“無能”から始まる世界最強

つかっちゃ

No.37 楽なダンジョン攻略3

エマは様子見とばかりにじっとしていた。するとドラゴンがしびれを切らしたのか口を大きく開け、また黒の光線の発射準備を始めた。しかも今回はさっきの威力の比にならないほどのパワーを込めている。
エマは直感でやばい!と感じたのか発射前にさっと横にズレたが極太の光線が発射され、それが右の足の付け根を掠めて表面がそれなりに深く分解・・された。


『っ!!い……痛い………』

と足の痛みに耐えるエマ。そこにエマの背中に乗ってきたリルはきゅっと鳴くとエマの怪我をした場所を光の膜で覆った。すると、なんと分解された部分が少しずつ回復しだした。

『リルちゃん、助かったよ!ありがと!』
「きゅぅ〜」

そういうとエマは背中に乗っているリルを鼻先でつつき、雅久の方に行くように言った。そして覚悟ができたのか前を向くと尻尾が赤っぽい光を帯びた。魔法を放つのかと雅久は思ったが魔力の流れを感じ取れない事に気がついた。

「なるほどな。これが妖術か」

そう、狐人族がもつ固有スキルである“妖術”だった。妖術は魔法には発動するまでの時間や効率、威力が落ちるがその代わり魔法のように無効化、防御されず、そのままの100%のダメージを与えられる。

エマは尻尾の周りにいくつもの火の玉、“狐火”を発動した。普通の狐人族の狐火は大きいものでも直径10cm程だが、先祖返りで尚且つ本能解放状態のエマだと一つ一つが1mを超える。

『狐火よ!行け!』

そう言うと一気にドラゴン目掛けて飛んでいった。ドラゴンも嫌な予感がしたのか避けると一個だけ地面にぶつかった。その瞬間、地面が赤熱化しマグマとなった。その間も他の狐火はドラゴンを追い続ける。しかしエマも操りながら色々と考えて居たのか壁際に追いやるように誘導し、遂に捉えた。
ドラゴンを180°囲むように留まったかと思うと今度は爆ぜた。

ギュァアアアアアアアアアアアアアア!!!!

その中からドラゴンの断末魔が聞こえてきた。爆発した時にできた煙が収まるとところどころ赤熱化してなんだかドロっとしているドラゴンだった何かが残っていた。

『なかなか手ごわかった………です……ね』

そう呟くと狐の体が光り、もとの姿に戻るとぐらっと倒れそうになった。なので雅久は瞬間移動のような速度でより、抱えてやった。

「なかなか良かったぞ。よく頑張ったな」
「…へへ……うれしいです…」

そういって気を失ってしまった。






─────悲鳴が響いている。
周りの人々は私を見て怯えている。その人混みの中に目を巡らせて唖然とした。そこには父と母が立っていて、怪物を見るような目でこちらを見てくる。
──そんな目で見ないでよ……ねぇ!!!
そう思うと体が勝手に動いてしまった。そしてあろう事か親に向かって爪をかけようと呼び込んでしまった。自分でも制御が出来ずに涙をぽろぽろと零しながら。
するとエマの目の前にぱっと人影が入り込み全身で攻撃を受けて止めた。

「ぐぅっっっ……え……エマ…親を……牙をかけるんじゃ……ないよ…!へへ……お前は……私の……かわいい…かわいい……ま……ご……なん……だから……」

そういって息を引き取ったのはエマの祖母だった。エマは大のお婆ちゃんっ子でいつも祖母に甘えてばかりだった。しかし、その祖母を自分の手で殺してしまった─────




「っ……ここは…」
「エマ起きたか。泣いてるぞ、ほら」

そういって雅久はハンカチを渡してきた。

「ありがとうございます…」
「どうしたんだ?」
「ちょっと…昔の夢を見ていました……えと…その…」
「言いにくいなら別に言わなくていい」
「…はい…」

そうして、無事に(?)ドラゴンを討伐できた。

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