世界に復讐を誓った少年
100.暗黒魔術師vs四大聖天使
「ふふ、それではいくわよ!」
メルカルの体を乗っ取った四大聖天使の1人、ラファエラ。彼……彼女は笑みを浮かべながら翼をはためかせ迫ってくる。ちっ、メルカルの体を使っているのに、なんでメルカルより速いんだよ!
「はぁっ!」
鋭く剣を振り下ろしてくるラファエラ。僕は大きく横に飛び剣を避けると、鋭い斬撃は触れる事なく地面を切り裂いた。
そして、勢い無くすことなく、そのまま切り上げて右下から振り上げてくる。このまま避けても追い詰められるだけだと思った僕は、両手に暗黒魔術を纏わせる。黒一色に染まった両腕。振り上げられる剣の横腹を殴って剣を逸らす!
ガンッ! と剣を殴り逸らす事は出来たが、僕の腕の暗黒魔術で覆った部分が煙を上げて溶けていった。これは……あの剣から放たれる光に負けたのか?
「……これは驚いたわね。誰もが絶対に切ることの出来る剣って言われれば、触れる事なんてしないのに、まさか剣を殴って逸らすとわね。でも、フィストリア様の神力には敵わないようね」
あの剣から放たれる力は神力っていうのか。なんだか、僕の力があのクソ女に負けてるっていうのは腹が立つね。
僕の無茶な戦い方を警戒してか、距離を少しとるラファエラ。さて、どうしたものか。取り敢えず剣を殴れる事はわかった。触れても切れないのならやりようはいくらでもある。
だけど、それは必ず僕がやらないといけない。魔術でやろうとしても、あの剣を包むクソ女の神力のせいで僕の腕に纏わせた魔術のように消されてしまうだろうから。
ただ、僕の腕には被害がなかった。暗黒魔術を纏わせた腕だけど、傷も火傷のような跡もなく、ただ魔術が消されただけだった。
という事は、少なくともあのなんでも切れる力を持つ神力は、魔術でも防ぐ事は可能だって事だ。あの剣の横腹なら。
あのなんでも切れる効果は鋭くなっている部分、剣なら刃の部分なら効果が発揮するのだろう。それなら、刃の部分だけを気を付けていればどうにか出来るはず。
なら、今僕に必要なのは、あのクソ女の力から身を守る鎧だ。僕は暗黒魔術で神力から身を守る外皮を作る。思い浮かべるのはレルシェンドの竜化した時の姿。
あの漆黒の竜を思い浮かべて、僕は身を守る鎧を作り上げる。
「……これはまたやばそうな事をするわね」
1番触れるであろう腕の部分を何層にも纏わせたため、竜の前足のように巨大化し、あの姿を意識したせいか翼が生え、尻尾まで生えていた。
「黒竜外装。これなら、君の神力に触れても、耐えられる」
よくよく考えれば、元を正せば暗黒魔術だって神が持っていた力の一部だ。その力が神力に耐えられないわけがない。
僕は翼を大きく広がる。それだけで風が吹き荒れ、廃墟と化した建物が更に吹き飛ぶ。
「……まあ、良いわ。幾ら鎧を着込もうとこの『絶剣』の力は防げない。一太刀でも入れれば私の勝ちなのだから」
「やってみろ!」
僕は言うと同時に、ラファエラへと向かう。ラファエラは構えた剣で顔目掛けて突きを放ってくるが、左腕で横腹を叩き逸らす。
その時、先ほどのように左腕に纏わせている鎧が煙を上げて消えていくけど、その下の鎧までは届いてなかった。そして、直ぐに消えた分の鎧を作り元に戻す。
「厄介な!」
「その剣ほどじゃない、よっ!」
袈裟切りに振り下ろしてくる剣の横腹を右腕で殴って逸らし、左腕でラファエラの顔目掛けて振るう。ラファエラはしゃがんで避けて、下から左腕を切り落とそうと振り上げて来るが、鎧で作られた尾で剣の横腹を叩く。
ラファエラは僕の尻尾を切ると、翼をはためかせ、空中に行き距離を取り始めた。そして、何度も剣を振るい始めた。一体何を?
「あなたの逃げ場をなくすわ。降り注ぎなさい、斬牢!」
ラファエラがそう言った瞬間、全身に悪寒が走る。この場にいては……死ぬ、と。僕は急いでその場から移動する。
僕がさっきまでいた場所は、次の瞬間、一瞬にして刻まれてしまった。地面には幾多もの斬撃痕が残る。あいつ、空から斬撃を落としているのか。それも、防ぐ事の出来ない斬撃を。
当然、ラファエラは僕を追うように空を飛ぶ。急いで逃げているけど、奴と僕とではそこまで速さに差がなかった。
「ちっ、侵食ノ太陽!」
僕は自分の頭上に何十にもなる侵食ノ太陽を発動し、放たれた斬撃の壁にする。当然、これで防ぐ事が出来ないのはわかっている。僕の目的は別にあるから。
しかし、少し侵食ノ太陽に集中したせいで、ラファエラに追いつかれてしまい、僕の行き先を塞ぐように前にも斬撃を落とされる。そして
「死になさい、暗黒魔術師!」
僕の動きが止まった瞬間、僕を囲むように放たれた絶対切る事のできる斬撃。僕は全身に限界まで魔力を流す。この死地で活路を見出すには……命をかけないとね。
僕は両腕を交差させて、降り注ぐ斬撃を待つ。そして次の瞬間……全身が切り刻まれる。
……辺りに血の匂いが充満する。僕はかなりの激痛と、一気に血の量が減ったための目眩でその場に膝をつく。フラフラする頭を押さえながら顔を上げると、そこには
「ぐぅっ!? い……つの……間に!?」
ラファエラの脇腹に突き刺さる1本の短剣。僕の暗黒魔術で作った短剣だ。ラファエラは短剣に刺された箇所を押さえながら、僕から少し離れたところに降り立つ。
「痛て……さっき僕が侵食ノ太陽を沢山発動したでしょ? それを君の斬撃で粉々になるまで切ってもらった。その残った粉状になった侵食ノ太陽を君の近くで集めて刺しただけだよ」
「くっ、なら、なぜあなたは生きているの? 確実に斬撃は当たったのに!」
「君が放った斬撃は物に触れれば必ず切れると言っても、少しでも触れればその効果が薄まるのがわかった。そうじゃないと、地面に放った斬撃が止まるわけなく、地中深く切っていってしまうしね。
だから僕は、切られた側から鎧を直したのさ。これにはかなり神経を使ったよ。ほんの少しでも気を逸らせば体を細切れにされるのだから。残念な事に鎧だけでは防ぎ切れずに、体に深傷を負わされたけど。今は立つのも辛い」
そう言って僕がその場に座ると、ラファエラが笑い始めた。なんだよ?
「うふふ! あはははっ! まさか、そんな方法で防がれるなんて! 思ってもみなかったわ。中々やるわね、あなた。私、あなたに興味が湧いてきたわ。この体はこの短剣のせいでもう死ぬのだろうけど、私は死なない。
次は私の本当の姿で相手をして上げるわ」
「それは光栄だね。だけど、死ぬのは君だよ?」
「ふふっ、会える日を楽しみにしているわ。暗黒魔術師」
ラファエラがそう言うと同時に僕は指を鳴らす。すると、ラファエラの脇腹に刺さっていた短剣が枝分かれして行き、ラファエラ、メルカルの体を体内から貫いて行く。
同時にラファエラの気配が消えた。本当にメルカルの体を使っていただけだったのだろう。しかし、他人の体であの実力か。今の僕は結構な深傷を負っている。これは中々手応えがありそうじゃないか。
そう思っていると、突然地面が揺れ始めた。一体何が? と、思った瞬間、城の天井部分が突き破られて、黄色輝くの化け物が現れた。
それは、あっという間に飛んで行ってしまったのだが、あの方角は……エリーゼたちのいる方角だ!
「ハルト様! 大変です!」
謎の化け物が飛んで行った方角を見ていると、先に行かせたミレーヌたちが皇城から戻ってきた。全員慌てた様子で。
「一体何があった?」
「追い込まれた皇子が、四獣家の秘宝を体内に埋め込んで、それで……」
秘宝を埋め込んだだと? 僕はクロノの後ろにいるシーシャを見る。彼女の首には青龍の涙がしっかりとかけられていた。って事はそれ以外の秘宝をか。
……これはまた、休んではいられそうにないな。
メルカルの体を乗っ取った四大聖天使の1人、ラファエラ。彼……彼女は笑みを浮かべながら翼をはためかせ迫ってくる。ちっ、メルカルの体を使っているのに、なんでメルカルより速いんだよ!
「はぁっ!」
鋭く剣を振り下ろしてくるラファエラ。僕は大きく横に飛び剣を避けると、鋭い斬撃は触れる事なく地面を切り裂いた。
そして、勢い無くすことなく、そのまま切り上げて右下から振り上げてくる。このまま避けても追い詰められるだけだと思った僕は、両手に暗黒魔術を纏わせる。黒一色に染まった両腕。振り上げられる剣の横腹を殴って剣を逸らす!
ガンッ! と剣を殴り逸らす事は出来たが、僕の腕の暗黒魔術で覆った部分が煙を上げて溶けていった。これは……あの剣から放たれる光に負けたのか?
「……これは驚いたわね。誰もが絶対に切ることの出来る剣って言われれば、触れる事なんてしないのに、まさか剣を殴って逸らすとわね。でも、フィストリア様の神力には敵わないようね」
あの剣から放たれる力は神力っていうのか。なんだか、僕の力があのクソ女に負けてるっていうのは腹が立つね。
僕の無茶な戦い方を警戒してか、距離を少しとるラファエラ。さて、どうしたものか。取り敢えず剣を殴れる事はわかった。触れても切れないのならやりようはいくらでもある。
だけど、それは必ず僕がやらないといけない。魔術でやろうとしても、あの剣を包むクソ女の神力のせいで僕の腕に纏わせた魔術のように消されてしまうだろうから。
ただ、僕の腕には被害がなかった。暗黒魔術を纏わせた腕だけど、傷も火傷のような跡もなく、ただ魔術が消されただけだった。
という事は、少なくともあのなんでも切れる力を持つ神力は、魔術でも防ぐ事は可能だって事だ。あの剣の横腹なら。
あのなんでも切れる効果は鋭くなっている部分、剣なら刃の部分なら効果が発揮するのだろう。それなら、刃の部分だけを気を付けていればどうにか出来るはず。
なら、今僕に必要なのは、あのクソ女の力から身を守る鎧だ。僕は暗黒魔術で神力から身を守る外皮を作る。思い浮かべるのはレルシェンドの竜化した時の姿。
あの漆黒の竜を思い浮かべて、僕は身を守る鎧を作り上げる。
「……これはまたやばそうな事をするわね」
1番触れるであろう腕の部分を何層にも纏わせたため、竜の前足のように巨大化し、あの姿を意識したせいか翼が生え、尻尾まで生えていた。
「黒竜外装。これなら、君の神力に触れても、耐えられる」
よくよく考えれば、元を正せば暗黒魔術だって神が持っていた力の一部だ。その力が神力に耐えられないわけがない。
僕は翼を大きく広がる。それだけで風が吹き荒れ、廃墟と化した建物が更に吹き飛ぶ。
「……まあ、良いわ。幾ら鎧を着込もうとこの『絶剣』の力は防げない。一太刀でも入れれば私の勝ちなのだから」
「やってみろ!」
僕は言うと同時に、ラファエラへと向かう。ラファエラは構えた剣で顔目掛けて突きを放ってくるが、左腕で横腹を叩き逸らす。
その時、先ほどのように左腕に纏わせている鎧が煙を上げて消えていくけど、その下の鎧までは届いてなかった。そして、直ぐに消えた分の鎧を作り元に戻す。
「厄介な!」
「その剣ほどじゃない、よっ!」
袈裟切りに振り下ろしてくる剣の横腹を右腕で殴って逸らし、左腕でラファエラの顔目掛けて振るう。ラファエラはしゃがんで避けて、下から左腕を切り落とそうと振り上げて来るが、鎧で作られた尾で剣の横腹を叩く。
ラファエラは僕の尻尾を切ると、翼をはためかせ、空中に行き距離を取り始めた。そして、何度も剣を振るい始めた。一体何を?
「あなたの逃げ場をなくすわ。降り注ぎなさい、斬牢!」
ラファエラがそう言った瞬間、全身に悪寒が走る。この場にいては……死ぬ、と。僕は急いでその場から移動する。
僕がさっきまでいた場所は、次の瞬間、一瞬にして刻まれてしまった。地面には幾多もの斬撃痕が残る。あいつ、空から斬撃を落としているのか。それも、防ぐ事の出来ない斬撃を。
当然、ラファエラは僕を追うように空を飛ぶ。急いで逃げているけど、奴と僕とではそこまで速さに差がなかった。
「ちっ、侵食ノ太陽!」
僕は自分の頭上に何十にもなる侵食ノ太陽を発動し、放たれた斬撃の壁にする。当然、これで防ぐ事が出来ないのはわかっている。僕の目的は別にあるから。
しかし、少し侵食ノ太陽に集中したせいで、ラファエラに追いつかれてしまい、僕の行き先を塞ぐように前にも斬撃を落とされる。そして
「死になさい、暗黒魔術師!」
僕の動きが止まった瞬間、僕を囲むように放たれた絶対切る事のできる斬撃。僕は全身に限界まで魔力を流す。この死地で活路を見出すには……命をかけないとね。
僕は両腕を交差させて、降り注ぐ斬撃を待つ。そして次の瞬間……全身が切り刻まれる。
……辺りに血の匂いが充満する。僕はかなりの激痛と、一気に血の量が減ったための目眩でその場に膝をつく。フラフラする頭を押さえながら顔を上げると、そこには
「ぐぅっ!? い……つの……間に!?」
ラファエラの脇腹に突き刺さる1本の短剣。僕の暗黒魔術で作った短剣だ。ラファエラは短剣に刺された箇所を押さえながら、僕から少し離れたところに降り立つ。
「痛て……さっき僕が侵食ノ太陽を沢山発動したでしょ? それを君の斬撃で粉々になるまで切ってもらった。その残った粉状になった侵食ノ太陽を君の近くで集めて刺しただけだよ」
「くっ、なら、なぜあなたは生きているの? 確実に斬撃は当たったのに!」
「君が放った斬撃は物に触れれば必ず切れると言っても、少しでも触れればその効果が薄まるのがわかった。そうじゃないと、地面に放った斬撃が止まるわけなく、地中深く切っていってしまうしね。
だから僕は、切られた側から鎧を直したのさ。これにはかなり神経を使ったよ。ほんの少しでも気を逸らせば体を細切れにされるのだから。残念な事に鎧だけでは防ぎ切れずに、体に深傷を負わされたけど。今は立つのも辛い」
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「うふふ! あはははっ! まさか、そんな方法で防がれるなんて! 思ってもみなかったわ。中々やるわね、あなた。私、あなたに興味が湧いてきたわ。この体はこの短剣のせいでもう死ぬのだろうけど、私は死なない。
次は私の本当の姿で相手をして上げるわ」
「それは光栄だね。だけど、死ぬのは君だよ?」
「ふふっ、会える日を楽しみにしているわ。暗黒魔術師」
ラファエラがそう言うと同時に僕は指を鳴らす。すると、ラファエラの脇腹に刺さっていた短剣が枝分かれして行き、ラファエラ、メルカルの体を体内から貫いて行く。
同時にラファエラの気配が消えた。本当にメルカルの体を使っていただけだったのだろう。しかし、他人の体であの実力か。今の僕は結構な深傷を負っている。これは中々手応えがありそうじゃないか。
そう思っていると、突然地面が揺れ始めた。一体何が? と、思った瞬間、城の天井部分が突き破られて、黄色輝くの化け物が現れた。
それは、あっという間に飛んで行ってしまったのだが、あの方角は……エリーゼたちのいる方角だ!
「ハルト様! 大変です!」
謎の化け物が飛んで行った方角を見ていると、先に行かせたミレーヌたちが皇城から戻ってきた。全員慌てた様子で。
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