異世界転移者のマイペース攻略記

なんじゃもんじゃ

039_ミスリルゴーレム祭り?

 


 魔法陣が光り輝きMPがゴッソリと持って行かれる。それはもうゴッソリと持って行かれた。
 インスに言わせれば俺のMPは馬鹿がつくほど多いのだが、そのMPの殆どが持って行かれた。おかげでかなりだるい。
 魔法陣の光に意思があるかのように俺にまとわりつく。何かが体の中を覗いているような感覚に襲われ、怠さが更に増す。
 十数秒後、光りが収まっていくと魔法陣のあった場所には1羽の鳥がちょこんと佇んでいた。


『おめでとう御座います。成功です!』
『お、おう……この鳥が俺の使い魔なの?』


「宜しくお願いしますっピー!」
「しゃ、喋った!?」
「ご主人様の記憶の一部引き継いでいますですピー」
「な、なるほど……」
「ご主人様、僕に名前をつけてっピー」


 パタパタと羽ばたき俺の肩に乗っかってきた燃えるような綺麗なルビー色をした鳥は小さいためか殆ど重さを感じなかった。


「そうだな、じゃぁ~ルビーで」
「わーい、ボクはルビーッピー。これから宜しくっピー」


 仕草が可愛い。


「ルビーは何を食べるのかな?」
「僕はマスターからMPを供給して貰っているから食べ物は不要っピー」
「おう、そうなんだ~」




 氏名:ルビー
 情報:リトルフェニックス ランク5 女 0歳 グローセの使い魔
 HP:10000
 MP:50000
 筋力:3000
 耐久:8000
 魔力:9000
 俊敏:8000
 器用:5000
 魅力:7000
 幸運:50
 アクティブスキル:【飛行(E)】【癒しの風(E)】【炎の羽ばたき(E)】【加速(E)】
 ユニークスキル:【復活(E)】【情報共有】


 【飛行(E)】羽がなくてもこのスキルがあれば飛ぶことができる。
 【癒しの風(E)】羽ばたくことで怪我や病気を癒す風を発生させる。
 【炎の羽ばたき(E)】羽ばたくことで灼熱の炎が吹き荒れる。
 【加速(E)】一時的に俊敏値を増大させる。
 【復活(E)】HPが0になって灰になっても灰の中から復活する。
 【情報共有】使い魔が見聞きした情報を召喚者と共有できる。




 使い魔はどこに居ても俺と繋がっており、俺のMPを栄養として生きているそうだ。
 しかしいきなりランク5の使い魔、そしてリトルフェニックスと言う種族には驚いた。
 そして俺が望んだように回復系のスキルを持っているし、何と言ってもフェニックスだけあって【復活】なんてユニークスキルまで持っている。
 攻撃面でも【炎の羽ばたき】があり、攻守共に良い感じだ。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 魔物買取店の方は順調だ。
 それほど難しい業務も無いので新人たちは直ぐに仕事に慣れた。
 予想通りムーセルは頭角を現し皆を引っ張るリーダー的な存在になりつつあるし、兎獣人のローザはどこから仕入れているのか分からないけど色々な情報を持って来てくれる。
 オークのゼナはスキルの【怪力】を生かし買い取った魔物を倉庫に積み上げ、ロナウディーナはルルやデイジー同様看板娘的なポジションを形成しつつある。犬獣人のレンドンもイケメンを生かし女性冒険者に人気がある。


 そしてカズミ・ウエムラだが、彼女には予定通りポーションをガバガバ飲ませ【錬金術】スキルを使ってポーションを作って貰っている。
 勿論、作ったポーションを自分で飲んでポーションを作り続けるという地獄のループを味わっているからかMPが少し増えてきている。


 そんな感じで時が過ぎ赤の塔の街は冬支度を始めていた。
 俺がこの世界に転移させられたのは夏だったのだが、日本の夏に比べ非常に過ごし易かったことから俺は夏だと思っていなかった。


「グローセちゃん、そろそろ上白糖が切れそうなの、卸してくれるかしら♡」
「構いませんが、どの程度の量をご希望で?」


 キャサリンさんは俺に用事がある時は必ずと言ってよいほど俺の家にやって来る。
 副ギルドマスターなので俺を呼びつけることも出来るポジションだけど俺の家に来ることが多いのだ。
 その理由は美味しい紅茶とお菓子なのは俺でも分かることだ。


「今度王都からかなり大きな商隊が到着する予定なのよん♪だから多めに上白糖や胡椒などここに記載した商品と量を卸してほしいのよん♡」
「王都からですか?……化粧品類をこんなに?3日前にも大量に卸していますよ?」
「ええ、化粧品はこの街や王都だけじゃなくて国中の貴婦人が大量に消費してくれるわ♪」
「なるほど……分かりました、用意します」


 今ではシャンプー、リンス、洗顔フォーム、化粧水、保湿液、ファンデーション、などなど女性受けする商品も卸している。
 これが良く売れるもんだから結構な儲けになっている。


 王都の商隊は何と20台以上もの荷馬車と複数のマジックバッグを持ってこの赤の塔の街に乗り込んでくるらしい。めちゃくちゃデカい商会の商隊らしい。
 一般的な商隊が3台から5台程度で10台ならそこそこ大きな規模になるらしいが、今回の商隊は王都でも指折りの商会の商隊であり、上白糖、胡椒、化粧品類など俺が降ろしている商品が国中で飛ぶように売れていることからこれほどの規模になったそうだ。
 上白糖や胡椒の他にもワインや絹織物、そしてコピー用紙やボールペンなどもキャサリンさんから注文を貰ったので5日後の午前中に商人ギルドに卸す約束をする。


 実を言うと、商人ギルドへの卸は今では俺ではなくルルの店を通して行っている。
 ルルは俺からの独立第一号として先月店を開店させた。
 ルルの店を通しても値段は変わらないのでルルの店を通して卸しても文句を言うはずがない。


「では、まってるわねん♡」


 パチクリと音がしそうなウィンクを躱し、帰って行くキャサリンさんの大きな背中を見送る。
 5日後の納品時にはデイジーが新しく出す店の相談もしようと思う。


 翌日、久しぶりにダンジョンに入る。
 久しぶりに時間ができたのだが……何というか、嫁3人衆に捕まり無理やりダンジョンに連行されました。
 今回もミスリルゴーレムの討伐を繰り返す予定だ。
 何でも苦手を克服するためにサンルーヴがどうしてもミスリルゴーレムと戦いたいと皆に頼み込んだらしい。


 ミスリルゴーレムは力はあるが動きは遅いのでサンルーヴは攻撃を避けながら短剣をミスリルゴーレムの表面に滑らすが、中々傷が付かない。
 ミスリルゴーレムの攻撃はまったくサンルーヴに当たることはないので安心して見ていることができるが、サンルーヴの攻撃はミスリルゴーレムに当たってもダメージを与えないという悪循環。
 20分ほどその戦いを見守っていた。まったく決着が見えない戦いだと思ていたら、形勢が動いた。
 元々とても早いサンルーヴの動きが更に上がったように感じた瞬間、サンルーヴが分身したのだ。
 そして次の瞬間、ミスリルゴーレムがバラバラとなり崩れ落ちた。


「やったワンッ!」
「凄いな、今のは分身なのか?」
「ぶんしん?それなにワン?」


 サンルーヴは自分が何をしたのか分かっていない感じだ。
 取り敢えずステータスを見てみよう。




 氏名:サンルーヴ
 職業:忍者・Lv40
 情報:狼獣人(ブラッドウルフ種) 女 15歳 従者
 HP:4000(B)
 MP:3000(C)
 筋力:3500(B)
 耐久:2000(D)
 魔力:1500(C)
 俊敏:6000(S)
 器用:3000(B)
 魅力:3000(B)
 幸運:5
 アクティブスキル:【立体起動(A)】【回避(B)】【鉄斬り(E)】
 パッシブスキル:【脚力強化(A)】【隠影術(C)】【気配感知(B)】【暗殺術(C)】【双短剣術(C)】
 魔法スキル:
 ユニークスキル:【絆】【神速(E)】
 称号:【C級ダンジョン踏破者】


 【鉄斬り(E)】金属をも切り裂く極意を得る。
 【神速(E)】発動すると俊敏値が3倍となり、残像を残す。




 うん、強い!
 てか、今回のミスリルゴーレム戦でサンルーヴは2つのスキルを得たようだ。
 しかも2つともメッチャ使えるスキルでサンルーヴの攻撃力と機動力を底上げする良いスキルだ。
 たった20分ほどのミスリルゴーレムとの戦いでこれだけのスキルを得ているサンルーヴの才能が怖いよ!


「サンルーヴ、凄いな。これならゴーレム戦でも十分戦力になるぞ!」
「ほんとうなのワン?」
「自信をもって良いですよ、サンルーヴは強くなりました!」
「うむ、俺もウカウカしておれないな、サンルーヴに負けぬように精進するとしよう!」
「すごいっピー」
「がんばるワン!」


 サンルーヴは皆に褒められとても嬉しそうだ。うん、撫でてやろう。カシュカシュ。
 それと何故か俺の使い魔であるルビーまでダンジョンに付いてきた。
 そして今はサンルーヴの頭の上で踊るようにしてサンルーヴを褒めている。


「主、次は俺だ!」


 そう言うとリーシアがミスリルゴーレムをPOPさせ、そのまま1人で戦闘に入る。
 俺たちが戦闘を補助しようとすると「手を出すな!」とサンルーヴの成長に即発されたようだ。
 リーシアとミスリルゴーレムの戦いはサンルーヴの時とはまったく違い、力と力のぶつかり合いだ。
 ガシンッ、ガッ、ギリギリ、と言う擬音が響く。
 リーシアとミスリルゴーレムのどちらも殴り合いが得意で殴り殴られを繰り返す。
 但しリーシアは殴られる時に大盾で防御するので防御技術はリーシアの方が一枚上手だ。
 そしてリーシアも20分ほどした時、戦いが動く。


「うりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 斧が幾つも現れ次の瞬間、ミスリルゴーレムが粉砕される。……その粉々になったミスリルゴーレムの残骸を回収するのは俺なんだけど……


「やったワン!」
「リーシアさん、やりましたね!」
「すごいっピー!」
「まさかリーシアも新しいスキルに目覚めたなんて言うなよ……」
「ふっふ~ん、俺は主を守る為に強くなるのだ!」


 取り敢えず、リーシアもステータスを見てみる。






 氏名:リーシア・オーガン
 職業:アタックガーディアン・Lv55
 情報:オーガ(変異種) 女 15歳 従者
 HP:22000(S)
 MP:1000(E)
 筋力:10000(S)
 耐久:10000(S)
 魔力:2000(E)
 俊敏:5000(B)
 器用:3000(D)
 魅力:3000(D)
 幸運:5
 アクティブスキル:【百武の守り(A)】【破壊の斧(A)】【鉄壁(B)】
 パッシブスキル:【身体強化(A)】【斧盾術(A)】【体術(C)】
 魔法スキル:
 ユニークスキル:【絆】【万斧撃ばんぷげき(E)】
 称号:【C級ダンジョン踏破者】


 【万斧撃ばんぷげき(E)】目で追えないほどの数の斧による攻撃を与える。その数は万とも言われる秘技である。






 分かっていたよ……サンルーヴと良い、リーシアと良い、何でこんなに簡単にユニークスキルを取得してしまうかなぁ~。
 ……まさか……セーラも一騎打ちをすると言わないだろうな?
 そろりとセーラの顔を見る。


「ん?どうしました?」
「いや、何でも」
「……私はしませんよ。リーシアさんやサンルーヴと違って防御も回避も人並みの私ではミスリルゴーレムと一対一なんかできませんから」
「あ、うん。そうだよな」


 セーラは常識人だけあって大丈夫だった。


「ですから拘束系の魔法を覚えたら挑戦しますね」
「えっ!?」


 前言撤回!
 セーラも他の嫁と同じだった!


 

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