世界に復讐を誓った少年
110.裏切り
「た、助けてくれぇ!」
このダンジョンに入って3時間が経った頃、そんな叫び声と共に現れたのはギルドから派遣された職員であるレグル殿だった。俺とレグンが警戒したが、よく見れば所々傷を負っていた。それに、取り巻きの2人もいなかった。
「何があった?」
俺たちは周りを警戒しながらレグル殿元へと向かう。もしかすると先ほどのレグル殿の叫びで魔物たちがやって来るかもしれないからだ。レグンとシルフェ、エイラに辺りを警戒してもらい、レギンスには治療を頼む。
俺は持っていた水筒を渡してやると、レグル殿は引っ手繰るように水筒を掴み勢い良く飲み始めた。その光景にエイラが顔を顰めるが何も言わなかった。
「そう慌てて飲むな。今は敵がいないからな。それで何があったんだ?」
俺が落ち着かせるように言葉をかけながら尋ねると、水を飲んで俺たちがいる事にようやく落ち着いたのか、顔を上げて俺たちを見る。そして
「……すまねぇ」
と、一言謝ったと思った瞬間、懐から石ころのようなものを取り出して、俺たちの足下へと放った。それにいち早く気が付いたのはエイラだった。魔法を学んでいる彼女だから気が付いたのだろう。
しかし、彼女が俺たちに言葉を発する前に、石ころが光り輝き、俺たちを覆い尽くした。
……視界が元に戻ると、目の前にいたレグル殿は俺たちから離れるように走り去っていた。それをレグンが追おうとしたが、それよりも、今俺たちがいる場所だ。
一瞬同じ場所にいるのかと思ったが、よく辺りを見回せば違うのがわかる。俺たちはいつでも動けるように通路の真ん中あたりにいたのだが、ここは辺りが壁に囲まれている。
「くそっ! お前たち、もっと私に補助魔法をかけなさい!」
「ちぃっ! 儂の斧が通らねえとはな!」
そして、辺りでは激しい戦闘音が聞こえて来た。音の聞こえる方を見ようとした瞬間、俺とレギンスの間を通り抜ける物体があった。
それが後ろの壁へとぶつかりグシャッと音がした。振り返ると、壁には4人組の男たちの1人が叩きつけられていた。その一撃で即死だったようで、男は微動だにしなかった。
「……う、うそぉ……な、なにあれ……」
震えるようなシルフェの声に俺たちは全員が戦闘音のする方へと向いた。そして、そこにいたのは黒く染まる骨の竜がいたのだ。
大きさは6メートルほどで翼は持っていないが、途轍もなく太い前足。見た目からして地竜だとは思うのだが、奴から放たれる威圧感から、普通の地竜とは違うと感じる。
しかも、この部屋を見渡すと唯一の出口がその地竜の後ろにあるのだ。奴を倒さない事にはここから出る事が出来ない。
「……僕たちはギルドに嵌められたって事ですかね?」
自称気味に笑みを浮かべるレギンス。確かに今地竜と戦っているのは、ドーリさんたちと集められた冒険者のみ。他のグループも俺たちと同じようにここに飛ばされたのだろう。それも、レグル殿……いや、レグルたちに嵌められて。
「取り敢えず、ドーリさんたちを助けよう。あいつをどうにかしないとここから抜け出す事が出来ない。俺たちじゃあどこまで」
「ぎゃあ」
俺がみんなに指示をしようとした瞬間、悲鳴が聞こえた。そして、俺の頬を濡らす水滴。振り返れば、そこには黒い骨の塊があり、その先にはエイラが血塗れに挟まっていた。
「エイラァァァァァ!!!」
エイラを助けようと斧を振りかざすレグン。斧が黒い骨へとぶつかった瞬間、ガッと音がすると共にレグンの斧が折れた。そして、地面から飛び出した腕に吹き飛ばされてしまった。
……俺たちの背後からもう一体の地竜が現れたのだ。地竜に殴り飛ばされたレグンは、四肢が本来向かない方に向いて、体中から地を流していた。地竜に噛み付かれたエイラは既に事切れてしまっている。
「こ、このぉー!!!」
その地竜に対してシルフェは矢を放つ。それも、普通の矢では無く、特製の魔力矢だ。先端には爆発する魔結晶が付けられている。それがいくつも地竜へと当たる……が、煙が晴れたその姿は無傷だった。そして、振るわれる尻尾。
俺が助けに行く暇もなく、シルフェは尻尾に叩きつけられてしまった。そして、そのまま回転する地竜。俺レギンスは成すすべもなく吹き飛ばされてしまった。
……最後に浮かんだのは仲間たちの笑顔だった。
◇◇◇
「がはっ! く……そがぁっ! ギルドが……裏切ったのかぁ!!!」
僕の前でスケルトンランドドラゴンにのしかかられて動けない今回の調査でのリーダーの男。確かドーリとか言ったっけ。そいつが僕たちやレグルを見て叫んでいた。
「ち、違う。お、俺たちは……俺は、こんなつもりじゃ……」
そして、この原因を作ったレグルは現実逃避をしていた。怒鳴る男とブツブツと呟く男。あー、うるさいな。僕はスケルトンランドドラゴンに目で指示をすると、スケルトンランドドラゴンは男を踏み潰した。
それを見た顔をそらそうとするレグルの髪を掴み、死体を見せる。現実から逃さないように。
「そういえば、レグルの夢は、歴史に名前を残す事だったよね? それ、僕が手伝ってあげるよ。国を売った大悪党としてね」
この国が滅ぶまでは、死なせないからね、レグル。
このダンジョンに入って3時間が経った頃、そんな叫び声と共に現れたのはギルドから派遣された職員であるレグル殿だった。俺とレグンが警戒したが、よく見れば所々傷を負っていた。それに、取り巻きの2人もいなかった。
「何があった?」
俺たちは周りを警戒しながらレグル殿元へと向かう。もしかすると先ほどのレグル殿の叫びで魔物たちがやって来るかもしれないからだ。レグンとシルフェ、エイラに辺りを警戒してもらい、レギンスには治療を頼む。
俺は持っていた水筒を渡してやると、レグル殿は引っ手繰るように水筒を掴み勢い良く飲み始めた。その光景にエイラが顔を顰めるが何も言わなかった。
「そう慌てて飲むな。今は敵がいないからな。それで何があったんだ?」
俺が落ち着かせるように言葉をかけながら尋ねると、水を飲んで俺たちがいる事にようやく落ち着いたのか、顔を上げて俺たちを見る。そして
「……すまねぇ」
と、一言謝ったと思った瞬間、懐から石ころのようなものを取り出して、俺たちの足下へと放った。それにいち早く気が付いたのはエイラだった。魔法を学んでいる彼女だから気が付いたのだろう。
しかし、彼女が俺たちに言葉を発する前に、石ころが光り輝き、俺たちを覆い尽くした。
……視界が元に戻ると、目の前にいたレグル殿は俺たちから離れるように走り去っていた。それをレグンが追おうとしたが、それよりも、今俺たちがいる場所だ。
一瞬同じ場所にいるのかと思ったが、よく辺りを見回せば違うのがわかる。俺たちはいつでも動けるように通路の真ん中あたりにいたのだが、ここは辺りが壁に囲まれている。
「くそっ! お前たち、もっと私に補助魔法をかけなさい!」
「ちぃっ! 儂の斧が通らねえとはな!」
そして、辺りでは激しい戦闘音が聞こえて来た。音の聞こえる方を見ようとした瞬間、俺とレギンスの間を通り抜ける物体があった。
それが後ろの壁へとぶつかりグシャッと音がした。振り返ると、壁には4人組の男たちの1人が叩きつけられていた。その一撃で即死だったようで、男は微動だにしなかった。
「……う、うそぉ……な、なにあれ……」
震えるようなシルフェの声に俺たちは全員が戦闘音のする方へと向いた。そして、そこにいたのは黒く染まる骨の竜がいたのだ。
大きさは6メートルほどで翼は持っていないが、途轍もなく太い前足。見た目からして地竜だとは思うのだが、奴から放たれる威圧感から、普通の地竜とは違うと感じる。
しかも、この部屋を見渡すと唯一の出口がその地竜の後ろにあるのだ。奴を倒さない事にはここから出る事が出来ない。
「……僕たちはギルドに嵌められたって事ですかね?」
自称気味に笑みを浮かべるレギンス。確かに今地竜と戦っているのは、ドーリさんたちと集められた冒険者のみ。他のグループも俺たちと同じようにここに飛ばされたのだろう。それも、レグル殿……いや、レグルたちに嵌められて。
「取り敢えず、ドーリさんたちを助けよう。あいつをどうにかしないとここから抜け出す事が出来ない。俺たちじゃあどこまで」
「ぎゃあ」
俺がみんなに指示をしようとした瞬間、悲鳴が聞こえた。そして、俺の頬を濡らす水滴。振り返れば、そこには黒い骨の塊があり、その先にはエイラが血塗れに挟まっていた。
「エイラァァァァァ!!!」
エイラを助けようと斧を振りかざすレグン。斧が黒い骨へとぶつかった瞬間、ガッと音がすると共にレグンの斧が折れた。そして、地面から飛び出した腕に吹き飛ばされてしまった。
……俺たちの背後からもう一体の地竜が現れたのだ。地竜に殴り飛ばされたレグンは、四肢が本来向かない方に向いて、体中から地を流していた。地竜に噛み付かれたエイラは既に事切れてしまっている。
「こ、このぉー!!!」
その地竜に対してシルフェは矢を放つ。それも、普通の矢では無く、特製の魔力矢だ。先端には爆発する魔結晶が付けられている。それがいくつも地竜へと当たる……が、煙が晴れたその姿は無傷だった。そして、振るわれる尻尾。
俺が助けに行く暇もなく、シルフェは尻尾に叩きつけられてしまった。そして、そのまま回転する地竜。俺レギンスは成すすべもなく吹き飛ばされてしまった。
……最後に浮かんだのは仲間たちの笑顔だった。
◇◇◇
「がはっ! く……そがぁっ! ギルドが……裏切ったのかぁ!!!」
僕の前でスケルトンランドドラゴンにのしかかられて動けない今回の調査でのリーダーの男。確かドーリとか言ったっけ。そいつが僕たちやレグルを見て叫んでいた。
「ち、違う。お、俺たちは……俺は、こんなつもりじゃ……」
そして、この原因を作ったレグルは現実逃避をしていた。怒鳴る男とブツブツと呟く男。あー、うるさいな。僕はスケルトンランドドラゴンに目で指示をすると、スケルトンランドドラゴンは男を踏み潰した。
それを見た顔をそらそうとするレグルの髪を掴み、死体を見せる。現実から逃さないように。
「そういえば、レグルの夢は、歴史に名前を残す事だったよね? それ、僕が手伝ってあげるよ。国を売った大悪党としてね」
この国が滅ぶまでは、死なせないからね、レグル。
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