世界に復讐を誓った少年
97.帝都へ
「……僕たち以外の反乱軍はほぼ全滅ねぇ」
「はい。我々は女神の使いである天使たちの威光を気にする事なく、七星天女の皆様が天使たちを殺しましたが、他の軍はそうはいきません。帝国を打倒しようと考えても、女神の使いの天使とは敵対したくないという国が多く、攻め切らないところを狙われたようです」
各軍に偵察として送っていた悪魔の影たちそれぞれがそんな報告をしてくる。まあ、予想の範囲内かな。こうなるであろう事は初戦を行った際にわかった事だし、みんなで話し合っていたからね。
「それに、天使たちは各国の軍を退けた後は全て帝都に集まっているようです」
初戦を終えてから2週間、あれから1体も姿を現さないと思ったらそういう事だったのか。まあ、少数で来ても倒されるだけだから、戦力を集めていこうって魂胆なのだろう。天使だ何だと言いながら、やっている事は人間と変わらないじゃ無いか。
「エリーゼ、こっちの軍の感じはどうだい?」
「……やはり、天使さ……天使との戦いが尾ひれを引いているようで、あまり士気が高いとは言えません。申し訳ありません」
申し訳なさそうに頭を下げるエリーゼだけど、エリーゼが謝る必要はない。神に逆らえない腰抜けどもが悪いのだ。
「構わないよ。そこまで戦力としては期待していないから。精々、帝国軍と当たる時の壁として役に立って貰うさ。クロノ、準備は?」
「いつでも行けますよ。僕だけの魔力だったら数ヶ月かかっていたけど、エルフィオンさんたちのお陰でまさか2日で終わるとは思っていませんでしたが」
苦笑いするクロノに微笑むエルフィオン。エルフィオンの魔力は僕以上だからね。クロノが作った魔道具もあっという間に使えるようになったのだろう。
「それじゃあ最後の確認だ。エリーゼが率いる反乱軍が帝都に着いた瞬間、僕たちはクロノの転移魔道具で帝都に入る。皇城には天使たちに四獣家たちとその眷属たちがいるだろうが全て蹴散らせ。レルシェンド、兵士たち相手なら何をしても良いよ」
よっしゃー! とガッツポーズを取って喜ぶレルシェンドを見ていると、少し我慢させ過ぎたかな、と感じてしまうけど、枷を外すと何をするかわからないからこのぐらいが良いのかも知れないね。
「行くのは、僕とミレーヌに七星天女。リーシャとレルシェンドとクロノにシーシャ、君も来るんだ。これに事前にクロノが潜入して準備した転移魔道具で転移させた死霊兵を連れて行く。ネロとエルフィオンはエリーゼ、フィアのサポートを頼むよ」
僕の言葉に頷くみんな。さてさて、この内乱もささっと終わらせてしまおう。ここが終われば次は遂にあの国だからね。僕の目的の1つであるアンデルス王国。
くくっ、どんな風に潰してあげようか。あの国の人間を皆殺しにして全員を死霊にしてしまおうか。それで死霊だけの国を作るのも良いかもしれないね。
僕がこれからの顛末についてニヤニヤと笑みを浮かべて考えていると
「マスター、そんな嬉しそうな顔をするのは良いが、ささっと行こうじゃないか」
もう待ちきれないのか、僕を急かして来るリーシャ。それもそうだね。この話をこっそり聞いている皇子よ。待っていろよ? 今すぐに行くからな。
今やっていた会議もどきは、こちらを見ている皇子に対しての罠だ。以前潜入させていた奴らが置いた魔道具だろう、2つで1つになる魔道具で、片方が映したものをもう片方が見る事が出来るというものだ。
それが会議など人が集まる時に使う大きな天幕に置かれているのに気が付いた僕たちは、奴らを罠に嵌めようと考えたのだ。
普通なら隠蔽の効果などがある魔道具で気が付かないのだけど、ここにはリーシャやエリシュオン、それに、魔道具開発の祖であるクロノがいる。魔道具から漏れる微弱な魔力に気が付いたのだ。
だから、それを利用して嘘の情報を流した。帝都まではこの軍の速度なら5日はかかるだろう。その間、今の話を聞いた奴らは準備をしようとするはずだから、今からすぐに攻める。
天幕から出ると既に準備を終えているみんな。片膝をついて頭を下げる七星天女たちに、その前に立ち微笑むミレーヌ。
拳を何度もぶつけて気合いを入れるレルシェンドに、腕を組んで指示を待つリーシャ。不安そうにするシーシャの手を握るクロノと、反対に堂々としているティエラに手を握られるマルス。
「ネロ、エルフィオン、ここは任せたよ。フィアとエリーゼも2人を頼ると良いよ」
「はい、ハルト様、お気をつけて」
「……無理はするなよ」
2人のそれぞれの言葉と配下が頷くのを見て、僕はクロノを見る。クロノの手には紫色に輝く球が握られている。あれが、今回使う魔道具だ。
「さあ、行こうか」
僕の言葉にクロノは手に持つ転移の魔道具を地面に設置する。すると、紫色の球が輝き出し、地面に魔法陣を形成する。そして、次第に輝きが増していき、視界を埋め尽くすほどの光が放たれる。光が収まった時には、周りの風景が変わっていた。
「クロノ」
「はいはい、っと」
クロノは今度は地面に手をつけて魔力を流す。これによって事前にクロノが置いておいた転移の魔道具が反応して、僕が準備していた死霊兵たちやオプスキラーたちが帝都の中へと転移してくる。
奴らには住民はなるべく襲わないようには言っているが、どこまで守る事やら。この程度はエリーゼにあげるからね。頂点に立ったのに下の者がいないとなると意味は無い。
「さて、行こうかみんな。今日で帝国は生まれ変わるよ」
次への布石のため、帝国には潰れてもらうよ。
「はい。我々は女神の使いである天使たちの威光を気にする事なく、七星天女の皆様が天使たちを殺しましたが、他の軍はそうはいきません。帝国を打倒しようと考えても、女神の使いの天使とは敵対したくないという国が多く、攻め切らないところを狙われたようです」
各軍に偵察として送っていた悪魔の影たちそれぞれがそんな報告をしてくる。まあ、予想の範囲内かな。こうなるであろう事は初戦を行った際にわかった事だし、みんなで話し合っていたからね。
「それに、天使たちは各国の軍を退けた後は全て帝都に集まっているようです」
初戦を終えてから2週間、あれから1体も姿を現さないと思ったらそういう事だったのか。まあ、少数で来ても倒されるだけだから、戦力を集めていこうって魂胆なのだろう。天使だ何だと言いながら、やっている事は人間と変わらないじゃ無いか。
「エリーゼ、こっちの軍の感じはどうだい?」
「……やはり、天使さ……天使との戦いが尾ひれを引いているようで、あまり士気が高いとは言えません。申し訳ありません」
申し訳なさそうに頭を下げるエリーゼだけど、エリーゼが謝る必要はない。神に逆らえない腰抜けどもが悪いのだ。
「構わないよ。そこまで戦力としては期待していないから。精々、帝国軍と当たる時の壁として役に立って貰うさ。クロノ、準備は?」
「いつでも行けますよ。僕だけの魔力だったら数ヶ月かかっていたけど、エルフィオンさんたちのお陰でまさか2日で終わるとは思っていませんでしたが」
苦笑いするクロノに微笑むエルフィオン。エルフィオンの魔力は僕以上だからね。クロノが作った魔道具もあっという間に使えるようになったのだろう。
「それじゃあ最後の確認だ。エリーゼが率いる反乱軍が帝都に着いた瞬間、僕たちはクロノの転移魔道具で帝都に入る。皇城には天使たちに四獣家たちとその眷属たちがいるだろうが全て蹴散らせ。レルシェンド、兵士たち相手なら何をしても良いよ」
よっしゃー! とガッツポーズを取って喜ぶレルシェンドを見ていると、少し我慢させ過ぎたかな、と感じてしまうけど、枷を外すと何をするかわからないからこのぐらいが良いのかも知れないね。
「行くのは、僕とミレーヌに七星天女。リーシャとレルシェンドとクロノにシーシャ、君も来るんだ。これに事前にクロノが潜入して準備した転移魔道具で転移させた死霊兵を連れて行く。ネロとエルフィオンはエリーゼ、フィアのサポートを頼むよ」
僕の言葉に頷くみんな。さてさて、この内乱もささっと終わらせてしまおう。ここが終われば次は遂にあの国だからね。僕の目的の1つであるアンデルス王国。
くくっ、どんな風に潰してあげようか。あの国の人間を皆殺しにして全員を死霊にしてしまおうか。それで死霊だけの国を作るのも良いかもしれないね。
僕がこれからの顛末についてニヤニヤと笑みを浮かべて考えていると
「マスター、そんな嬉しそうな顔をするのは良いが、ささっと行こうじゃないか」
もう待ちきれないのか、僕を急かして来るリーシャ。それもそうだね。この話をこっそり聞いている皇子よ。待っていろよ? 今すぐに行くからな。
今やっていた会議もどきは、こちらを見ている皇子に対しての罠だ。以前潜入させていた奴らが置いた魔道具だろう、2つで1つになる魔道具で、片方が映したものをもう片方が見る事が出来るというものだ。
それが会議など人が集まる時に使う大きな天幕に置かれているのに気が付いた僕たちは、奴らを罠に嵌めようと考えたのだ。
普通なら隠蔽の効果などがある魔道具で気が付かないのだけど、ここにはリーシャやエリシュオン、それに、魔道具開発の祖であるクロノがいる。魔道具から漏れる微弱な魔力に気が付いたのだ。
だから、それを利用して嘘の情報を流した。帝都まではこの軍の速度なら5日はかかるだろう。その間、今の話を聞いた奴らは準備をしようとするはずだから、今からすぐに攻める。
天幕から出ると既に準備を終えているみんな。片膝をついて頭を下げる七星天女たちに、その前に立ち微笑むミレーヌ。
拳を何度もぶつけて気合いを入れるレルシェンドに、腕を組んで指示を待つリーシャ。不安そうにするシーシャの手を握るクロノと、反対に堂々としているティエラに手を握られるマルス。
「ネロ、エルフィオン、ここは任せたよ。フィアとエリーゼも2人を頼ると良いよ」
「はい、ハルト様、お気をつけて」
「……無理はするなよ」
2人のそれぞれの言葉と配下が頷くのを見て、僕はクロノを見る。クロノの手には紫色に輝く球が握られている。あれが、今回使う魔道具だ。
「さあ、行こうか」
僕の言葉にクロノは手に持つ転移の魔道具を地面に設置する。すると、紫色の球が輝き出し、地面に魔法陣を形成する。そして、次第に輝きが増していき、視界を埋め尽くすほどの光が放たれる。光が収まった時には、周りの風景が変わっていた。
「クロノ」
「はいはい、っと」
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