漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第27話 親失格と大爆発


「まっ!!」

アルトを止めようとした瞬間俺の視界の景色は一瞬にして変わり、俺達は全員さっきまでいた部屋にいた。

「あ!アルトォォォォォ!!」

しかし声は届かなかった。
周りにはあの場にいたのであろう騎士団兵士や使用人達が全員倒れていた。

「エ、エル。アルトが、アルトが!!」

「俺が・・・俺がもっとしっかりしてれば!」

俺は床を叩くが、そこには傷ができるだけ。

「くそぉ!くそぉ!!そうだ!まだここは王城の中!これからでも!」

その時、凄まじい振動が王城を襲った。
俺にはすぐわかった。アルトとあの化け物が戦っているのだと。

「なんで・・・!なんで動かないんだ!俺の足は!」

いや、分かっている。これは恐怖だ。
いくら心が行こうと思っても身体が拒否している。

いけない・・・行ってはいけない。
行ったら死ぬぞ・・・と。

身体が言っている。

けれど、行かなければ・・・
行かなければアルトが死んでしまう・・・

「え、エル・・・」

声のした方を見るとアイリスが泣きながら俺の方を見ていた。

「だめ・・・エルが行っちゃったら・・・」

「アイリス・・・」

「死んじゃうよ・・・」

「くっ、くっそぉぉぉ!」


結果俺はアイリスたちを選んでしまった。
1人であの化け物と戦っているアルトをほおって俺はアイリスを他の家族を選んだんだ。

周りには何人もの人な気絶していて、今目が覚めているのは俺だけだった。

「とりあえず・・・この人達を移動しないと・・・」

けれど1人で全員を移動するのは難しいので何人かを起こすことにした。

メイドやヴァイス達を起こしているとセバスさんがやって来た。

「エルヴィン様、これは一体」

「化け物が・・・今、アルトが戦ってる・・・みんなをここから移動しないと・・・」

「・・・分かりました。とりあえず私の空間魔法で全員を移動させましょう」

それから目が覚めた何人かのメイドとヴァイス達でその場にいた人たちを全員訓練場の反対側へと避難させた。

「ここならば大丈夫でしょう」

「あ、ありがとうございます・・・」

「・・・・・・私は様子を見て参ります。エルヴィン様はお休みください。先程から凄まじい魔力のぶつかり合いを感じます。」

「俺は・・・俺は・・・」

「・・・失礼」

「がっ!」

俺の意識は悲惨そうに見るセバスさんの顔を最後に途切れた。




〜〜セバスチェンsideーーー

「執事でありながら貴族当主に手を上げるなど・・・しかしこれは仕方の無いことです。あなたは今休むべきだ。さて、私はもう一働き・・・」

その時王城の反対側まで轟く雷鳴と閃光が飛び散った。

「こ!これは・・・!!」

アルトが雷滅閃光タケミカヅチを放ったのだ。
凄まじい魔力エネルギーと衝撃波であたりは吹き飛ばされた。

「く、皆さんどうやら無事のようですね。しかしこれは・・・・・・」

王城は半壊していた。

「一体何が・・・」

私はとりあえず爆発の中心地に向かうことにしました。

あたりは瓦礫でボロボロになっていて見るも無残な光景だった。
その真ん中に少年が2人倒れているのを見つけた。

「彼は・・・確かアルベルト君でしたね。もう1人は・・・ペッパー子爵の長男でしたか?何故こんな所に・・・」

考えても仕方がありませんね。とりあえず安全な場所まで運ばなくてはなりません。

アルト君を運ぼうとして触ろうとした時私はあることに気がつきました。

「これは一体・・・どうやったら魔力回路がこれほどまでボロボロに・・・」

アルト君の身体にある魔力回路がとてもボロボロになっていたのです。
この様子ではもう魔法は・・・・・・

「身体もボロボロですね。さすがに移動するのは危険そうです」

「セバス殿これは一体・・・」

「随分と遅かったですね。アルペリーニ様。」

「すまない。それでこれは」

「詳しいことは後で話します。まずはこの子とあの子の治療を」

「わかった。おい!第4のヤツらを呼んでこい!医療部隊を連れてこい!」

「「はっ!」」

「王城は半壊、訓練場は既に無い。とてつもない魔力を感じて急いできたが・・・」

「私も何があったのかはよく分かりません。しかしエルヴィン様はこの子供が化け物と戦っていたと」

「化け物?」

「ええ、それが何なのかは全くわかりませんが、彼はとても怯えていたようでした」

「あいつがそこまで・・・それじゃあその子は・・・」

「ええ、彼の四男。アルベルト君です」

「そうか、その子がな・・・」

どうやら彼のことを何か知っているようですね。

「ご存知で?」

「いや、その子はあいつの養子でな。5年前に森で拾ったらしい。その時に一度会っているがそれきりだ」

「そうですか」

その後、第四騎士団の医療部隊が来て2人を応急手当して運びました。



それからはハドルフ様が目覚めた後、王城が半壊しているのを見て顎が外れそうになり、クロスフィード家はみんな疲れているため、屋敷に全員返した。特にエルヴィンとアイリスの精神消耗が激しかったそうだ。

また、アシュレイ王女も精神消耗が激しくしばらく眠っていた。

結果その日は何も解決せずに終わったのだった。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品