同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第十話 地下迷宮Ⅱ

    発動する魔法は、獄炎属性系の爆裂魔法で、爆発させる方法は風魔法を感知する術式を組み込む事によって、風魔法が当たると発動する、という方法にした。

『我が火の魔力に応じて、全てを壊す爆裂魔法へとなれ!"炎爆裂風感フレイムボーウィング"』

「くっ・・・・魔法の発動には時間が掛かるんだ。どうにか時間を稼いでくれ!」

「分かりました!!リーシャ!ロイ君に地龍を近づけないように上手く立ち回って戦って!」

「言われなくても分かってるわよ!」

『我が水の魔力に応じて、水龍の力を現界させよ"水龍の氷域アイスバリーリエ"』

    流石Sクラスに選ばれただけはあり、リーシャの魔法で地龍は足が凍って動けない。しかも、自分達の1ランク上の、翼の生えた種類の龍である翼龍よくりゅうの力を受けているのだ。動けるはずがない。

「よし。二人とも後ろに下がってくれ。そして、ありったけの風魔法を地龍の居る近くの地面に放ってくれ」

「「分かった!!!」」

    まず、エリスが詠唱を始める。すると、地面に黄緑色に光る魔法陣が出て来て、つむじ風がそっと頬を撫でる。
    これは、性格が具現化した物なのだろう。

『我が風の魔力に応じて、緩やかなる風となれ。"緩風小嵐リファリエル"』

    次に、リーシャが詠唱を始めた。こちらは、風魔法のはずなのに、魔法陣が紫色の光を放っている。そして、凄まじい強風が吹き荒れる。
    これは、性格がとても良く出ているのだろう。特に吹き荒れている部分などだ。

『我が風の魔力に応じて、虚無すらも貫く槍となれ!"虚空投擲槍ステイリアボルグ"』

    二人の魔法が地面に当たると、地龍を包み込む様に爆炎が発生する。しばらくすると、その爆炎は収束していき、煙だけがその場に残った。
    そこで、一応魔力探知を発動しておく。

「・・・・生命反応は感じられないし・・・・・素材だけ回収して帰るか」

「そうしましょうか」

『スキル "アイテムボックス"』

    すると、何故か一体だけ仕舞えなかったので、ここはきっぱりと諦めた。
    そこで、急にリーシャがこちらへと歩いて来た。まあ、その意味は予想出来なくもなかった。

「なんであいつだけ回収出来ないのかしら?」

    この言葉はまさしく予想通りだ。それところか、一言一句たがわず、まるでこちらの思考を読んで言ったのかと思われるほどだった。

「さあ・・・・それがさっぱりなんだ。容量に制限は無いはずだし、どうしてかは分からないんだよ。取り敢えず、死体はダンジョンで勝手に消してくれるはずだしいいか。」

「そうだね。早く帰ろうよ」

    早く帰ろうよ、と言う言葉に軽く頷いてから、少し思考を巡らせる。それは、今回の異常事態についてである。だが、数分考えてみても、特にしっくりとくる理屈が思い浮かば無かったので、パッと思考を切り替える。
    外に出ると、先生方が待っていてくれていた。空を見上げると、紅く染まっていた。だが、空の色が災いの始まりとはまだ知るよしも無かった。


◇????視点◇


「行きましたか・・・皆さん出ますよ?地龍の中ってベタベタしてて嫌なので」

    一番最初に地龍の体から出てきた魔族の自分のの名前は、フローラと言う。彼女は魔王に仕える幹部の一人で、破壊を担当している。

「ハイハイ。まあ、言い出したのはフローラちゃんだけどねー」

    そして、この呑気な幼げな女の子の姿をしたのが、魂喰の幹部であるテリンヌだ。

「黙れリテンヌ。お前は良いから早くコイツの魂でも食っとけ」

    そして、この真面目な感じだが、全然真面目じゃない彼女は誘惑の幹部であるノアリエスだ。

「ハイハイハイハイ。分かりましたよ、ノアリエスさーん。魂喰こんしょくの幹部としての仕事を果たしますよーっと。・・・・ってことで、ノアリエスさんは誘惑して無くていいの?仕事しないとか、魔王様に訴えちゃうよ?」

『何故私達に我が主、魔王様はあの男を殺すように命じたのでしょうか?あんなものグランドドラゴン一体で死ぬだろうと言うのに・・・』

「リテンヌ!ハイは一回で十分だと何度言わせるんだ!!お前も言ってやれ!!ロデリウス!!!」

「・・・・・・俺に救いを求めるな雑魚」

「あっ!雑魚と言ったな!?このナルシストが!!」

「む!?ナルシストとは聞き捨てならんな。地面に這いつくばって土下座しなければ、その首跳ねるぞ」

「ひゅーひゅー!面白くなってきたじゃーん」

「貴方達いい加減黙りなさい!!主様に消されたいの!?」

    その言葉に全員が沈黙する。こんなにふざけているが、消されるなどという単語を聞くと、人格が入れ替わったように真面目になるのだ。ただ、これは十秒程度しか続かないが。

『はー・・・。よりにもよってこの馬鹿共と一緒とか・・・・どんな試練なのですか・・・・・』

「ほら貴方達!追うわよ!!」

「お固いなー・・・フローラちゃん・・・・・えいっ!!」

「ひゃっ!!」

    いきなり横腹を鷲掴みにされた。横腹は弱いので、急に鷲掴みにされてびっくりしたのだ。

『本当にこんな人達とやって行けるのかな・・・・』

    不安しかないが、主人である魔王様の命令を聞かないわけにも行かず、自分だけ、少しずつではあるが足を進める。

「おいおい・・・・もういい加減それは、辞めてやれテリンヌ。フローラが可哀想だ」

「あー出たー!ロデリウスのフローラ大好きー!!!」

「な、なななな、何でそれを知っているぅぅぅうう!!?いや、違う。そんな事は無い。断じて違う!!」

「でも、前の野営の時だって・・・・・」

「やめろぉぉぉおお!!」

「・・・・・良いから行くわよ!!この馬鹿ども!!!」

    先が思いやられるスタートだったが、最後の一喝により、全員が動き出したのだった。

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