１年前の出来事

『ミラザル王国』
　山と海に囲まれ気候温暖、観光地として臨国からも人が来て風光明媚なこの国で１年前、『ある騒ぎ』があった。
　当時、王太子だった『カクサル・ミラザル』が婚約者だった『エミーナ・レオハルト』公爵令嬢との婚約破棄を宣言し『ルミーナ・ライオット』男爵令嬢を新たに婚約者とする、と宣言した。
　曰くカクサル王太子がルミーナ男爵令嬢に惚れエミーナ公爵令嬢は嫉妬して様々な嫌がらせをし、挙げ句の果てにルミーナ男爵令嬢を殺害しようとした、らしい。
　結果としてエミーナ公爵令嬢は婚約破棄を受け入れ、レオハルト家から勘当され行方知らず、となった。
　庶民の見方は様々でルミーナを『玉の輿』、『婚約者から奪い取った悪女』、エミーナを『悪役令嬢』、『悲劇の令嬢』と極端な評価を受け、その原因を作ったカクサルについては余り良い評判が無かった。
　そんな話は次第に薄まっていくと同時に話題にあがったのは半年前にオープンしたある雑貨店。
　店は小さめだが香水や化粧品、女性物の小物が充実、品質も良く価格もリーズナブルとあり評判はうなぎ登りだ。
　客の大半は女性だが中には男性客もいて彼女へのプレゼントを探して来る。
　更に評判をあげているのが、この店の店長である。
　彼女は歳が若いにも関わらず客の要望を聞いてオススメの商品を紹介する。
　その商品を買うと拗れていた関係が良くなる、とクチコミで話題になりオープンから客が絶え間なく来ている。
　その女性が『エミーナ・レオハルト』、今は『エミー』と名を変えているが、元公爵令嬢だ、という事は余り気づかれていない。
　