チートあるけどまったり暮らしたい
077 クリストフの将来設計
「あんた、やるわねっ!まさか人目を憚らずドロシー殿下を連れ去るなんて、思い切った事したわね。ボクはクリストフを見直したよ!」
「あの魔力を浴びた女生徒の2人が可哀想だったけど、クリストフ君がドロシー殿下をお連れした後でちゃんとカルラと僕で介抱したから安心してね」
「あんなの放っておけば良かったのよ。人の恋路を邪魔するような野暮な事をするから罰が当たったのよ!あ、本物の神様からの神罰だわね」
カルラが上手い事言っているけど、俺はあの後大変だった。
校内で膨大な魔力を放出した事で担任のブルーム先生に呼び出されこってりと絞られ、その後は生徒達から好奇の目で見られるわ、クララやクリュシュナス姉様からは一言一句漏らさず吐けと問い詰められるわ、この世界で初めての羞恥心を味わったよ。
え?
ドロシー様の返事はどうなったのかって?
・・・
・・・
・・・それを聞くのかい?
ドロシー様は・・・「少しは大きくなっていますのよ」って返してきたんですが、最初何を言っているのか分からなかったのだが、ドロシー様が片手を胸に当てているのを見て「はっ!」と気付いたのです。
だから慌てて「大きくなったからではない!」と否定したのですが、それが可笑しかったのかドロシー様は声を出して笑われ、ひざまづいていた俺を立たせてくれて返事をくれたんだ。
「私もお慕いしております」
俺は小躍りしたね。
文字は違うけど踊りましたよ。
ドロシー様の両手を取り2人でクルクル踊りましたね。
店員に怒られるまではね。
「ところで、ボク達の就職先はブリュト商会で良いのかな?お父様がどうするのか五月蝿くてさぁ~、教えてあげたいんだよね」
思いっきり話題を変えましたね。
流石、我が道を行くカルラ君だね。
「僕はクリストフ君に仕えるって言っちゃってるけど、良いよね?」
ペロン君も早いね。
まぁ、親に卒業を報告しなければならないのは分かるけど・・・君達、そんな時間がどこにあったんだい?
まさか、あの図書室の後にダンジョン踏破の準備をするって言って出て行った後で家に報告しに行ったのかい?
「そうだね、ブリュト商会の方が自由が利くけど、ブリュトゼルス辺境伯家の方が良いのかな?どの道、父上と卒業の事を色々と話さなければならないので今日の昼から屋敷に戻るつもりだったし、皆の事も相談してくるよ」
「あ、ボクはできればブリュト商会が良いな~。ブリュトゼルス辺境伯家への仕官だと箔がつくけど堅苦しそうだもん」
「そうだね。僕みたいな自由民だと大貴族のブリュトゼルス辺境伯家への仕官は腰が引けちゃうよ」
「2人の実力があればブリュトゼルス辺境伯家の魔術師団でも直ぐに頭角を現すと思うけどね。でもブリュトゼルス辺境伯家への仕官でもカルラ達にやってもらう事は決めているんだよね」
「ボク達はどんな事をするの?」
「それは見てのお楽しみで」
『え~~』
で、前話の冒頭に戻るわけです。
父上と進路や4人、そしてドロシー様の事を相談をしようと屋敷に戻ったのです。
そして先ずは父上が王立魔法学校に手を回して俺達を卒業させようとしている事を問い詰めたんだけど、核弾頭級の爆弾が投下されたわけです。
そう、ドロシー様の結婚の話が父上の口から飛び出したんですね。
「おい、クリストフ、大丈夫かっ!」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・父上?」
「しっかりしろっ!水だ、ユックリ飲め」
どうやら俺はあまりのショックで気を失いかけたようだ。
父上にもらった水を飲み一息ついた俺は寝かせられていたソファーに座りなおす。
「すみません、お騒がせしました」
「そんなことより大丈夫なのか?まさかまた病にでも・・・」
父上の最後の言葉を俺はかき消す。
「神である私が病に侵される事はありませんよ」
「・・・それなら良いのだが」
「それよりもドロシー様が何と仰いましたか?」
「ん?あぁ、ドロシー殿下とクリストフの婚儀の事か?」
はい、ストップ!
何でそんな話になっているのですか?
本人達は昨日、お互いの気持ちを確かめたばかりですが?
「その、・・・私とドロシー様の婚儀の話はいつから・・・?」
「お?・・・あああぁ、もしかしてセシリアから聞いていなかったのか?」
はい、ストップ!
母上は俺とドロシー様との結婚話を知っていたのですね?
てか、本人不在でそんな話になっているなんて貴族って怖いわ。
「そうか、聞いていないのだな。あれはもう4年近く前になるか・・・ドロシー殿下が態々ブリュンヒルへ赴かれクリストフを見舞ってくれた事があったのだ。その時にドロシー殿下がクリストフが臥しているにも関わらず私とセシリアに婚約をと願って来たのだ」
はい?
では、俺の記憶が無くなっている頃の話なのか?
「だが、その当時のクリストフは既に侍医にも見放されておったので、その事はクリストフが成人した時にと陛下と私でドロシー殿下を諌めたのだ」
そして俺が回復して今では神様になってしまったと・・・
ん?
ちょっと待てよ。
「私はまだ13歳です。成人には達していませんが?」
「陛下・・・がな、婚約だけでも直ぐにと申されてな・・・クリストフが軍事物資を提供した事で陛下の評価が上がったのだろう。ブリュト商会の財力、王立魔法学校の成績、そしてシルクスパイダーと、クリストフは陛下の興味を引き過ぎた」
ははは、俺のせいかよ!
だが、それであれば俺とドロシー様が付き合っても問題ないって事じゃないか!
棚からぼたもち。
いや、災い転じて福となす者の効果か?!
「ドロシー様との事は分かりました。今後の予定をお聞きしたいのですが?」
「そうだな。クリストフの卒業を知った陛下のお声掛りでクリストフは子爵へ叙爵されるだろう。卒業後直ぐの予定だ。叙爵と同時にドロシー殿下との婚約が発表され、ドロシー殿下が成人する頃に婚儀という運びになるだろう」
結局、俺は子爵にはなるんだね。
だが、王女を妻に迎えるのに子爵では爵位が低いのではないか?
てか、陛下も一枚噛んでいたんだね。
「その頃にはクリストフもブリュト島の開発に成功した功績で伯爵へ陞爵される予定だ」
確かに王女を迎えるなら伯爵ならば問題はないが、完全な見切り発車だぞ。
俺が功績をあげる前提の話って陛下と父上は何を考えているんだ。
俺が功績をあげれなかったらどうする気なんだ?
こう言うのが、捕らぬ狸の皮算用って言うんだよ。
「ブリュト島の開発が進まなくても陞爵はされるだろ」
さいですか。
「分かりました。では次は私の巻き添えになって飛び級して卒業する4人の事ですが、私の下で働いて貰う事にしましたので、ブリュトゼルス子爵家への仕官と言う事で良いでしょうか?」
「その4人はお前の直臣として子爵家で召抱えればよいだろう。何れは伯爵家を支える者となってくれるだろう。それからクリストフにはブリュトゼルスの分家ではなく新しく家を興してもらう。断絶している名家を再興するのでも良いが、分家では王女を迎えるのに風聞が悪いのでな」
新しい家ね・・・
俺的には家名はブリュトゼルスで良いのだがね。
まだ2年ほどだが、結構ブリュトゼルスに親しみを持っているし。
「断絶した名家でもまったく新しい家名でも家名は陛下より賜る形になる。希望があれば陛下にお伝えしよう」
その後、俺と父上は詰めれるところは詰め、今後の予定を確認していった。
勿論、話し合いの後に父上が母上に個室に連れ込まれお叱りを受け、そして数時間の後に母上が艶々の肌になっていたのは見なかった事にしよう。
また弟か妹ができるかな?
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