世界に復讐を誓った少年
78.とある少女の過去(1)
「シーシャ〜、用意出来たの〜?」
「ちょっと待ってっ! もう! どうして今日に限ってこんな髪の毛が跳ねているのよ! 全然纏まんないじゃないの!」
ママの声に叫ぶように答えながら、鏡を見る。鏡に映る私の腰ぐらいまである銀髪に櫛を通す。櫛を通して見てみるとピンと再び跳ねる髪。もうっ! 今日は大切な日なのに!
私か何度櫛を通しても直らない髪の毛にイライラとしていると、鏡に新しい人影が映る。
「あらあら、跳ねちゃっているわね、シーシャ」
「ママぁ〜」
私の救世主であるママだった。ママはあらあらと言いながら、魔法で手を濡らして私の跳ねた髪を何度も撫でてくれる。さっきまでが嘘の様に跳ねていた髪が直っていく。
よく見れば、ママの手は水魔法で水玉を出して火魔法でぬるめのお湯に温めてから手を濡らして跳ねた髪を直してくれていた。
私のママは優しくて、強くて、綺麗で、器用で、何でも出来る自慢のママ!
「あら? どうしたのよ、シーシャ? さっきまではぷんぷんと怒っていたのに、今は嬉しそうににこにことして」
「ふふっ、何も無いよーだ! それより出来た?」
「ええ、出来たわよ。早く下に降りて朝食を食べましょ? パパもお兄ちゃんも待っているわよ」
そう言って立ち上がったママの後を私はついて行く。私の名前はシーシャ・オルタイン。私たちが住むグレンベルグ帝国にある貴族の生まれだ。
私たちの家は四獣家と言われていて、この国の建国に関わった5つの家の1つだ。
この国の土地には、元々存在するだけで天災を巻き起こすと言われている4体の魔物が存在していた。
空を飛ぶだけで火の粉が降り、大地を燃やす火の鳥。その場にいるだけで太陽を隠すほどの雲を出現させ、止む事の無い雨を降らし水害を引き起こす青の龍。歩くだけで大地を割り、毒を撒き散らし森を枯らして行く山の様な亀。咆える度に竜巻を出現させ、家屋など関係なく吹き飛ばす白の虎。
それら全てを合わせて四獣と呼ばれて来たけど、この帝国の祖であるアレクサンドル・グレンベルグが自分の信頼できる仲間を引き連れて四獣を討伐に行ったのだ。
結果は帝国が出来ている事から想像が付くと思うけど、アレクサンドル・グレンベルグたちは無事に四獣を討伐する事が出来た。その後、この土地に国を建てた。
その立役者である4人の仲間には四獣から取れた一部から出来た魔道具を渡し、それぞれ皇帝を支える四獣家として今日まで存在してきた。そのうちの1つが私の生まれたオルタイン家なの。
オルタイン家は青の龍の魔道具を賜った家で先祖代々水魔法に秀でていた。魔道具は当主であるパパが持っていて一度だけ見せてもらった事がある。見た目は普通のネックレスだったけど、力を発動すれば凄いらしい。危ないからって使っているところは見せてくれなかった。
「おっ、可愛いじゃ無いか、シーシャ」
私とママが下に降りて部屋に入ると、パパとお兄がすでに席に座っていた。侍女たちは壁際で待機して、私たちが席につくと食事を運んでくれる。
「ごめんなさいパパ、お兄。髪型が直らなくて」
「構わないよ。今日はシーシャの大事な日だからね。おめかしもしっかりとしないと。な、セルシグ」
「……そうですね」
パパはにこやかに許してくれるけど、お兄は無表情に返事するだけ。私はお兄が苦手だ。別に嫌いってわけじゃ無いけど、無愛想というか、何を考えているかわからないというか。
目つきも悪いから女の子からは避けられるし。友達からも良い話を聞いた事がないなぁ。
「何を見ている。さっさと食べるんだ。お前の用事の日なのにお前が遅くてどうする」
そんなお兄を見ているとギロッと睨んできて怒られた。もうっ、こういうところが駄目なんだと思う。そこは笑顔で言って許すところなのに。私は返事だけして食事にする。これ以上見ていたら何言われるかわからないし。
まあ、今日は特別な日だから急がないといけないのは正しいけど。なんていったって今日は私が女神様から天啓がもらえる日! この日をどれだけ待ち望んでいたか。
私が欲しいのはママと同じ魔法師。将来はママと同じ宮廷魔法師になるのが夢だから。パパは魔剣士の職業で、お兄は魔道具師だった。パパの跡を継ぐのなら魔剣士や魔法師のように魔法を使うのに有利な方がいいのだけど、その職業を持っていなくても魔法は使えるし、魔道具師ならある程度の魔道具も使える。
お兄もパパの持つ『青龍の涙』が使えれば跡を継ぐ事が出来るのだけど、まだ使った事が無いのでお兄が継ぐかはわからない。今日の天啓を終えてから私と一緒にするみたいだから、お兄ももしかしたら緊張しているのかもしれない。
それから、支度の出来た私はママと一緒に教会へと向かう。パパは仕事のため家に残ってお兄はその手伝いだ。
教会へと着いてからはあっという間に天啓を授けてもらった。ママが混まない時間を予約していてくれたみたいで直ぐに通してもらったからだ。
天啓の結果は私の希望通りの魔法師だった。あまりの嬉しさにその場で思わず飛び跳ねちゃったもん。馬車で待っていてくれたママに報告すると、良かったわねと頭を撫でてくれた。ふふっ、これでママと一緒にパパのお手伝いが出来るっ!
この時は浮かれていた私だけど、この後、あんな結果になるなんて私は思いもしなかった。
「ちょっと待ってっ! もう! どうして今日に限ってこんな髪の毛が跳ねているのよ! 全然纏まんないじゃないの!」
ママの声に叫ぶように答えながら、鏡を見る。鏡に映る私の腰ぐらいまである銀髪に櫛を通す。櫛を通して見てみるとピンと再び跳ねる髪。もうっ! 今日は大切な日なのに!
私か何度櫛を通しても直らない髪の毛にイライラとしていると、鏡に新しい人影が映る。
「あらあら、跳ねちゃっているわね、シーシャ」
「ママぁ〜」
私の救世主であるママだった。ママはあらあらと言いながら、魔法で手を濡らして私の跳ねた髪を何度も撫でてくれる。さっきまでが嘘の様に跳ねていた髪が直っていく。
よく見れば、ママの手は水魔法で水玉を出して火魔法でぬるめのお湯に温めてから手を濡らして跳ねた髪を直してくれていた。
私のママは優しくて、強くて、綺麗で、器用で、何でも出来る自慢のママ!
「あら? どうしたのよ、シーシャ? さっきまではぷんぷんと怒っていたのに、今は嬉しそうににこにことして」
「ふふっ、何も無いよーだ! それより出来た?」
「ええ、出来たわよ。早く下に降りて朝食を食べましょ? パパもお兄ちゃんも待っているわよ」
そう言って立ち上がったママの後を私はついて行く。私の名前はシーシャ・オルタイン。私たちが住むグレンベルグ帝国にある貴族の生まれだ。
私たちの家は四獣家と言われていて、この国の建国に関わった5つの家の1つだ。
この国の土地には、元々存在するだけで天災を巻き起こすと言われている4体の魔物が存在していた。
空を飛ぶだけで火の粉が降り、大地を燃やす火の鳥。その場にいるだけで太陽を隠すほどの雲を出現させ、止む事の無い雨を降らし水害を引き起こす青の龍。歩くだけで大地を割り、毒を撒き散らし森を枯らして行く山の様な亀。咆える度に竜巻を出現させ、家屋など関係なく吹き飛ばす白の虎。
それら全てを合わせて四獣と呼ばれて来たけど、この帝国の祖であるアレクサンドル・グレンベルグが自分の信頼できる仲間を引き連れて四獣を討伐に行ったのだ。
結果は帝国が出来ている事から想像が付くと思うけど、アレクサンドル・グレンベルグたちは無事に四獣を討伐する事が出来た。その後、この土地に国を建てた。
その立役者である4人の仲間には四獣から取れた一部から出来た魔道具を渡し、それぞれ皇帝を支える四獣家として今日まで存在してきた。そのうちの1つが私の生まれたオルタイン家なの。
オルタイン家は青の龍の魔道具を賜った家で先祖代々水魔法に秀でていた。魔道具は当主であるパパが持っていて一度だけ見せてもらった事がある。見た目は普通のネックレスだったけど、力を発動すれば凄いらしい。危ないからって使っているところは見せてくれなかった。
「おっ、可愛いじゃ無いか、シーシャ」
私とママが下に降りて部屋に入ると、パパとお兄がすでに席に座っていた。侍女たちは壁際で待機して、私たちが席につくと食事を運んでくれる。
「ごめんなさいパパ、お兄。髪型が直らなくて」
「構わないよ。今日はシーシャの大事な日だからね。おめかしもしっかりとしないと。な、セルシグ」
「……そうですね」
パパはにこやかに許してくれるけど、お兄は無表情に返事するだけ。私はお兄が苦手だ。別に嫌いってわけじゃ無いけど、無愛想というか、何を考えているかわからないというか。
目つきも悪いから女の子からは避けられるし。友達からも良い話を聞いた事がないなぁ。
「何を見ている。さっさと食べるんだ。お前の用事の日なのにお前が遅くてどうする」
そんなお兄を見ているとギロッと睨んできて怒られた。もうっ、こういうところが駄目なんだと思う。そこは笑顔で言って許すところなのに。私は返事だけして食事にする。これ以上見ていたら何言われるかわからないし。
まあ、今日は特別な日だから急がないといけないのは正しいけど。なんていったって今日は私が女神様から天啓がもらえる日! この日をどれだけ待ち望んでいたか。
私が欲しいのはママと同じ魔法師。将来はママと同じ宮廷魔法師になるのが夢だから。パパは魔剣士の職業で、お兄は魔道具師だった。パパの跡を継ぐのなら魔剣士や魔法師のように魔法を使うのに有利な方がいいのだけど、その職業を持っていなくても魔法は使えるし、魔道具師ならある程度の魔道具も使える。
お兄もパパの持つ『青龍の涙』が使えれば跡を継ぐ事が出来るのだけど、まだ使った事が無いのでお兄が継ぐかはわからない。今日の天啓を終えてから私と一緒にするみたいだから、お兄ももしかしたら緊張しているのかもしれない。
それから、支度の出来た私はママと一緒に教会へと向かう。パパは仕事のため家に残ってお兄はその手伝いだ。
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