俺の許嫁は幼女!?

白狼

5話 事故現場を見ました

 幼女の許嫁にあってから六日ほど経った。
 だが、そんなに時間をかけても俺たちの距離が近づくことなんて一切なかった。





「母さん、今日も行くの?」
「当たり前でしょ。家の跡取りを取らなくちゃいけないんだから。」
「家の跡取り……ねぇ。」




 家同士の問題に子供を巻き込むなよ。
 そして数十分後。




「………」
「………」




 俺と静香は、また押し黙ったまま座っている。
 俺は、この数日間どうにかして少しくらい仲を良くしようと頑張って声をかけたのだがこいつ、全く反応すらしない。


 

「………あんた、いつまで家に来る気?」
「俺も来たくてきてるわけじゃねぇよ。まぁ、そろそろ学校も始まるからここに来ることは少なくなるだろうな。」
「あら、そう。」
「お?寂しいのか?」
「冗談言わないでちょうだい。ようやくあんたの顔を見なくて済むと思ったら清々するわよ。」
「ああそうかよ!こっちもこんなクソ生意気なガキに合わなくて済むと思ったら清々するわ!」
「ガキって何よ!?」
「ガキはガキだろ?このお子ちゃま。」
「っ!うるさい!私は、もう子供じゃないってずっと言ってるでしょ!?」
「ああ、そうかい、そうかい。」
「あんたなんて大っ嫌い!」






 それからはまた再びこの場に沈黙が訪れた。
 はぁ、早く帰りたい。

 ガシャン!!!

 俺がそう思った瞬間、外の方から大きな金属と金属がぶつかる音がした。





「何!?」
「なんだ!?」




 俺たちは、一斉に立ちが上がり何が起こったか外に出て確認する。
 外に出ると大勢の人たちが一箇所に集まっている。



「何が起きたんですか?」




 俺は、その人集りの1人に何があったかを聞く。




「交通事故があったのよ。このお屋敷から出ようとした車に大型トラックがぶつかってしまったらしいの。」
「そうなんですか、教えていただきありがとうございます。」




 俺は、教えてくれた人に一言お礼を言ってから人混みの中を進もうとする。





「痛っ!ちょっ、押さないで。」





 だが、後ろの方で聞き覚えのある声が聞こえる。
 振り返ると人混みを進むことが出来ない静香がいた。
 あの小さな体だ。この人混みを進むのは難しいだろう。
 ………ったく、仕方ねぇな。





「ほら、静香!捕まってろ。」
「え!?」




 俺は、静香の腕を掴み俺の方へと引き寄せた。
 そして静香が進みやすいように道を作る。




「ちょっ、あんた、なんのつもり!?」
「うっせぇーよ。お前、自分の家の人が怪我してないか心配なんだろ?」
「べ、別にそんなんじゃないわよ!ただ、何があったか知りたいだけよ。」
「はぁ、相変わらずのツンデレだな。」
「はぁ!?私は、ツンデレなわけないでしょ!?」
「はいはい、ほら、あとすこしで事故が起こった場所が見れるぞ。」





 俺たちは、ようやく人混みを抜けて事故が起こった場所が見れるようになった。
 そして俺たちの目の前に飛び込んだ光景は





「「っ!!」」





 大型トラックがこの屋敷の高級車の上に乗っかってる状態だった。






「あ、あれは!?お父様の車!」
「な、なに!?和博さんの?ってことはあれに乗ってるのって………」
「お父様!!!」
「おい!やめろ!」





 静香は、和博さんの車へと走り出そうとする。
 そこをなんとか俺は、腕を掴み阻止した。




「何すんのよ!?邪魔しないで!」
「お前こそ何してんだ!?あんなところ行って大怪我じゃ済まないんだぞ!?」
「うっさいわよ!それよりもお父様が!?」





 静香は、俺から腕を離させようとして自分の腕をブンブンと振り回す。
 ここで俺が腕を離してしまえばこいつは絶対あの車へと走り込むだろう。
 そんなこと、絶対に阻止しなくちゃいけない。
 だが、こいつの気持ちを思うと……





「静香!ここは俺に任せてくれ!」
「はぁ!?何訳わかんないこと言ってるの!?早くこの手、離しなさいよ!」
「ああ、離すよ。だが、お前を行かせるわけにはいかない。」
「あんたの意見なんてどうでもいいの!早く離しなさい!」
「静香!!一旦落ち着け!お前は、ここに残ってろ。」
「何よ!?何がしたいっていうの!?」
「お前のお父さん、俺が助けてやるって言ってんだ!」
「っ!何バカ言ってんの!?無茶よ!」
「おいおい、お前がそれ言うなよ。でも、無茶でもなんでも俺は、行くよ。だって、お前の大切なお父さんなんだろ?」
「っ!」





 俺は、そう言って静香から手を離した。
 静香は、手を離しても動こうとはしなかった。
 俺は、それを確認して大型トラックの下にある和博さんの車へと走り出す。
 俺が車に向かう中、周りの人は、俺を制止しようと声が聞こえるが俺は、それを無視して車に近づいた。




「こりゃ本当にひでぇな!無事でいてくれよ、和博さん!」

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