元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第8話 何か様子がおかしい

 冒険者ギルドでパーティの枠組みとして容認されているのは、最大5人。
 俺たちのパーティは。リリアが加わわった事によりフルパーティとなった。
 それが何だって話だが、実は依頼を受ける人数によって依頼内容は変わってくる。
 当たり前の事だが、問題を対処するときは1人より2人の方が容易に対処出来るだろう。
 それと同じ事で、依頼内容も人数によって少し困難になる。
 依頼内容が困難になるだけで達成する難易度は変わらないみたいだが。


 そんなわけで、今日から早速依頼を受けると意気込んでいるパーティメンバーに引き連れられ、冒険者ギルドにやってきた。
 俺としては金(約20万ペル)がある訳だから、のんびりと自堕落に過ごすのも悪くないかと思うのだが。
 どうやら皆は、働き盛りらしい。


「今日は依頼がいっぱいあるなー。どの依頼を受けるー?」


 いち早く、依頼掲示板の前に駆け寄ったレンがニコニコと笑っている。
 俺を除いた3人も依頼掲示板を覗き込み、依頼に目を通す。


 さて、俺はどうするかな。
 ギルド内には酒を飲んでいる奴が多く、半分酒場みたいなもんだな。
 世の中には適材適所という言葉がある。
 俺は、彼らのようにはなれない不適合者だった訳だ。
 そういう訳で俺は酒でも飲んで待っているとしよう。
 今世初の酒だ。


「酒を1杯くれ」


 カウンターに行き、酒を注文する。


「200ペルになります」


 200ペルを支払い、酒の入った木のジョッキをもらう。
 それをグビグビと一気に飲み干す。


「ぷはー。うめえー」


 酒を飲んで、やっと成人した実感が湧いた。
 これぞ大人の味よ。


「あんた、ほんとバッッカなんじゃないの?『ぷはー。うめえー』じゃないわよ!」


 酒を飲んでいるところを見つけたリリアが怒鳴り散らしてきた。
 バカの部分が強く溜められている。
 それにしてもお前、俺の真似上手いな。


「待て待て。実は俺、酔拳という武術の使い手なんだ。だから依頼を受ける前はこうやって酒を飲まないと実力を発揮出来ないんだ」


「え、それ本当なの?」


「嘘に決まってるだろバカが」


「ッ〜〜〜!!!!あんた、ホント殺すから!!!」


 ちょっとしたジョークのつもりなんだけど、いつも俺はリリアの地雷を踏んでしまうらしい。
 そろそろ足の二本や三本失いかねない。


「まぁまぁ、リリア。落ち着いて。今日は、初めて依頼を受けるわけだし簡単な依頼を受けるから別に大丈夫だよ」


 怒ったリリアをアルレが落ち着かせる。


「やはり、俺の心配は杞憂だったか。Cランクのリリアがパーティに加入して、調子に乗ったお前達が身の丈に合わない依頼を受けないか危惧をして、俺は酒を飲んだのさ。酔っ払いが一人いたらそんな依頼を受けようとは思わないだろう?」


 俺は皆に向かって、酒を飲んだ意図を話した。
 まあ、完全なでっちあげで、そんな意図微塵もないんだが。


「あんた……結構考えてたんだ……」


 どうやらリリアは俺のことを見直してくれたようだ。


「そんなこと思ってる訳ないだろ。お前ほんとバカだな」


 純粋に信じてたリリアに俺はそう言った。
 台無しである。
 でも仕方ないだろ?
 リリアが面白い反応をするから悪いんだ。
 現に今も剣を抜き、俺に斬りかかろうとしている訳だし。
 アルレとレンとスズナは、それを必死に止めていた。










 ◇












 結局、俺たちはコボルトの討伐依頼を受けた。
 コボルトの目標討伐数は10体。
 コボルト単体の強さはゴブリンよりは強く、オークよりは弱いといった感じだ。
 しかし、ゴブリンと違ってコボルトは群れで行動をしないため、魔物の脅威度としてはゴブリンと同列である。


「お、いたぞ!コボルトだ!まずは、リリアがどれだけ戦えるか見たいから、コボルトと1対1で戦ってくれるか?」


 そう指示を出すアルレ。


「分かったわ。《身体強化》!」


 その指示を受けて、リリアは自身に身体強化魔法をかけて、ダッシュで近づき、


 ザクッ


 リリアの細剣がコボルトの胸を貫いた。
 まさに瞬殺。


「グゴッ……」


 コボルトは呻き声をあげて絶命した。
 適正試験で見たときより動きが早いな。
 その理由は、リリアの持つ細剣にあった。
 適正試験の時の木剣は、刀身が太くリリアの長所を活かせてなかったのだ。
 リリアの強さは、スピードを活かした必殺の一撃にある。
 それが活きてくるのがリリアの持つ細剣って訳だな。
 細剣は、その名の通り刀身が細い。
 そのため、斬ることより突く事に長けている。
 リリアは、適正試験の時とは全く逆のスタイルを得意としてた訳だ。




 俺以外の見ていた3人は……。


「これが新人冒険者か……」


「すごすぎ……」


「リリアちゃん!カッコいい!」


 あまりに一瞬すぎた為、驚愕を隠せないようだ。


「え、えーと。そうかな?あはは、ありがとう」


 リリアは褒められて嬉しそうだ。
 絶対コイツチョロいだろ。
 悪い男に騙されなきゃいいな。
 友達もいない……いや、少ないみたいだし。


 と、言っている側から。


「あ、またコボルトが現れたな。今度はノアが一人で戦ってみてくれるか?」


「ああ、死にそうになったら助けてくれよ」


「ああ、任しとけ!」


 そう言ってくれたので、俺は安心してコボルトと戦えそうだ。
 新人冒険者ノアの初陣だ!
 いざ参る!


 コボルトに近づくと、コボルトは鋭利な爪で攻撃を仕掛けてきたので、軽くいなし、首を刎ねてやった。


 まぁ、これぐらいなら普通の新人冒険者レベルだろうな。
 そう思っていたが、後ろを振り返ると皆驚いたような顔をしていた。


「おお……ノアも結構強いな」


 アルレがそう言うと、皆賛同するように首を縦に振った。
 しかし、リリアだけは別だ。
 リリアは俺のことをライバルを見るような目で見ていた。
 別に実力を隠そうって気はあまり無いから、別にいいんだけどさ。


「あ、またコボルトだ」


 レンが指をさした方向には、またコボルトがいた。
 だが、あれは何か様子がおかしい。
 不吉な予感を悟った俺は、索敵魔法を使用してみた。
 すると、俺たちの周りをコボルトが囲みつつあった。


「まずいぞ。コボルトに囲まれている。逃げるぞ!」

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