世界に復讐を誓った少年

やま

96.七星天女の実力

「それでは行きましょうか、七星天女皆さん。あそこで飛び回る蝿を落として、負けないと思っている敵軍を絶望に落として差し上げましょう」


 私の言葉で一斉に動き出す七星天女。天使たちへと向かったのがマナ、ルクア、ケイシー、ネイシー、デューアの5人。


 それと同時にレミネイアが地面に腕を突き刺す。突き刺した場所からあるものが地面の中を進み、地面を揺らす。


 地面の中を進むものが帝国軍に近づくにつれて揺れを感じた兵士たちは戸惑いの様子を見せますが、彼らの前に安心させるように天使が飛びます。


 帝国軍に向かう5人に合わせるかのように5人の天使が武器を構えています。武器は様々ですが、やはり天使というだけあってかなりの力を持っているのが伺えます。


 ただ、降りてくる気配はなさそうですね。空から魔法を撃って倒そうというのが見え見えです。しかし、飛ぶとわかっている相手に対して何も対策をしていないわけがないでしょう。


 空から魔法を放とうとする天使たちの下の地面が大きく揺れます。そして、地面が隆起して突き抜けてきたのは、かなり太い蔓だった。その蔓が天使たちに向かって伸びる。


「ふふっ、逃がさない」


 突然現れた蔓を避ける天使たちだけど、その後を追う蔓。この蔓を出しているのは先程から地面に手を突き刺すレミネイアです。


 彼女は昔存在した亜人族の1つアルラウネ族で、植物を自在に操る事が出来る。彼女たちの種族は植物を操る事が出来るため、帝国から農業奴隷として狙われ、そして絶滅した種族と言われています。


 そんな彼女が出した蔓は天使たちの後を追うのと同時に彼女たちの足場としても活躍します。


「天使、食べるっ!」


「ははっ、天使の力見せてよっ!」


 蔓を元気よく登って行く2人、マナとルクアですね。マナは可愛らしい顔を半分に割るほど大きく口を開けて天使へと迫ります。口の中には何でも食べる事が出来るように数千という鋭い小さな歯がぎっしりと生えています。


 彼女は悪食と呼ばれる魔物です。あの可愛らしい少女の姿は彼女が生前に食べた人間の体を使っているらしく、悪食の本当の姿は誰も見た事がありません。


 悪食は名前の通り本当に何でも食べます。魔法ですら。そして食べた物の魔力を吸収して1部自分の力にする事が出来ます。あの見た目もその力の1つですね。


 天使へと噛み付こうとするマナですが、天使が持つ剣に防がれます。さすがは天使が持つ武器ですね。生半可な武器では一瞬で噛み砕いてしまうのですが。


「行くよっ!」


 そして別の天使へと切りかかるルクア。ルクアは自身の闇魔法の収納の魔法でしまっていた自分の体ほどある太刀を取り出して天使へと切りかかった。


 ルクアは魔族である大鬼族の生まれで、その中でも突然変異とした生まれたらしいです。普通の大鬼族に比べてかなり身長などは低くて、大鬼族では見られない1目のため、他の同族たちからは忌避されていたようですけど、それすら吹き飛ばすほどの圧倒的な力を持って生まれたルクアは、大鬼族の長をしていた事もあるようです。


 そんなルクアが振り下ろした太刀を天使は手に持つ槍で防ごうとしますが、耐え切れず地面へと叩き付けられる天使の1人。なかなかの強さですね。


 その天使を助けようと別の天使たちがルクアに殺到しますが、ルクアと天使たちの間を阻むように沢山の触手が天使たちを襲います。あれはケイシーとネイシーですね。


 2人は魔物でデストロスライムという魔物です。別名『破壊者』とも言われているどの国からも竜種や幻獣種が指定される特級危険種に指定される魔物です。大昔に彼女たちでは無いのですが、デストロスライムが1国を落とした事が原因とされています。


 2人が腕を伸ばして枝分かれさせた触手を天使たちへと伸ばします。かなりの速度で天使たちはギリギリ……いや、これは、ケイシーたちが遊んでいますね。彼女たちなら既に捕える事は出来るはずですので。


 それでも、天使たちは徐々に追い込まれていきます。気が付けばルクアが地面に叩きつけた天使の首を切り落として、マナが天使の首を噛み切っていました。残り8人の天使は触手に行く手を阻まれて動く事が出来ず、背中を合わせて飛んでいます。そこに


「ふ、ふふ、い、行きなさい、私の子供たち!」


 背に羽を生やしたデューアが天使たちの上から両腕を突き出します。そして、彼女の服の袖の中から表れたのは大量の蟻だった。


 彼女も魔物の1人で、デスサイスアントクイーンの変異種だ。見た目が人間の姿をしているのはハルト様が暗黒魔術で作った皮を被っているからです。


 そして、自分が産んだ蟻たちを天使たちの上へと落とします。1匹1匹が30センチほどの大きさを持つデスサイスアントたち。あれでまだ産まれたてというのですから。成体はデューアほどの大きさになるみたいですし。


 産まれたてでランクはCランクほど。成体でAランクになると言われています。そんな産まれたてが数百と天使の上に落とされます。避ける事も出来ずに受ける天使たちから断末魔が聞こえてきます。


 そして、瞬く間に骨に変わってしまった天使たち。その骨すらケイシーたちに溶かされて跡形も無くなってしまいました。


 自分たちの勝利を信じて疑わなかった帝国軍からは狼狽した雰囲気がわかります。そこに


「全軍突撃!」


 と、淫乱皇女の声が聞こえてきました。タイミング的には丁度なのですが、私もエンリエも何もしていないので不完全燃焼です。


 ……はぁ。仕方ありませんが帰りますか。ハルト様に慰めてもらいましょう。

「世界に復讐を誓った少年」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く