同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第七話 入学試験へ

    朝早く、鳥のさえずりによりぼんやりとした意識を切り替え、ベッドからのそのそと出る。

「ふぁー・・・・。思ったよりも早く起きちゃったな・・・・・・。まだ、5時だ・・・」

    早く起きてしまったので、暇潰しや魔法などの復習として、中庭に出る。この家の中にははかなり広く、ここだけでも家が軽く7・8軒程建てられるだろう。

「まずは、魔法の威力がどのぐらい出せるかの確認と、威力操作だな。まあ、獄炎地獄レフェリルヘルファイヤ位にしておこうかな。魔力を消費し過ぎるのも良くないし。『我が火の魔力に応じて、火の大精霊・イフリートの燃え盛る獄炎へと変われ!"獄炎地獄レフェリルヘルファイヤ" 』」

    詠唱が終わると、魔法陣から直径5m程の凄い熱を放つ炎の塊が出て来た。そして、それを空へと放つ。

『ゴオォォォオオオ!!!!!』

「うわぁー・・・・音も威力もエグいな・・・・。魔力の消費を、確認してみようかな。あまり減ってないといいんだが・・・・・。『ステータス』」

    魔力の所を見てみると、1820ある筈なのだが、120しか無くなっている。少しの吐き気と倦怠感があったので、何となくは察していたが、いざ見てみると、嫌になる。

「エクリエイサーを飲まないとだめそうだな・・・・」

    嫌になるのは、エクリエイサーの味が不味いからだ。だが、試験の日に魔力が無いのは流石にキツイので、飲むしか選択技は無いのだ。

『ゴック・・・・ゴック・・・ゴック・・・・ゴクン』

「・・・・うえぇー・・・・・。まじでなんなんだよ・・・。このなんとも言えない不味い味は・・・・・。美味しくしてくれよ・・・・・」

    何故かは分からないが、味的には低級や粗悪品の方が美味しいのだ。だが、わざわざ粗悪品を買う程では無い。

「あっ・・・・後は威力調整しないとかな」

    手の上に土の玉を出す。実は、かなり前から低級魔法の無詠唱を覚えていたのだ。何故今それを使うかと言うと、詠唱の場合は、威力を操作するのがとてつもなく難しいため、無詠唱にしたのだ。無詠唱の長所は、威力も方向も自由に出来るところだ。逆に短所は、想像力と冷静さが無いと出来ないところだ。

「うん。良い感じだ。形などもいびつじゃない。じゃあ後はエクリエイサーを3つ飲んでっと・・・・」

    飲み終わると、亜空間収納から聖剣を出す。これも魔法だ。まだ安定はしていないものの、空間魔法が使えるようになった。容量は聖剣がようやく1本入る程度しかない。

「と言うか、なんで勇者でもない俺らの家に聖剣があるんだ?まあ、有難く使わせてもらうが・・・・」

    と、聖剣の刃の部分を出す。この聖剣の名前は、聖剣エリクリート=スペレータ。通称、聖剣エリータ。その黄金の持ち手と、金色に似たように輝く青い刃は、次元すらも切り裂くと言われている。ジルク父様の祖父が使っていたと言う愛剣だったらしい。

『勇者でもやっていたのだろうか?』

「まあいいか・・・・・。せいやー!!」

    1回切ったはずなのに、5回も斬撃が出ている。本当にこんな武器、何処で手に入れたんだろうか?まさか、ダンジョンか何処かから、盗んででも来たのだろうか?
    と、そんな事を考えていると、専属メイドのメティアと目が合う。

「あら。ロイ坊ちゃん。こんな所に居たのですね・・・?もう朝食の時間ですよ?」

「・・・・分かった。今行くよ」

    それから約一時間後。もう、試験会場へ、つまりは王立第七学園の試験へと行く時間になった。そこで試験に行く為、筆記具と長剣(ロングソード)、皮の軽鎧を持って、玄関まで来た。

「頑張ってねロイ君」

「頑張れロイ」

「ん・・・・・ロイ兄様がんば」

    応援の言葉を聞いて、扉に手を掛ける。応援されているのはやはり嬉しいものだ。そう思いながら、最後にスレン兄様とマリア姉様、リルに軽く笑いながら言う。

「行ってきます」

「「「行ってらっしゃい!!!」」」

    玄関の扉を開けて、ゆっくりと歩き出す。空を見上げてみると、空はとても晴れていて、風も心地よい。

『試験を受けるには、絶好の日だな』

「・・・・・よし。早く行こうかな」

    歩調を早めて試験会場へと向かう。試験会場と言うのは、王立第七学園の事だ。

    しばらく走っていると、王立第七学園の門が見えてきた。外壁には金で出来たプレートに、 リムスニア王国立第七高等学園と彫られている物が、付けられていた。
    しかも、建物自体もすごく綺麗で、手入れが行き渡っているのが分かる。外壁にすら汚れ一つないのだ。

「流石、王立第七学園だな・・・・。凄く綺麗だし、大きいな・・・。って、早く入らないと試験の時間になるな・・・・・」

    貴族門から入る時に、何故かこちらを睨んでいる平民門の生徒が五・六人居た。
    とそんな時、後ろから肩をトントンと叩かれた。後ろを向くと、銀製の軽量鎧だろうか。動きやすいように作られているであろう装備に、胸には王国のマークが書かれている。恐らく衛兵だろう。

「こちらは貴族様方のみ通れる門となっております。受験生の方々は名前を言ってから、こちらから入ってください」

「ジルク公爵家次男、ゼクロイドです」

「これはこれは公爵様でございましたか。どうぞ中にお入りください」

    門を潜ると、一流の貴族家や全く知らない貴族の子供が居た。それにしても、名門と言うだけあり人がかなり居る。

「何処か適当に座るか・・・・」

    教室を見渡してみると、後ろの席しか空いていないので、後方に座る事にした。どうやら、みんなは前、つまり黒板側に固まってるようだ。

「ねぇー!!あの後ろに居る人凄くかっこよくない!?話しかけようよー!」

「えー?無理だって。相手にされないよ」

「おい!あの子凄く可愛いぞ!!」

「話しかけに行こうぜ!」

    誰かカッコイイ人と可愛い子が居るらしく、試験会場はその話題で持ち切りらしい。
    そんな時、左側から誰かが近付いてきた。

「あ、あの!お隣宜しいですか!?」

「ああ。別にいいけど。前の方がいいんじゃないの?」

    素朴な疑問を言うと、首を横に振った。隣に座って来たので、自然と視界に入る。そこで、少しだけ見惚れた。

『凄く綺麗な子だなー・・・・。あれ?この子って、さっき可愛いって話題になってた女の子じゃないのか?』

    そんな子が自分の隣に来た事に、少々驚きを隠しきれなかった。


◇???視点◇

『良かった・・・・。これでようやくこの方とお話出来る・・・・・。それにしても、先程からあれ程カッコイイと言われているのに、自分だと気付かないのかな・・・・?』

    そんな事を考えながらじっと見ていると、急に顔を覗き込まれたので、一瞬たじろいでしまった。

「こっちを見てるけど、どうかした?」

「い、いえ!なんでも無いです!」

    こちらは顔を真っ赤にするが、あちらは特にそんな素振りは無い。

『そこまで私って魅力無いのかなー・・・・。あっ、そうだ。自然な会話をして、仲良くなろう』

「そう言えばなのですが、貴方のお名前と爵位を聞いてもよろしいですか?」

「名前と爵位か。まず、俺の名前はゼクロイド。皆にはロイって呼ばれてるから、是非とも気軽にロイと呼んでくれると嬉しい。爵位は公爵だ」

「なるほど・・・・良い名前ですね!それにしても、その・・・・婚約者とか許嫁は居ないのですか?」

「婚約者とか許嫁とかは居ないかな・・・・」

『って、何聞いてるの私のバカバカバカバカ!!婚約者とか許嫁とか聞くなんて、王女としてあるまじき行為ですわ!』


爵位の設定(現実とは異なる)


大公…王家を継がなかった王子や王女などの爵位。税金や金銭など、ありとあらゆるものが援助される。但し、代わりに何か行事がある時は表に出なければならない。



公爵…上位貴族の最高爵位。国王と大公の次に、影響力がある。主に、全領地の運営を支援したり、国王と話し合い、何か大きな事を決めたり出来る。

◇今あるのは、ジルク公爵、エッセル公爵、フィング公爵。



侯爵…上位貴族の爵位の一つ。いくつかの領地を分けて担当し、大きな領の領主が不在の時など、代わりに仕事をする。公爵と同じぐらいの影響力を持つ。

◇今あるのは、ビシェール侯爵、カラン侯爵、アイマス侯爵、リッフェンド侯爵、ミール侯爵。



辺境伯…上位貴族の爵位の一つ。他国と隣接する領地の守護を任されており、自分の軍を持つ事が許されている。

◇今あるのは、スイン辺境伯、エーテル辺境伯、ナリア辺境伯。



伯爵…上位貴族の一番下の爵位。様々な領地を周り、納税費に嘘は無いかや、違法な取引などを行っていないか確認する。

◇今あるのは、セムテラ伯爵、リビット伯爵。



副伯…下位貴族の最高爵位。二つから三つの領地を任され、上位貴族からの補助を受けられる。

◇今あるのは、カル副伯、テンス副伯。



子爵…下位貴族の爵位の一つ。一つの領地を任され、他の貴族に協力して貰うのが許可されている。

◇今あるのは、シルス子爵、テイン子爵。



男爵…下位貴族の爵位の一つ。平民とほぼ同じ。個人での貿易や耕作、商業などを許可無く出来る。(但し、国に大きな損害をもたらす貿易などをした際は、一家死刑)

◇大勢(十家以下)



準男爵…下位貴族の最低爵位。平民と同じ。個人での耕作だけを許可無く出来る。

◇大勢(十家以下)



    上位爵位を持つ者は、市民の5倍の税を払う。(大公は税を払わなくて良い)下位貴族は1. 5〜3倍の税を払う。


    名誉貴族(戦争を勝利に導いた等の元平民)は、税を払わなくて良い。但し、名誉なこと(村を飢饉ききんから救うなど)に務めなければ、爵位剥奪と税の免除無し。


    長男は、父親の爵位を継承する事が出来る。尚、要らない場合は、次男やその下に受け渡す事。


    次男は、長男の選択した爵位の一つ下の爵位になる。(三男も含む三男以下は平民となる)


貴族の子供(次期当主以外)は、何かの損害をもたらす行為や、権力の乱用などをすると、爵位を剥奪するものとする。




「それじゃあこっちからは二つ質問するよ?」

「わっ!・・・えっと・・・・あの・・・はい!」

『会話してるのを忘れてたー!!』


◇ゼクロイド視点◇

『先程まで少し考え事をしていたようだったが、何を考えていたのだろうか・・・・。まあ、良いか』

「じゃあまず一つ目。君の名前と爵位を教えてくれないかな?」

「あ、はい。分かりました!私はエリス・フォース=リムスニアです。爵位・・・・と言うよりも、王位継承権第四位の王女です。敬語は無しで大丈夫です」

「えっ!?あっ・・・・王女様でしたか・・・・・。流石に王女様にタメ口をする勇気はありません」

『と言うか俺、なんで今の今まで気付かなかったのだろうか。明らかに高価そうな服を着ているというのに・・・・』

「あっ・・・・その・・・・・敬語を付ける人は嫌いです!」

「ぐっ・・・・分かったよ。エリス」

    そんな会話をしていると、試験会場の扉が勢い良く開いた。

「はーい!皆さん静かにして下さーい!今から試験を始めますよー?」

    皆がゾロゾロと座っていく。男子はこっちをちらっと見て、俺の事を睨んでくる。理由は分かっているが、何も言わないでおく。

「では、こちらの紙を回してください。制限時間は一時間です。解けない問題は飛ばしてください。では、初め!」

    回ってきた。紙には、領地の名前を問う地理問題、これまでの国王とSSSランク以上冒険者の名前を聞く歴史問題、四則算を解く算数問題、魔法式を見て詠唱用の呪文や起動する魔法・魔法陣・規模・必要魔力を問うの魔法学問題。どれも簡単で、20分で終わった。

    40分後。集める時間になった。所々から、「難しくて全然書けなかったー」や、「時間ギリギリで終わったー」などという声が聞こえた。
    そこで、隣に座っているエリスに話し掛ける。顔が真っ青だが、それは気の所為だろう。

「簡単だったな・・・・。エリスはどうだった?」

「・・・・私は魔法学問題と歴史問題が無理だった・・・・・よく解けたね。ロイ君」

『あれ?歴史問題って、自分の先祖達の問題もあったよな・・・・?ま、まあ、気にしないでおこう』

「まあ、これぐらいの問題なら六歳の頃に、もう解けてたよ」

「へー・・・・ロイ君って、頭も・ ・良いんだね!」

頭も・ ・?他には何が良いんだろうか?』

「なーエリs・・・・「あ!ほらっ!急がないと実技始まっちゃうよ!」・・・・・」

『絶対に今、タイミングを被せてきたな・・・・』

    そうは思ったが、時間を確認してみると本当にギリギリだった。

「あっ!ホントじゃん!急ごうエリス!」


    この後、魔法の実技も剣技の技術も簡単に終わった。どちらとも呆気なかった。魔法に関しては、火球ファイアボールで終わり、剣技に関しては、木の剣を始まりの合図と共に、敵の肩に当てて終わりだった。
    そして、試験が終わるとエリスが走って来た。近くに来た時には、すごく息切れしていた。

「はぁー・・・・疲れたねロイ君」

「確かに、体動かしたし疲れるよね・・・・」

「そう言いながらも・・・はぁーはぁー・・・・・息上がって・・・・ふー・・・・・・無いじゃない!」

「ああ、そうだな(笑)」

「ちょっとなんで笑ってるのよ!あっ!待って!」

    走って逃げる。だが、あまり走ると可哀想なので、校門の前で止まる。そこで、今日はもう終わりなので、帰る事にした。本当はクエストを受けたかったが予想以上に疲れた為である。

「じゃあ、俺は帰るよ。また明日。エリス」

「はぁーはぁー・・・・またね。ロイ君・・・・・・」

    帰る前に、一回だけ軽く手を振ると、ブンブンと振り返してきた。それに軽く笑う。

『受かっているだろうか・・・・』

    ほんの少しだけ不安だった。


◇?????視点◇


「はっはっはっ!あいつもとうとう好きな女が出来たか!」

「ちょっとうるさいわよ!ゼロ!」

「まあまあ、落ち着くんだニーニャ」

「うっさい!筋肉馬鹿!!」

「うっ・・・・助けてエリスー!!ニーニャがいじめてくるー!!」

「それは貴方が筋肉ムキムキなので仕方ないかと」

「エリスはつれないなー」

    いい加減にうるさいので、右手で机をダンっ!と叩く。

「静粛にせよ!」

「「「「・・・」」」」

     すると、四人とも一斉に話しを辞める。それを確認してから、この円状の机の真ん中にある、かなり大きい水晶に一人の少年を映す。

「それで?彼奴あやつが何レベになってから加護を付け始めるか決めたのか?」

「はい。私は250レベにしようかと思います。ベクティム様」

「儂は1500レベ位にしようかと。私の加護の能力はチートなのでの」

「ゼロとニーニャは分かった。で、そちらの二人は?」

    自分から見て右側に固まっている二人に視線を送る。すると、肩をビクッと震わせた。

「私は750レベでございます。ベクティム様」

「俺は100レベから付けるつもりですぜ。ベクティムの兄貴」

    ランドロフの言葉に眉をピクリと動かす。流石に兄貴と言われるのは地味に腹が立つ。

「よし。ランドロフは教育が必要の様だな」

「あ、あのー?まさか殺し合いゲ ー ムとか言いませんよね?」

「よく分かってるじゃないか。さあ、早く来い」

    首元を掴んでズルズルと運んでいく。すると、ランドロフはジタバタしている。そして、口を開いた。

「いやー!神殺し!!」

「「「ご愁傷様!!」」」


    こうして、神界でも賑やかな会話が交わされるのであった。

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