世界に復讐を誓った少年

やま

119.死国軍

「……起きなさい、ハルト!」

「わぁぁっ!!? な、なに!?」

 突然耳元で叫ばられる少女の声。夢の世界に過ごしていた僕は、その大声にびっくりして飛び起きてしまった。慌てて辺りを見ると、両手を腰に当てて怒っているステラの姿があった。

「お、おはよう、ステラ。朝からどうしたの?」

「どうしたの? じゃないでしょ! 今日は近くの森でお花を取りに行く約束をしていたでしょうが! それなのにぐっすりと眠って!」

 顔をグイグイと近づけて来て怒るステラ。そ、そうだった、今日はそんな約束をしていたっけ。すっかりと寝過ごしてしまった。

 今日は母さんは仕事でいないから朝は自分で起きなきゃって昨日の夜は思っていたのだけど……やってしまった。

「ご、ごめんステラ。起きなきゃって気持ちはあったんだけど……ごめん」

「……もうっ。わかったから早く起きて。今から行くわよ!」

 ステラはそれだけ言うとのしのしと部屋から出て行った。僕は慌てて家を出る準備をする。あまりゆっくりしていると、ステラがまた乗り込んで来るからだ。

 僕は急いで服を着替えて、家を出る。家の前にはステラとリーグが待っていた。僕は謝りながら家の外にある桶の水で顔を洗う。

「ったく、お前は本当に朝が弱いな、ハルト」

 そんな僕を見て苦笑いするリーグ。ははっ、何も言えないや。それから、急いで母さんが作って置いておいてくれた朝食を食べて、3人で村を出る。近くの森は魔物は出る可能性があるけど、村が近いため子供だけでも出ていい事になっている。

 森に着いた僕たちは、ステラが気にいる花を探し歩き回る。楽しそうに花を探すステラに、それを笑顔で見るリーグ。平和な時間が続く。

 ……だけど、気が付けば村人たちに囲まれていた。幾ら叫ぼうともナイフで体中を突き刺してくる村人たち。ステラやリーグも。そして、目の前で殺される母さん。

 僕は叫びながら母さんへ向けて手を伸ばす。同時に崩れる世界。僕の伸ばした手は母さんに届かず、僕は暗闇の中へと落ちていった……。

 ◇◇◇

「ハルト様!!」

 ……目の前には僕の伸ばした手を掴むミレーヌの姿があった。……そうだ、復讐にもひと段落がついたからミレーヌにみんなを呼びに行ってもらっていて、その間寝てしまったんだ。

 ミレーヌは起きた僕を見てホッとした後、辛そうな顔をして抱きしめて来た。

「ハルト様、何があろうと私はハルト様の側にいますから!」

 復讐にひと段落ついて気を抜いてしまったせいで変な夢を見てしまった。そのせいで僕は魘されていたのだろう。ミレーヌに心配をかけてしまったみたいだね。

「ごめんね、ミレーヌ。心配かけて。少し嫌な夢を見ただけだよ」

 昔のもう必要の無い夢をね。僕が笑顔を向けると、離れていくミレーヌ。僕も座っていた玉座から立ち上がる……って、痛ててて! 硬い玉座で寝ていたから体が痛い。体を伸ばすとポキポキと音が鳴る。

「大丈夫ですか、ハルト様?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっと硬い椅子で寝ていたからあちこちが痛くなっただけだから。それよりも集めてくれた?」

「はい、皆待っております」

「それじゃあ入れて」

 ミレーヌに指示を出すと、玉座の間に次々と集まってくる配下たち。

 聖黒首無騎士 リーシャ・アインスタイン

 レイス・ウィザード クロノ

 ノーライフキング ネロ

 メストア王国女王 アークフィア・メストア

 黒騎士 マルス

 精霊魔術師 ティアラ

 メルキューア王国女王 エリシネーゼ・メルキューア

 鮮血死竜人 レルシェンド・ドラギオン

 ヘルエルフ エルフィオン・メルキューア

 グレンベルグ帝国女帝 エリーゼ・グレンベルグ

 七星天女
 デスピアアルラウネ レミネイア
 悪食 マナ
 黒死大鬼王 ルクア
 デストロスライム ケイシー・ネイシー
 デスサイスアントクイーン デューア
 ??? エンリエ

 魔道人形 ネクロフィア

 死炎竜王 ベルギウス

 暗黒魔王 ベアトリス・エステキア

 魔聖鍛治師 ヘパイネル

 死神頭領 ゼロ

 僕の配下たちが一同にこの玉座の間に集まってくれた。そして玉座に座る僕の左斜め前に立つミレーヌに、伏せるロウが右側にいる。ベルギウスに関しては玉座には入らないから、玉座から繋がっている庭にいてもらっている。

「よく集まってくれたね、みんな。ここに集まってもらったのは、死国パンデモニウムとして聖王国には宣戦布告した。直ぐに戦争が始まるわけじゃ無いだろうけど、それに向けて国として軍を作っておきたくてね。
 まずは1番数の多い軍、死霊軍。これを率いるのはノーライフキングであるネロ、君に任せるよ」

『ハッ、承リマス』

 数として40万近く。昔に比べたら大分集まったね。

「次にリーシャ、君には首無騎士団を率いて貰うね」

「ああ、任せてくれ!」

 大きな胸を張り、堂々と宣言するリーシャ。デュラハンは3000近く。数は死霊軍に比べれば少ないけど、1体の強さが違う。

「エリーゼには帝国として参加して貰う。フィアとエリシネーゼにはその補佐をよろしく。ただ、エリーゼ、補佐といっても対等だからね?」

「もちろんわかっております、ハルト様」

 帝国はまだ立て直している途中だけど、預けている死天使のおかげで、周りの国々を属国としている。これを合わせればせい王国との兵力差は殆ど無くなるだろう。

「そして、クロノとヘパイネルの共同制作で作られた新たな兵士、魔道機兵エクスマキナ。これをネクロフィア、君が率いるんだ。兵としての知識は無いと思うからわかる者を補佐につけるよ」

「……」

 ネクロフィアは何も喋らないまま、スカートを掴みお辞儀する。魔道機兵はクロノとヘパイネルが面白おかしく作った魔道具だから、普通の死霊などにはつけられない機能があったりする。それがハイペースに作られて500体ほど。

 どこまで使えるかはまだ実践で使っていないためわからないけど、役に立つはずだ。

「ゼロには悪魔の影ドッペルゲンガーを渡すから、偵察や暗殺などを頼むよ。取り敢えず軍としてはこんなものかな。ミレーヌは今まで通り僕の補佐、ベアトリスも魔王の知識で僕を助けてほしい。七星天女はミレーヌの指示に従うように」

 ざっとこんなものだろう。これで取り敢えずの準備は出来た。後は聖王国の出方と、周辺諸国をどうするかだね。

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