異世界転移者のマイペース攻略記

なんじゃもんじゃ

028_盗賊対策2

 


 アンナの紹介で冒険者を3人雇うことにした。
 全員女性なのは何故だろうか、俺の周りには女性しか集まって来ないのか?


『マスター、ハーレムです!』


 インスが壊れてしまったようだ。
 冗談はさておき、3人の女性冒険者は大柄なレッジーナ、小柄なインディー、美人のフィナ。レッジーナは盾使いでタンクで豪快な性格だし、インディーは斥候職でよく喋る娘でフィナはこれでもかって程の美人でスタイルも良いのだが何と大斧を振り回すのだ。


 彼女たちの歓迎会を兼ねて食事会をしたら、3人とも泣きながら美味いと言って料理を平らげていった。確かにこの世界の料理はあまり美味しくはないが、彼女たちがどんな食生活だったのか少し興味を持ったが聞かないことにした。


 てか、この3人とアンナたちでパーティーを組めばバランスの良いパーティーになると思う。
 そう思って聞いてみたら過去に何度も臨時パーティーを組んでいたそうだ。
 アンナ3姉妹はこの赤の塔の街で生まれ育ったが、レッジーナたち3人は別の町で生まれ育って半年ほど前にこの赤の塔の街に拠点を移して活動していた。
 全員が女性と言うこともあり顔を合わせていると自然と親しくなりそれ以来危険な討伐依頼や護衛依頼などで臨時パーティーを組んで一緒に活動していたらしい。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ある朝起きると家を見張っている盗賊の数が5人に増えていた。


『マスター、これまでの情報から盗賊は最低でも21人は居ります』
『え? どうして分かったの?』
『お忘れですか? 【サーチ】で得た情報は人物のステータスを知ることができます』
『あぁ、なるほど。それで今まで現れた監視役が21人だったわけね』
『はい、21人で交代で見張っていますが、昨夜より見張りが増えていますのでもしかしたらそろそろ動きがあるかも知れません』
『了解。盗賊に動きがあったら教えてね』
『はい、お任せを!』


「皆、聞いてくれ。盗賊の見張りの数が増えたようだ。もしかしたら近々動きがあるかもしれない」


 朝食後、全員を集め情報の共有化を図った。
 ルルとデイジーの店員組には通常通り店を開けて貰い、アンナ、カンナ、イズナ、レッジーナ、インディー、フィナの護衛組6人に加えリーシアとサンルーヴにも交代で周辺の警戒をして貰う。
 そしてセーラには監視室で監視カメラからの映像を監視してもらう。
 俺はと言うと自室で魔道具の作成にチャレンジしてみる。


『インス、ウルドラゴの素材でスピードブーツを作ろうと思うけど、大丈夫かな?』
『残念ながらウルドラゴの皮は分厚くブーツには向きません』
『そうか、じゃぁ、予定通りブラックウルフの皮で作るか』
『しかし、ウルドラゴの皮で革鎧を作ることは可能です』
『革鎧……か』
『金属に比べれば重量が軽く動きも阻害されにくいのでマスター用とサンルーヴ用に革鎧を作るのも良いかと思います』
『ほう、ならばそうしましょうかね!』


 こうして俺はブラックウルフの皮からブーツを作ろうとしたが、これがまた大変で失敗の連続だった。
 先ずイメージが弱いのかブーツの形がちんばで右が25cm、左が27cmのような感じだし形がガタガタなのでとても履けたもんじゃない。もう形だけで20回以上は失敗をしている。
 しかも、靴底が上手くできない。木で靴底を作ったりしたがシックリ来ない。


『マスター、宜しいですか?』
『ん、何?』
『【通信販売】で地球の軍隊用ブーツを購入しそれを元にスピードブーツを完成させると比較的簡単だと思います』
『アーミーブーツを元にか……』


 インスの言う通り【通信販売】でアーミーブーツを10足購入し、試しに【魔道具作成】を発動させてみる。
 靴底はそのままに革の部分をブラックウルフの皮に置き換える感じだ。
 出来上がったブーツはこれまでで一番ブーツらしいブーツだったが、まだ履き心地が悪い。元々アーミーブーツなんて履き心地が良い物ではないが、それでも履いていて足が痛くなるような物では量産の意味がない。


『マスター、ブラックウルフの皮を鞣す工程と鞣し革をブーツに加工する工程を別々にしては如何でしょうか?』
『不慣れなので工程を1つ1つ個別に行うってことか』
『はい、慣れるまでは徐々に進めるのが良いでしょう』
『了解だ。1つ1つこつこつと段階を踏んで進めよう』


 その後、3足目でなんとか履ける物を作ることができた。工程を1つ1つ正確にこなすことの大事さが良く分かったよ。
 だが、この程度の物では売り物にもならない。もっと履き心地が良いスピードブーツを作る!


『………………できた』
『おめでとう御座います、マスター』




 種類:スピードブーツ
 説明:俊敏値を10%底上げする。




 出来上がったスピードブーツを見つめ感慨にふけっているとインスに引き戻された。


『マスター、盗賊が動き出したようです』
『襲撃か?』
『はい、周辺に13人の盗賊が集結しております。恐らくもっと増えると思われます』


 スピードブーツの作成に没頭していたらいつの間にか夜になっていたようで真っ暗になっていた。
 この付近は商店が点在しているので暗くなってもある程度は人の動きがある。しかし昼から比べると1割も人はいない。それほど人が激減するのがこの世界の夜なのだ。


「グローセさん、周辺に10人以上の武装した人たちが集まっています!」


 扉をバンと勢い良く開け放ちアンナが入って来ると吠えるように盗賊たちの報告をしてくる。急いでいるのは分かるけどノックくらいはして欲しい。


「分かった。ルルとデイジーは地下室に隠れている様に言ってくれ」
「了解!」


 扉を開け放ったままアンナは部屋を出て行った。そこまで急がなければならないとは思えないが、彼女としては悠長に構えていて準備が整わない状態で襲撃されることを懸念しているのだろう。


『マスター、盗賊は2人増え15人になりました』
『配置状況は?』
『正面に6人、裏口に9人です』
『盗賊は21人以上だよな?』
『はい。ただ、既に3人が初めて確認する者なので24人は居ると思って下さい』


 インスは正確に人数を把握してくれている。


『それと裏口にブラハムと言う者が居ますが、このブラハムはリーシア並みの強者ですので十分に注意をして下さい』


 リーシア並みの強者か、厄介だな。


 監視室に行くとセーラが通信機で皆に指示をしていた。


「アンナ、カンナ、イズナ、レッジーナ、インディーの5人は正面を。リーシア、サンルーヴ、フィナの3人は裏口を固めて下さい」
「セーラ、俺はどこに?」
「グローセさんはここで待機してください。盗賊の狙いはグローセさんだと思われますので前に出過ぎて殺されないようにして下さいね」
「りょ、了解だ。……そうだ、裏口にかなり強いのが居るぞ。名前はブラハムって言うらしい」
「っ!ブラハムですって!」


 セーラはかなり驚いていたが、どうしたんだ?


「……もしそのブラハムが私の知っているブラハムですと厄介です」
「リーシア程度の力はあると見て良いぞ」
「そうですか……では、ブラハムの相手はリーシアに任せ、他の者はサンルーヴとフィナに担当して貰いましょう……」
「裏口組の負担が大きいようだが?」
「ブラハムをリーシアが抑えている間にサンルーヴが殲滅すると思います」


 た、たしかにサンルーヴなら十数人の盗賊をあっと言う間に殲滅しそうだ……


 取り敢えずまだ時間があるようなので【通信販売】でホットドックと天然水を購入し皆に配る。満腹になると集中力が落ちるので軽く口にできる程度の量だ。


『マスター、更に10人ほどが近付いています。その中の1人は現在盗賊団の頭に収まっています』
『そうか、真打登場と言うわけだ。で、そいつは強いのか?』
『いいえ、ブラハム以外は似たり寄ったりで団栗の背比べ、マスターから見れば路傍の石以下です。う●こ以下です』


 インスの盗賊に対する評価は辛辣だった。


 

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