「どうするかな・・・・」

    その時だった。後ろの方から、黄金の光が見える。そして、後ろを振り返る。だが、光が強すぎて見えない。

「我が聖剣の力を見よ!!ていやぁー!!」

    声でようやく分かった。昨日、ダンジョンで階層ボスに倒されそうになっていた勇者達だ。
    だが、贅沢を言える状況でもないので、何も言わずに戦いを再開する。

『召喚剣 "聖剣リーテル"』

    透明な剣なので、相手側の術者にも分からないし、聖剣なので不死者アンデッドの復活・再生能力を無効化する。今回の戦闘に、最も最適な剣なのだ。

『氷刃魔法 "氷山鋭刃アイシクルカッター"』

    剣を取り出して切りかかろうとした瞬間だった。今度は誰かの魔法により、遠くで神器に魔力を流していた人達を、一発で一掃した。

「痛ったー!間違えて、自分の手も少し切っちゃったわ....」

    そして今度は、純白で金の刺繍の入ったローブを来て、モーニングスターを持っている女の子が居た。

「い、今治癒を掛けますね」

『治癒魔法 "軽損傷回復イヴヒーリング"』

    最後に筋肉ムキムキの、無理矢理着込んだと思われる鉄の鎧を装備した、とても強そうな男が居た。

「おいおい・・・・一晩一睡もせずに特訓をした途端これかよ・・・・・・。心配だな・・・・・」

「良いから!早くしないと次来るわよ!」

    流石に四人に任せっきりはダメだと思ったので、魔法を起動させながら口を開く。

「みなさん!避けないと死にますよ?」

「「「皆ー!一時撤退しろ!!」」」

「それではご武運を」

    こうして二分もしないうちに、全員が目の前から消える。

『混合魔法Ⅱ "蒼炎風絶雷"』

    この魔法は、獄炎魔法の蒼炎乱舞ソウルフレイムと暴風魔法の暴風亡止デストップフレイを合わせた、蒼い炎を纏った暴風と、無理矢理入れた重力魔法により出来た雷の魔法だ。
    発動すると、その威力に誰もが目を見開いた。それはそうだ。さっきまで目の前に居た、100万人はくだらない程の人々を、たった一つの魔法で、全員を帰らぬ人としたのだ。

「・・・・・」

「「「「!!!!」」」」

    リムスニア王国側の軍は、全員が口を開けたままにし、エルスディア帝国側の軍に至っては、全員が戦意喪失し、誰もが武器を捨てて逃げ始めている状況だった。

「・・・・・箝口令と勝利宣言をせよ。此度の戦い、我らがリムスニア王国の勝利だ!!」

「「「「「わぁー!!!」」」」」

    こうして、たった二日間の王国と帝国との戦争は幕を閉じたのだった。


◇国王 リムスニア視点◇

「表を上げよ。此度の戦での武勇、しかとこの目に焼き付けたぞ。ゼクロイド。よって、貴族位と勲章を叙勲するものとする。貴族位はそうだな・・・・副伯としよう!!それでは余は仮眠を取ってくる」

「貴重な時間をわざわざ割いていただき、誠にありがとうございました。国王陛下」

    流石に今日は疲れたので、特大サイズのベットの上で横になる。しかし、すぐには寝られなかったため、今日のゼクロイドの事を考える。
    あれは、規格外とか化け物とか、そういうレベルで収まる話では無かったのだ。それにあの魔法は・・・・・多分だが、エルフの国の王族や、精霊族、大魔女、神族しか不可能だと思われるレベルの魔法だった。

「まあ、考えていても仕方ない。今日は早く寝よう・・・・」

    こうして考え事をしていると、うつらうつらとしてくる。そして、最終的にそれに身を委ねた。



〜第三章  勇者召喚の刻  ( 終 )〜

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