チートスキルはやっぱり反則っぽい!?

なんじゃもんじゃ

チート! 034 迷宮都市ヘキサ4

 


「そんなっ! いきなり困ります!」


 悲鳴にも似た声を上げたのは商店の店主であるクドレンだ。
 このクドレンが経営する商店は薬品類を主にマジックアイテムなど多岐にわたって販売している迷宮都市ヘキサでも大手の商店である。
 最近は新商品を発売して売り上げも増えてウハウハだと噂されており、冒険者や魔術師御用達の薬品店でもある。
 そしてそんな大商店の店主であるクドレンがなぜ悲鳴なような声を上げたかと言えば、それは新商品を卸していた者から供給を止めるといわれたからである。


「な、何とかなりませんか?」
「申し訳ありませんが、この街を出ることになったので……」


 クドレンは「ぐぬぬぬ」と聞こえてくるほど唸っている。


「せめてもう3ヶ月! いえ、1ヶ月でも先延ばしできませんかっ?」
「申し訳ありません……」


 シローが引き篭もって作っていたマジックアイテムの中にはポーション系の薬品も多くあった。
 色々な配合を試して気に入った配合があるまで配合を繰り返す。
 出来上がったポーションの品質や効果には多少なりと差があるのだが、神具創造師ゴッドクリエーターの効果が発動しているので出来上がったポーションはどれも高品質だ。
 そんな高品質のポーションが在庫過多になったのは当然の成り行きでストレージに入れて放置する事も考えられたが、いっそのこと売ってしまおうとなりジーナとアズハがこの店にポーションを持ち込んだのが取引の始まりだった。
 シローが作ったポーションは一般的なポーションに比べ効果が極めて高く高品質であった為に売り出して早々に人気ナンバーワンの商品となってしまったのだ。
 当面は在庫がはけるまでと思っていたのだが、あっという間に在庫がはけてしまいシローには定期的にポーション作成の依頼が来てしまった。
 そんなシローの迷宮都市ヘキサでの生産活動もスノーに付き纏うストーカーの為に急遽中止し旅立つことになったのはクドレンにとっては青天の霹靂であった。


「そんなことが……」


 クドレンの引き留めにストーカーのことを話し諦めてもらうつもりだったジーナ。
 しかしクドレンの反応はジーナの斜め上を行っていた。


「ジーナさん! その件、この私に預けて頂けませんかっ?!」
「え? え?」
「そんなことで優秀な職人との繋がりが切れるなど商人として許容できるものではありませんっ! こう見えても私は商人ギルドではそれなりの発言力を持っているんです。だから私に任せてくれませんか?」
「え? あ、あの、皆に聞いてみないと……」


 ジーナがタジタジとなる勢いで捲し立てるクドレン。


「では、お仲間の皆さんに聞いてください!」


 ジーナはクドレンに諦めて貰うためにストーカーのことを話したのだが、思わぬ方向に話が進んでしまった。
 そんなこんなでシローたちの旅立ちは一時保留となったのだった。
 その後、1週間ほどで冒険者ギルド経由でクドレンに呼び出されたジーナ。
 店の奥の応接室に通されるとクドレンともう1人初老の男性が待っていた。


「ご足労かけてすみませんね」
「いえ、大したことではありません」


 クドレンとジーナが簡単な挨拶を交わすとクドレンが初老の男性に視線を移す。


「こちらの方は魔導師であり、魔導ギルドの重鎮であるバンデ・バデ・デンバ殿です。今回の件でお力添えを頂いた方です」
「バンデ・バデ・デンバと申す」
「ジーナ・ベアレスと申します。以後お見知りおき願います」


 バンデは自己紹介の後に迷惑をかけているとジーナに向かって頭をさげた。


「さて、アキム・ベットーネについて素行調査を行ったのだが、ジーナ殿のお仲間であるスノー殿には看過できない実害を与えているとの調査結果が報告された。他にも幾つかの余罪があり、アキム・ベットーネには今朝処分が申し渡されている。以後、アキム・ベットーネにはスノー殿やスノー殿の仲間の周辺に近づくことを禁止すると共に賠償金として金貨20枚が支払われることになる。申し訳ないが明日以降に魔導ギルドの本部にスノー殿本人が賠償金の受け取りに来ていただきたい」


 ジーナはアキムに対する処分が下されたと聞き自分の耳を疑った。
 相手は魔導師であり、こちらは一介の冒険者なのだから普通に考えればアキムが処罰対象になる可能性は極めて低い。
 冒険者ギルドが独立組織であり国に対して絶大な影響力を持っているとはいえ、ステータスに犯罪が明記されなければ貴族待遇の魔導師の方が圧倒的に社会的地位が高いので冒険者は不利を被るのが普通なのだ。


「デンバ殿、それでは今後スノー殿がアキム・ベットーネに付き纏われる事はないのですね?」
「うむ、アキム・ベットーネがスノー殿やスノー殿の仲間の周りをウロツクことは禁止されているし、偶々出会ったとしても声をかけることも禁止されている。もしアキム・ベットーネがそれを破れば魔導師の称号を剥奪された上で魔導ギルドからも追放されることになるだろう」


 まさかそこまで馬鹿ではないだろう、とその場にいる3人は一様に思うのだった。


「クドレン殿、何と礼をいえば良いのか」
「そう思って頂けるのであれば今まで通りポーションを卸してくださいね?」
「……作成者にしっかりと伝えておきます」


 こうしてストーカー騒ぎは一応の決着をみるのだった。




















 そんなわけもなく……


「この薬を飲めばアキム様の魔法は正に無敵! アキム様の才能に嫉妬しアキム様を追い落とさんとしている者たちをねじ伏せるに余りある力を得る事でしょう!」


 フードを被った老女がアキムに渡した怪しげな瓶には紫色の液体が入っていた。普通の思考をする者であれば毒を思い浮かばせる色合いの液体だったが、スノーに恋い焦がれシローを親の仇以上に憎み、何より自分を追い落とさんとする魔導師たちを憎むアキムにとって老女の言葉は天使の囁きにも聞こえたのだった。


「この紅蓮の魔術師たるアキム・ベットーネ様に歯向かう愚か者どもを駆逐できるのだな?」
「勿論で御座います。アキム様に何者が逆らえましょうや!」
「ふ、ははははは! これで、これで私は……」


 瓶をアキムに渡し持ち上げるだけ持ち上げ、煽るだけ煽って老女はアキムの前から消えて行った。
 そしてアキムはその瓶の中身を一気に呷るのだった。










 約束の朝、スノーとジーナが魔道ギルドに賠償金を受け取りに行くと事件は起きた。


 一瞬のことだった。
 スノーとジーナが魔道ギルドの建物に入った途端、爆発が起こり建物が炎上したのだ。
 その爆発でスノーとジーナは数m吹き飛ばされたのだが、そこにファイアランスが放たれ直撃した事でジーナは更に吹き飛ばされる事になり意識を手放す。


「ジーナっ!」


 傷付きながらも気を失ったジーナに近づこうとしたスノーを遮るように立ち塞がる影。


「ひゃーっはははははは! 燃えろ! もーえーろぉぉぉぉぉぉっ!」
「く、おやめなさい!」
「オー、マイスイートハァァート。君はいつも美しぃぃぃねぇぇぇ!」


 スノーがその男を止めようと魔法を撃とうとした瞬間、腹部を蹴り上げられ魔法発動の邪魔をされる。


「ぐっ!」
「アキム様の邪魔はさせませんっ!」


 隷属の首輪を着けた獣人の女性がスノーを拘束し魔法発動の邪魔をする。


「ひゃーっはははははは! この『紅蓮の魔術師』であるアキム・ベットーネ様を見下した報いを受けるがよいっ!」


 若くして魔導師にまで上り詰めたアキムの魔法は元々かなりの威力持っていたが、今の彼の魔法はこれまでの比ではないほどの威力を持ち、その威力を一切抑えることなく魔導ギルドの会館やその周囲の建物を破壊する。


「何ってことをするのですかっ!?」
「ふふふふ、何をそんなに怒っているのだい? でも、怒った顔も美しぃぃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 明らかに常軌を逸しているアキムの行動にスノーは成す術もなく拘束され連れ去られるのだった。


 その報がシローの下に届いたのは数時間後であった。
 賠償金を受け取りに向かっただけなのに夕方になっても帰って来ないスノーとジーナ。目撃者の証言からジーナを傷つけスノーを攫ったのはあの頭の残念な魔術師のアキムだと分かった。
 それを聞いたシローは拳を固く握り爪が皮膚に食い込み血を流すほどに怒りを覚えたのである。


「スノー……待っていてくれ、必ず助けるからな!」


 

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