世界に復讐を誓った少年
113.生け贄
「……儂の耳が歳のせいでおかしくなったのだろうか? すまないが、もう一度報告して欲しい」
「……はっ、数ヶ月前に新たに生まれたアンデッドのダンジョンが暴走した模様。ダンジョンがあった町は壊滅、近くの村が8つ、町が3つ巻き込まれて壊滅しました。今もなお王都に向けてアンデッドの大群が進行中との事です」
「……軍を集めるのだ。直ちにアンデッド共を押さえ込め」
◇◇◇
「で、攻めて来たってわけか。まあ、呆気なく全滅させちゃったけど」
僕は悪魔の影ドッペルゲンガーの報告に苦笑いする。そして、町の3メートルほどの外壁の向こうには、生かされたままアンデッドたちに連れてこられた兵士たちがいた。
周りをアンデッドに囲まれているせいか、逃げ出す者はおらず、勝気に睨んでいるが足は震えていた。
「ハルト様、彼らをどうするので? 殺されるのならわざわざここまで連れて来る必要は無いですよね?」
「勿論。彼らのように生きの良い生け贄が欲しかったんだよ」
「それじゃあ、この町の人間たちも生かしておいた方が良かったのでは?」
僕より言葉に更に疑問を持ったミレーヌが尋ねてくる。それはそうなんだけど、この町の奴らはどうしても殺したかったんだよね。自分の手で。まあ、生け贄にするのも同じようなものだけど、気分的に。
「ここにいる兵士たちは全部でどれくらいだい?」
「負傷者などを合わせれば3万ほどかと」
ミレーヌが僕が頼んでいた通り兵士たちの数を確認してくれており、それが書かれた紙を見ながら答えてくれる。3万か。中々の数じゃ無いか。
「それは良い。良い生け贄になりそうだ。例の箱は?」
「既に聖王国へと送っています。2週間もかからずに届くでしょう」
「仕事が早いな、ミレーヌ。ありがとう」
僕が頭を撫でてあげると、恥ずかしげに身をよじるミレーヌ。このままベッドへと行きたいところだけど、まだやる事はある。
僕はミレーヌを横抱きに抱いて、捕まえた兵士たちの前へと降り立つ。突然現れた僕に兵士たちは騒然とするが、周りにいるスケルトンソルジャーが音を揃えて剣を突き付けたため、黙り込む。
「やあ、僕に刃向かった兵士諸君。君たちは僕の新たな僕を召喚するための生け贄になる事になった。喜んでくれても良いよ」
僕が仰々しく両手を広げて言うと、笑顔で拍手してくれるミレーヌ。可愛い。だが、それとは反対に、固まっていた兵士たちが怒声を上げて来た。
そして、その中の1人で、他の兵士たちよりも装備の良い男がスケルトンソルジャーの囲いを抜けて、こちらへと向かってくる。腰に差してある剣を抜き、切りかかって来たのだ。
鋭く振り下ろしてくる剣。ミレーヌが翼を広げてこちらに来ようとするけど、僕は止める。理由は簡単。この程度、簡単に防げるからだ。
僕は振り下ろされる剣を人差し指と親指で挟んで止める。僕のような子供が剣を素手で止めた事に驚く男。僕はそのまま剣を挟んで、暗黒魔術で影を動かす。
男は咄嗟に剣を離して僕から離れようとするが、影の方が速い。一瞬で男を縛り付けて、細切れに切り裂いてしまった。
僕はそのまま影を兵士たちへと伸ばしていく。それを見た兵士たちは逃げようとするが、次々と枝分かれしていく影に捕らえられていく。
そのまま、4つの円になるようにそれぞれ兵士たちを縛っていく。同時に僕の魔力を大量に流していく。
「さあ、来るんだ! 新たな死霊たちよ!」
影が兵士たちを一気に飲み込んだ瞬間、黒い光が空高くのびていく。同時に大地が揺れ、雲が割れて、途轍もない魔力が辺りを押しつぶして行く。
そして、黒い光の柱から現れたのは4人……3人と1体かな。新たな配下が現れた。
『儂を生き返らせるとは……小僧、お主、神のかけらを持っておるな?』
「やっぱり、あなたほどになると知っているか。伝承通りなら、あなたが炎竜王ベルギウスであっている?」
『いかにも。我が名は炎竜王ベルギウスである。300年前に勇者に討伐されたがな』
1番初めに話しかけて来たのが、体長20メートルで、真紅の鱗を持ち、炎を纏った竜だった。炎竜王ベルギウス。勇者に討伐されるまでの間、周辺諸国を焼き払い恐怖に陥れた竜である。
「……まさか、妾が蘇らせらるとは。やるのう」
自分の手や姿を見ながらそう言って来たのは、黒のドレスに金髪のツインテール。真っ赤に染まった目に、柔らかそうな唇から見える牙。数代前の魔王であった、ベアトリス・エステキア。
「いやー、まさか、またこの世界に来られるとは! ははっ、こんな事もあるんだねー!」
あはは、と笑うのは、この中で1番年下の容姿をしている茶髪の少年。でも、その正体はドワーフの中でも鍛治の技術は神に近いと言われた世界最高の鍛治師である、ヘパイネル。
「……」
最後に、顔はどのような素材で出来ているかわからない真っ黒な布が巻かれていて、同じ様な漆黒のマントを羽織った人物。男か女かもわからない人物だが、260年ほど前まで、金さえ払えば誰でも殺す暗殺集団を作り上げ、その頭首をしていた人物、ゼロ。
これらが、僕の新しい配下たちだ。今回は僕が無理矢理蘇らせたため、今までのように魔力だけじゃ足りなかったからね。相応の生け贄を使わせてもらった。3万人でこの4人を蘇らせる事が出来たのなら、安いものだよ。
彼らには、これから全面対決となる聖王国との戦いのため、役に立ってもらおうか。それから、ヘパイネルにはこの町で墓を作ってもらわなくちゃね。
「……はっ、数ヶ月前に新たに生まれたアンデッドのダンジョンが暴走した模様。ダンジョンがあった町は壊滅、近くの村が8つ、町が3つ巻き込まれて壊滅しました。今もなお王都に向けてアンデッドの大群が進行中との事です」
「……軍を集めるのだ。直ちにアンデッド共を押さえ込め」
◇◇◇
「で、攻めて来たってわけか。まあ、呆気なく全滅させちゃったけど」
僕は悪魔の影ドッペルゲンガーの報告に苦笑いする。そして、町の3メートルほどの外壁の向こうには、生かされたままアンデッドたちに連れてこられた兵士たちがいた。
周りをアンデッドに囲まれているせいか、逃げ出す者はおらず、勝気に睨んでいるが足は震えていた。
「ハルト様、彼らをどうするので? 殺されるのならわざわざここまで連れて来る必要は無いですよね?」
「勿論。彼らのように生きの良い生け贄が欲しかったんだよ」
「それじゃあ、この町の人間たちも生かしておいた方が良かったのでは?」
僕より言葉に更に疑問を持ったミレーヌが尋ねてくる。それはそうなんだけど、この町の奴らはどうしても殺したかったんだよね。自分の手で。まあ、生け贄にするのも同じようなものだけど、気分的に。
「ここにいる兵士たちは全部でどれくらいだい?」
「負傷者などを合わせれば3万ほどかと」
ミレーヌが僕が頼んでいた通り兵士たちの数を確認してくれており、それが書かれた紙を見ながら答えてくれる。3万か。中々の数じゃ無いか。
「それは良い。良い生け贄になりそうだ。例の箱は?」
「既に聖王国へと送っています。2週間もかからずに届くでしょう」
「仕事が早いな、ミレーヌ。ありがとう」
僕が頭を撫でてあげると、恥ずかしげに身をよじるミレーヌ。このままベッドへと行きたいところだけど、まだやる事はある。
僕はミレーヌを横抱きに抱いて、捕まえた兵士たちの前へと降り立つ。突然現れた僕に兵士たちは騒然とするが、周りにいるスケルトンソルジャーが音を揃えて剣を突き付けたため、黙り込む。
「やあ、僕に刃向かった兵士諸君。君たちは僕の新たな僕を召喚するための生け贄になる事になった。喜んでくれても良いよ」
僕が仰々しく両手を広げて言うと、笑顔で拍手してくれるミレーヌ。可愛い。だが、それとは反対に、固まっていた兵士たちが怒声を上げて来た。
そして、その中の1人で、他の兵士たちよりも装備の良い男がスケルトンソルジャーの囲いを抜けて、こちらへと向かってくる。腰に差してある剣を抜き、切りかかって来たのだ。
鋭く振り下ろしてくる剣。ミレーヌが翼を広げてこちらに来ようとするけど、僕は止める。理由は簡単。この程度、簡単に防げるからだ。
僕は振り下ろされる剣を人差し指と親指で挟んで止める。僕のような子供が剣を素手で止めた事に驚く男。僕はそのまま剣を挟んで、暗黒魔術で影を動かす。
男は咄嗟に剣を離して僕から離れようとするが、影の方が速い。一瞬で男を縛り付けて、細切れに切り裂いてしまった。
僕はそのまま影を兵士たちへと伸ばしていく。それを見た兵士たちは逃げようとするが、次々と枝分かれしていく影に捕らえられていく。
そのまま、4つの円になるようにそれぞれ兵士たちを縛っていく。同時に僕の魔力を大量に流していく。
「さあ、来るんだ! 新たな死霊たちよ!」
影が兵士たちを一気に飲み込んだ瞬間、黒い光が空高くのびていく。同時に大地が揺れ、雲が割れて、途轍もない魔力が辺りを押しつぶして行く。
そして、黒い光の柱から現れたのは4人……3人と1体かな。新たな配下が現れた。
『儂を生き返らせるとは……小僧、お主、神のかけらを持っておるな?』
「やっぱり、あなたほどになると知っているか。伝承通りなら、あなたが炎竜王ベルギウスであっている?」
『いかにも。我が名は炎竜王ベルギウスである。300年前に勇者に討伐されたがな』
1番初めに話しかけて来たのが、体長20メートルで、真紅の鱗を持ち、炎を纏った竜だった。炎竜王ベルギウス。勇者に討伐されるまでの間、周辺諸国を焼き払い恐怖に陥れた竜である。
「……まさか、妾が蘇らせらるとは。やるのう」
自分の手や姿を見ながらそう言って来たのは、黒のドレスに金髪のツインテール。真っ赤に染まった目に、柔らかそうな唇から見える牙。数代前の魔王であった、ベアトリス・エステキア。
「いやー、まさか、またこの世界に来られるとは! ははっ、こんな事もあるんだねー!」
あはは、と笑うのは、この中で1番年下の容姿をしている茶髪の少年。でも、その正体はドワーフの中でも鍛治の技術は神に近いと言われた世界最高の鍛治師である、ヘパイネル。
「……」
最後に、顔はどのような素材で出来ているかわからない真っ黒な布が巻かれていて、同じ様な漆黒のマントを羽織った人物。男か女かもわからない人物だが、260年ほど前まで、金さえ払えば誰でも殺す暗殺集団を作り上げ、その頭首をしていた人物、ゼロ。
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