漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第15話 白皇剣と黒皇剣



「・・・石の剣・・・?」

そう、石で出来た2本の剣が入っていた。

「石で出来た剣なんてあるの?」

「知らんよ。しかし、まあ、あるんだからあるんじゃねえか?」

「それでこの剣は?」

「わからん」

「は?」

「だから、わかんねえんだよ。さっきみたいに簡単に開けることは出来るんだが、石だし、持つことも出来ねえんだ。」

「鑑定は?」

「出なかった。鑑定したやつの鑑定レベルが低いのか、鑑定出来ないものなのか。全くわからん」

「鑑定出来ないものなのなんてあるのか?」

「さぁ、それこそ分からん。よくあるのは、自分よりも強い人を鑑定しようとしたけど見れなかったってのはあるが、剣がそれと同じようになるとは思えねえしな。」

「んー、ちょっと鑑定してみてもいい?」

「鑑定スキルも持ってるのか。まあ、いいぞ?無駄かと思うけどな」

「まあ、じゃあ失礼して、」

と言ってアルトは通常の鑑定ではなく神眼を発動して鑑定する。

すると・・・

『やっと適合者が現れましたか?』

『全く、何年待たせんだよ』

「っ!?」

突然脳内に直接話すかのような声が聞こえてきてアルトを驚かせる。

「誰だ?」

「アルト様?」

『おいおい、ひでぇじゃねえか。目の前にあるだろ?』

『それでは分かりません。適合者よ、目の前に剣はありませんか?』

「これか?」

と言ってアルトは剣を撫でる。

『はい。今私に触れました。我々はその剣自体なのです』

「剣が?」

後ろでリリスとガリウスが何やってんだ?こいつという表情をしている。

『そう。私達は意思精神体武装インテリジェンスウェポンと呼ばれる意思を持つ剣です。』

『俺達は適合者が現れるのを待って封印されていた。そしてその適合者と言うのは【神眼】を所持しているやつの事だ。さらに、解除条件は【神眼】で俺達を鑑定すること。』

『そしてあなたは見事【神眼】を持ち、我々を鑑定しました。』

「じゃあ俺が適合者?」

『そういうことになります。』

「どうすればいいの?」

『まずは我々を持ってみて下さい。そうすれば我々は本当の姿を現せるでしょう。』

言われる通りにしてアルトは2つの剣を両手に持って見る。

すると剣にヒビが入っていき、片方の剣からは真っ白な光が、もう片方からは全てを塗りつぶすかのような黒い光が溢れて、視界を埋め尽くす。

そして光が収まった時、アルトの両手には鞘に収まった純白の剣と漆黒の剣があった。

「あ、アルト様?これは?」

「うーん。どうやら選ばれたみたい」

「凄いです!」

「まじか!」

「さっきなんか言ってたのはなんだ?」

「なんか喋れるみたいなんだよね。」

「喋れる?!」

「そんな剣が存在するんですね。」

「まあ、俺にしか聞こえないのかもしれないけど。」

「それはすげぇ!坊主!この双剣は坊主にやろう」

「いいのか?」

「ああ、どっちにしろ誰にも使えなかったしもしかしたら廃棄になってたかもしれないしな!使える奴が現れたなら使ってやるべきだ!」

「そうか・・・ありがとう。」

「いいってことよ。それでリリスちゃんはどうする?武器の整備終わってるけど」

「また今度取りに来る。それにそろそろ戻らないと旦那様が心配してしまうので」

「そうか。じゃあ、またな。坊主、またいつでも来てくれよ?」

「ああ、またくるよ。」

アルトは純白の剣と漆黒の剣を持って帰る支度をする。

「それじゃあガリウスさん。これで失礼します。」

「ほいよ、じゃあな!」

「さよなら!」

アルトとリリスは屋敷に帰って行った。

「しかし、アルト様、さすがにその剣を持ったまま、帰ってしまうと旦那様に何を言われるかわかりませんね」

「そうだね。じゃあ閉まっておくか。」

アルトは2つの剣を無限収納に閉まった。

「アイテムボックスですか?」

「あ、うん。そんな感じ。」

「では、商業神様の加護を頂いたのですね。」

「まあね。いろいろと」

「そうですか。では、将来は商人に?」

「いや、冒険者になりたいかな?この世界をもっと見てみたいし」

「そうですか。では、私も一緒に冒険に行けますね」

「そうだね。機会が会ったら行こうか」

「はい!」

「あ、それと剣のことは秘密にしてね?」

「もちろんです」

その後アルト達は屋敷に帰って夕食を食べ各自の部屋に戻って行った。


「さて、そろそろ話を聞いた方がいいかな?」

アルトは無限収納から2つの剣を出す。

「二人とも聞こえる?」

『もちろんですよ。さすがに急に無限収納に入れられた時は驚きましたが』

『一言ぐらい言ってくれると助かるぜ。』

「悪かったな。それで、2人には名前はあるの?」

『もちろんです。私の名前は聖剣白皇剣』

『俺は魔剣黒皇剣』

『我ら2人を合わせて聖魔滅神剣と言います。』

「聖魔・・・滅神剣?神を滅ぼす剣ってことか?」

『そうですね。それよりもまずは人化してもよろしいですか?』

「へ?人化?」

『それじゃあ人化するぜ』

「え?ちょ!」

『『人化!』』

2人が呪文を唱えた瞬間、アルトの目の前にある剣が輝きながら2人の人間の姿になる。

「お待たせしました。これが人間の姿になった私達です。」

最初に話し始めたのは白い髪、金色の瞳を持った女性の方だった。

「久しぶりにこの姿になったな。しかしまあ、今回のマスターはまだまだ若いな」

次に話し始めたのは黒い髪、赤色の瞳を持った男性の方だった。

「もしかして、白皇剣と黒皇剣か?」

「はい。私が白皇剣」

「俺が黒皇剣だ。よろしくな」

「マジか・・・」


突然のことで困り果てるアルトだった。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品