チートあるけどまったり暮らしたい

なんじゃもんじゃ

073 思惑

 


 クララの特訓は順調だ。
 この調子なら1月の単位修了試験で魔物学の上級単位が取れるだろう。


 ドロシー様も順調に成長をしている。
 何が成長しているのかって、言わなくても分かるでしょ?
 俺が加護を与えて補正(大)が付いているものですよ。
 日に日に大きくなっていくので、周囲の目は懐疑的だけど俺達はその理由を知っているので生温かい目で見ています。
 それと最近はドロシー様のツンデレもなくなってしまって、少し寂しい気もするけど今のドロシー様も可愛いから全然OKだ。


 ゴホンッ。
 ドロシー様も優秀で筆記科目は魔物学とバルムス古代語を残しているだけで、他は上級単位を取っている。
 それに初級ダンジョンも踏破済みなので実戦講座の単位も問題ない。


 で、俺達のパーティーの上級ダンジョンの攻略も佳境に入っており、毎回ランクBの魔物を大量に倒して冒険者ギルドの出張所へ死体を持ち込んでいるので校内だけではなく、校外でもかなり噂になっているらしい。
 まぁ、ランクBの魔物なんて一流冒険者のパーティーくらいしか討伐できないのだから当然と言えば当然なんだけどね。
 それとこれは冒険者の話で軍隊は別だからね。


 魔物の部位を冒険者ギルドに売った金が大変な事になっている。
 ペロンなんかはもう王都で店を出せるくらいは余裕で稼いでいるはずだから、卒業後は本当に店でも始めるんじゃないだろうか?


 そんな11月も終わろうとしているある日、俺は父上の執務室で今後について話し合っていた。
 何を話し合っているかと言えば、ブリュト島の開発が順調なので父上を視察がてらブリュト島に連れて行ったら、父上が入植を考えるべきだと言い出したのだ。
 確かにゴーレムを使い色々と開発を進めて田畑にも余裕があるけど、入植なんかしたら管理が大変だよね。
 学校もあるし、ブリュト商会もあるし、ブリュト島で入植者の管理までする事になったらそれこそ寝る時間もなくなってしまう。


 否定的な考えの俺と、開拓推進派の父上で意見が割れているわけですよ。
 そこに父上は必要だったら人を出すって言ってるし、入植の人も父上が集めると言っております。


「父上、もしかしてブリュトゼルス辺境領の各街のスラムの人を送り込もうなんて思っていないでしょうね?」


「なっ!なんの・・・事だ・・・」


 正解だったようです。
 名目上、ブリュト島はブリュトゼルス辺境領に組み込まれているのでスラムの人を入植させ開拓が進めばブリュトゼルス辺境伯家の税収が増えるシステムになっている。
 しかもスラムの人口が減るので街の治安が多少は良くなると言うオマケ付きだ。
 今のままでは俺の私有地ってだけで、殆ど生産的な話にならないので父上としてはこれを機に入植を進めたいってわけですね。


「屋敷の管理と田畑の管理で奴隷を何人か置こうとは思っていますが、入植は私が学校を卒業してからでも遅くはありません。だから今は諦めてください」


 断る時はビシッと断らないとね。
 父上だからってブリュト島を自由にはさせませんよ。
 まぁ、今のままでは誰もブリュト島には入れないのですけどね。
 なんたってブリュト島は断崖絶壁に囲まれた天然の要塞で長きに渡って人を拒んできた島ですからね。


「では、奴隷を多めにして生産を増やすと言うのはどうだ?勿論、奴隷に関しては私が用意しよう」


 何でこんなに生産を増やそうとするんだ?
 ブリュトゼルス辺境領の食糧生産量は神聖バンダム王国内でも群を抜き良いはずだから父上がここまで拘る理由が分からないな・・・


「その話はまたの機会に」


 切って捨ててやった。
 さて、父上の事は放っておいて、今日は久し振りにブリュト商会に顔を出しますかね。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺はお爺様と訓練をしているフィーリアに声を掛け、フィーリアと護衛騎士を引き連れて店を目指す。


 今のブリュト商会は体制を一新している。
 と言っても会頭が俺で、副会頭がフィーリアってのは変わっていないのだけどね。
 じゃ、何が変わったかと言えば、店長をフィーリアからプリエッタに交代させている。
 プリエッタは父親が病気だったので薬代の借金で奴隷となったのだが、俺の奴隷となりブリュトゼルス辺境伯家に出入りしている薬師を紹介してやり、今では父親も大分良くなっているそうだ。
 俺が治してやれば簡単なのだが、それだとプリエッタもフィーリア同様に俺への恩を感じ過ぎ宜しくない状態になりかねないので自力で何とかできるように道筋だけ用意してやった。
 頑張り屋さんなのでフィーリアの後任に丁度良いかなと思って店長に抜擢し、奴隷からも解放している。
 勿論、奴隷として購入した金額の2倍の金は用意できないので、俺への借金と言う形で解放して毎月少しずつ返済をしてもらう。


 それから、新しい役職をつくり、副店長としてマーメル、製造主任としてセルカ、警備主任としてクランプを抜擢しそれぞれに権限と責任を持たせている。
 この3人も奴隷から解放しており、プリエッタ同様借金としている。


 他の奴隷たちにも解放を持ちかけたが、誰も手をあげなかった。
 どうやら俺の奴隷は超厚遇奴隷で平民以上の暮らしができると評判で、更にブリュトゼルス辺境伯の息子である俺の奴隷に手を出す人間も滅多に現れないので安全が確保されているらしい。


「来年の1月に販売する予定の新製品なんだけど、1つ目はマジックバッグで容量は200Kgで販売価格は100万S。2つ目はサンダーボルトリングで販売価格は3万S。3つ目はアイスウォールリングで販売価格は3万Sにしようと思う」


 魔術師と店員に新製品について確認をする。


「マジックバッグは販売価格をもう少し高く設定される方が良いと思います。これだけ便利なアイテムですのでそれでも買われる方は多いと思います」


 意外にもセルカがマジックバッグの価格引き上げを提案してきた。
 セルカはあまり価格の事は言わないと思っていただけに新鮮な感じだ。


「その理由は?」


「はい、マジックバッグは容量が200Kgとあまり多くはありませんが、何と言ってもマジックバッグの中では時間経過がないと言う事が重要です。この性能があれば遠方より腐り易い食材などを運搬する事も容易になります。100万Sでは安いと私は思います」


「確かにセルカの言う通りだね。ではマジックバッグの値段設定に関してはセルカに任せるよ」


「えっ? あ、有難うございます」


 セルカの意見に他の者たちも同意を示しているし、自主性ってのは大事なので少しずつこう言う事を任せて行ければと思っている。


「他にないかな?何かあればプリエッタに相談するようにね。プリエッタで手に余るようならフィーリアを頼るようにね」


『はい』


 それ以外には意見がなかったので俺は寮に、フィーリアは屋敷に戻った。
 この店だと大分手狭になってきたな。
 もう少し大きい店がほしいな・・・社員寮の1階が店舗として使えたよな・・・この際、移転でもするかな。




 

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